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涅槃寂静とウィキペディア
お疲れ様です。ウィキペディアンVTuberの宇喜多・W・要出です。先ごろ、ウィキペディアに関するツイート(現・ポスト)がバズっていました。
さっき知ってまぁまぁビビッた話なんだけど
— ぷんすわ (@l__l__I__l__l) May 8, 2024
このクッソ小さい数を表す単位として割と知られてた「阿頼耶」「阿魔羅」「涅槃寂静」、Wikipedia編集者が適当にデマ書いたのが16年間も削除されず放置され、結果的に定着しちゃっただけらしくて草🌿 pic.twitter.com/E3tAyuJXGJ
私の友人らもこのツイートに反応しています。反応の内容も正確で、掛け値なしに有難いです。私のしてきた活動がゆっくりと広まりつつある……
削除された理由は
— あろい👹 (@yollamrep) May 9, 2024
「デマが書かれているから」ではなくて
「有効な出典がないから」だよ。
「阿頼耶」とかの記事に記載されていたリファレンスのサイトがリンク切れ起こしてたから、Wikipediaのルール的に別の出典を探す必要があったんだけど、結果として見つからなかったから削除された、て話。 https://t.co/953BgMJgy1
「証拠の不在は不在の証拠ではない」っていうように、「阿頼耶、阿摩羅、涅槃寂静が小さい数ではない」と証明するのはかなり困難よ。ただ、現在の漢数字の根拠となっている『塵劫記』や、よく参照される『算学啓蒙』にも『直指算法統宗』にも載ってない数が実在した、というのは正直信じがたいのよね。
— 彩恵りり🧚♀️科学ライター兼Vtuber✨おしごと募集中 (@Science_Release) May 9, 2024
ウィキペディアと涅槃寂静に関しては、私も動画をすでに出しています。要は、命数法の記事の中に、出典のないものがあったので、ウィキペディアから削除された、という話です。
ただし、「デマだから削除された」ではありません。今回この記事ではこれが言いたい。
そもそも、ウィキペディアの削除の方針に、「デマを消す」(デデン!)なんて文言はありません。あくまで出典が第一であり、検証可能性が命です。ウィキペディア日本語版の方針に、「真実かどうか」ではなく「検証可能かどうか」とまで書かれるほどです。
しかも涅槃寂静が極微の数として登場したのは、ウィキペディアが最初ではないようです。
2000年代初頭に各サイトでみられるとのことです。議論がツイッターで百花斉放に交わされていますが、いずれにせよ、さかのぼれるのはどうやらそのあたりの年代までみたいです。
循環参照している?
— 🗼 (@strider_x) May 9, 2024
どういうこと?
大きな数・小さな数https://t.co/wgGPZoSqtt
「数の単位」https://t.co/mycDvBJPen https://t.co/XG87VB49jy pic.twitter.com/pP5HJligex
「Wikipedia発のデマにNHKが騙された」はデマ。でも、こうやってデマだデマだと大声で喧伝するのも、問題があるようなのです。
ウィキペディアとデマ
検証可能性の観点から言って、私(この場合ウィキペディアン)にとっては「ウィキペディアからデマが広まった」ことよりも、有効な出典がないことの方が、重大なのです。
情報を扱うものとしてそんな態度はいけないのかもしれませんが、こんな論文があるそうです。
私も今まで「デマに気をつけろ!」と言ってきた側の人間なので、この論文は考えさせられました。
すなわち、デマに気をつけろ! と言えば言うほど、対抗するために政府や大企業による監視を求めるようになり、民主主義が竦む、ということらしいのです。
日本政府もインターネットを監視するとかしないとか、日経新聞が信用できないからニンテンドーダイレクトを信じようとか、実際にこの論文の流れが来つつある……感覚があります。こわやこわや。
まとめ
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ウィキペディアを外付けの性誤判定機にしないように。参考程度に留めましょう。