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賃上げ目標が高リスクに! ものづくり補助金の意外な落とし穴

現在、ものづくり補助金の第19回公募が実施されている。申請計画自体に大きな変更はないが、給与支給に関しては大幅な見直しが行われたため、注意が必要である。

これまで年率1.5%であった給与伸び率が、今回から2%に引き上げられた。年平均成長率は複利で計算されるため、5年間の累計では約11%の増加となる(単利の10%ではありません)。

令和元年の公募以降、給与要件を満たせない場合は補助金を返還しなければならないルールが存在したが、今回はさらに厳格化されている。前回までは給与支給総額のみでよかったのに対し、今回は一人当たりの給与伸び率も応募段階で示す必要がある。

具体的には、役員と従業員それぞれ年率2%以上の伸び率が要件とされ、もし3%を目標として申請した場合は3%を達成しなければ補助金返還のリスクが生じる(もしも実績が2%の場合、目標数値3%に対して33%未達のため、33%分の補助金を返還しないといけないことになる)。高い目標を掲げるほど返還リスクが高まる点には十分な注意が必要である。

補助金を受け取る以上、生産性を向上させ、賃上げを実現することは必要だと思う。しかし、企業が設備投資を行ったとしても、必ず成果が上がるわけではない。得意先からの受注が減少する場合や、投資の効果が想定を下回る可能性も考えられる。そうしたリスクを抱えながら設備投資を行うのが実態である。状況によっては賃上げを目標通りにできないこともあるだろう。

中小企業庁の補助金制度は国の方針を色濃く反映するため、昨今の賃上げムードがものづくり補助金の制度にも反映されている。その結果、今回の概要は非常に複雑化しており、補助金のサポートセンターですら今回の概要について把握しきれていない部分が多い(問い合わせをしてもよく理解していない)。申請を検討している企業の多くが、この制度的リスクを十分に理解できていないのは容易に想像できる。

こうした状況から、十分に制度を理解しないまま申請する企業が増えれば、5年後に「補助金返還祭り」と呼べるような事態に陥る可能性がある。返還を求められても自己資金が既に尽きている場合には、返済不能に陥る企業も出てくるだろう(返さないという企業もでてくると思う)。後々これは大きな問題になるだろう。

われわれ専門家は、こうしたリスクを含め、事業者に丁寧に説明する責任がある。しかし、ここまで厳格化する必要が本当にあるのかという疑問は残る。従業員数の多い企業ほど賃上げ額が大きくなり、場合によっては補助金以上の負担となるケースも想定される。

補助金を活用する際には、これらのリスクを的確に把握し、適切に助言してくれる専門家を選ぶことを強く推奨する。補助金の恩恵を享受するためにも、制度の内容とリスクを十分理解したうえでの対応が不可欠である。

浮島達雄

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