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「プーチンのウィキペディア」Ruwikiをウィキペディアンが読んだ

下の動画、音量が大きいので気を付けてください。

ウクライナ侵攻このかた、ロシア政府がロシア語版ウィキペディアに圧力をかけているのは報道されている通りです。加えて、ウィキペディアに代わる新しいウェブ百科事典を作ろうという動きもありました。なんと、ウクライナ侵攻よりも前からです。

というわけで、できました。Ruwikiといいます。ロシア語なのでルキです。

Ruwiki

さてこのRuwiki、ウィキメディアロシア支部のMedeykoという人が作りました(この人は現在、ウィキペディアをブロックされ、ロシア支部をクビになっています。)。

2024年1月15日に正式にサービスが開始されました。開始時点で記事数はなんと190万本です。日本語版は140万本です。

もちろんカラクリがあります。WikipediaとRuwikiのライセンスが同じなのです。Wikipediaのライセンスはそもそも、情報が広まりやすいように、使いやすいように設定されています。WikipediaからRuwikiへ全てをコピペするのは、機械的に、かつ合法的にできるのです(CC BY-SA 4.0といいます)。

ロシア政府とは関係ない、独立している、とRuwikiの運営サイドは主張しています。では内容はというと、やはりというか予想通りというか、ロシア政府寄りになっているようです。

「ロシアのウクライナ侵攻」という記事がなく、「特別軍事作戦」という記事があったり。政府首班に対する非難の文言が減っていたり。執筆時点(2024年2月15日)のトップ記事は「ウラジーミル・プーチン大統領とタッカー・カールソン氏のインタビュー」でした。

日本語版ウィキペディアも「政治的に偏り過ぎている」と非難されて久しいです。では本腰を入れて政府にすり寄るとどうなるかというと、上のようになります。

このように中立性をあえて欠けさせているウェブ百科事典は、実はRuwiki以前にもあります。

中立性を欠かしたウェブ百科事典を立ち上げる動き

アメリカの右翼層は、英語版ウィキペディアに納得がいかず、自らのウェブ百科事典を立ち上げました。

名前はそのまま、コンサバペディアです。このウィキもまた、政治的に気に食わない内容のみ改変されています。私の見た限りでは、科学や美術関連は改変されていないようです。他には、白人至上主義者が立ち上げたウェブ百科事典もあります。英語版含むヨーロッパの言語版だけしかないです。

ルビキとコンサバペディアとウィキペディアの共通点は、ひとまず調べものの役には立つ、ということです。では相違点は何でしょうか。

オプトアウト

ここからは筆者の考えです。相違点は、知識を更新しづらいこと、だと私は思います。

ルビキとコンサバペディアでは、政治に関心がある人が集まっています。政治に関する内容は素早く更新されるでしょう。では科学や美術、文化に関する内容はどうでしょう。専門性は高く、さらに政治よりもずっと文章量が多くなってしまいます。更新するにはとにかく人手も手間も必要です。

これは私の推測ですが、ルビキとコンサバペディアでは、手っ取り早く調べものをすることならできるのでしょう。ただし、その情報は更新されていない可能性が高いでしょう。結局、政治以外の内容については、ウィキペディアをみるか、ウィキペディアからコピペしてくるか、そのどちらかになります。

ウィキペディアとは、考えの合わない人同士が、年単位で一つの議題についてノートページで議論しているウェブ百科事典です。

違う考えの人を視野にも入れたくない人はどうすれば良いのでしょう。自分一人で手間と時間をかけて最新情報を求めるしかありません。あるいは、時代遅れになるしかありません。

気に食わない考えだけでなく、話がかみ合わない人を予防的にブロックすることは今や当たり前になりました。そしてブロックすることによって、人手が不足します。人手が不足すれば情報の更新はより大変になります。

良いニュース二つ

違う考えの人を視野から排せば、自分の精神の平穏をたもてます。その代償として、新しい情報を入手するのに膨大な手間暇がかかるハメになります。あるいは新しい情報を手に入れられない事態に陥ります。二者択一です。

翻って日本語版ウィキペディアではどうかというと、[[ノート:南京事件]]というノートページで史上空前の大激論が巻き起こっています。どれくらい大激論かというと、記事本体の倍の文量があります。記事本体が13万バイト、議論が30万バイトです(全て執筆当時)。

一見、電算資源の無駄に見えるかもしれません。とくにウィキペディアになじみのない人ほどそう思うでしょう。最終的には、これだけ議論を尽くすことが手間暇の節約につながるのです。最新の情報を手に入れやすくなるのです。それは上で述べた通りです。

もう一度繰り返します。ウィキペディアとは、考えの合わない人同士が、年単位で一つの議題についてノートページで議論しているウェブ百科事典です。

また、ツイッター(現X)では、コスメとカードゲームの共通点が多いことが話題となりました。

文化翻訳という考え方もあります。考えの合わない人同士が出会ったとき、ケンカになることはままありますが、通訳がいると共通項が見いだせることもあります。同類項でくくれば解決できる問題もまた、ままあるのです。

千言万語を尽くして議論し、翻訳することが、人手の確保につながり、自分を救うことにつながるのです。

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