『あのちゃんの電電電波♪』がウィキペディアを荒らした事態からみる、ウィキペディアとテレビ東京
2024年2月13日深夜26時(14日の2時)、『あのちゃんの電電電波♪』という番組の、「ウィキペディアを更新しちゃおう」という回が放送されました。
その名の通り、あのちゃんの冠番組です。この回はPaleduskをゲストに迎え、ウィキペディアにあるPaleduskの記事を本人とトークしながら編集する、という企画でした。
編集されたのは放映直前の、2月14日深夜1時8分と同13分です。どうしてこんなに詳しくわかるかというと、すべて記録に残っているからです。
ウィキペディアにおいては、書き込まれた内容はもちろん、書き込まれた時分秒まで、全て記録が残っているのです。具体的にはこちらです(世界標準時)。
本人の情報を、本人の許可を得て、ウィキペディアの本人の記事に書き込んだわけです。
加筆が差し戻された理由
この編集は二分後に管理者が差し戻しました。差し戻すと、その編集をなかったことになります。編集前に全く戻してしまうことです。
番組アカウントでは差し戻された理由を、性的だったからか、と推測しています。これは誤りです。ウィキペディアのルールとして、自分で自分の記事を勝手に編集してはいけないのです。
自分の記事を自分で編集するには、自分が本人であると明らかにしたうえで、話し合い、合意が得られたら初めて編集できます。ウィキペディアになじみのない人が聞けば「いくらなんでも、そんなルールおかしすぎる」と思うでしょう。
もしも「自分で自分の記事を編集していい」としたらどうなるでしょう? 政治家が自分の記述を弄り、企業が自分の記事から不祥事を消します。
つまり、本人の情報を、本人の許可を得て、ウィキペディアの本人の記事に書き込むことは、ウィキペディアのルール違反なのです。
なお、番組のファンは「頭が固い」「ギャグを許さないのはおかしい」「笑いがわかっていない」などの反論がなされていますが、あくまで問題はルール違反かどうかです。面白い記事なら珍項目や削除された悪ふざけとナンセンスなどがあります。
問題はここから
なにを隠そう、本当の問題はここからなのです。「Paledusk」の変更履歴をご覧ください。
まず、DENDENDENPAというアカウントが、先に挙げたような内容を加筆しました。これはルール違反なので差し戻されました。DENDENDENPAというアカウントはその後、投稿ブロックの方針に基づいて投稿をブロックされました。
その次に、Dendendenpa03というアカウントやDENDENDENPA02などなどのアカウントがほぼ同様の内容を復帰させ続けました。おそらくDENDENDENPAと同じ人が作ったアカウントでしょう。
なんと、ウィキペディアでは複数のアカウントをもつことは、ルール違反なのです。よほどの事情がない限り、複垢(複数アカウント)はご法度です。以下の方針をご覧ください。
もしも複垢を許してしまうとどうなるでしょう。自分一人の意見をあたかも多数かのように見せかけることができます。話し合いを一人で牛耳ることができます。荒らしを続けることができます。ウィキペディアンの面々が怒っている様子からも、いかにとんでもないことなのか、うかがい知れるかと思います。
テレビとウィキペディア
今までにもこのようなことはありました。AbemaTVの番組の一環で極楽とんぼやロバートなどの芸人の画像がアップロードされ、芸人とも番組とも関係のない記事に次々と貼られたのです。
ただこの件は、「事務所がガチガチに権利を固めている芸人の顔写真が、クリエイティブコモンズライセンスで公開された」と解釈すれば、ウィキペディアにとっては良い話と言えます。(吉本にとってはいい面の皮です。顔写真だけに。)
『電電電波』とほぼ同じころに、ジョンソンという番組(TBS)で、ウィキペディアの閲覧数を使った番組が放送されました。これは問題ないのです。迷惑がかかるとしてもサーバー負荷でしょうが、そんなことを言い出したら記事を読むことすら迷惑になってしまいます。このジョンソンの企画はウィキペディアに迷惑が全く掛からないことを筆者が保証します。
ねほりんぱほりん(NHK)、マツコの知らない世界(TBS)、林先生の初耳学(TBS)など、ウィキペディアを肯定的に扱うテレビ番組もある一方、番組の一環としてウィキペディアを荒らす番組もあるわけです。
局が偏っている? そうです。
テレビ東京とウィキペディア
実は、テレビ東京がウィキペディアを荒らしたことは、以前にもありました。『このテープ持ってないですか?』というモキュメンタリーを制作する際に、ウィキペディアに虚偽の記事を作ったのです。
以下は筆者の印象です。おそらくなのですが、TBSはウィキペディアンに対して好意的な局で、テレ東はウィキペディアを箱庭のように見ている局なのではないでしょうか。あくまで私の考えです。
今回、深夜のマイナーな番組だったためにあまり混乱や荒らしは大きくなりませんでした。不幸中の幸いです。番組に便乗する荒らしはたまさか小規模でした。
これがもしもゴールデンタイムの高視聴率番組だった場合、番組に便乗した荒らしは今回以上に増え、記事は今回以上に荒らされたのでしょう。そして荒らしに対処するのはウィキペディアンです。テレ東職員ではありません。
追記
2024年2月23日追記。番組側は、DENDENDENPAというアカウントよりも前に、あのちゃんの電電電波というアカウントで編集したようです。特別:不正利用記録によると時間は2024年2月14日 (火) 00:36と同00:37です。
この二回の編集は、編集フィルターという機能により自動的にはじかれました。編集フィルターとは、投稿をすべて検出して、なにかあったら自動で対処してくれる機能です。すごい機能です。例えば、「作られたてのアカウントが、『***』と書き込もうとしたら、書き込みを許可しない」など設定できます。これにあのちゃんの電電電波というアカウントが引っ掛かったわけですね。