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 ひれ伏せ、マジョリティ様だ。

 上から目線で登場した。さらに宣言する。
 今回の「地獄変」(芥川龍之介)の紹介記事では、ずっと上から目線を通す。
 一人称を我(オレ)にしたりする。
 ふっ、なぜにと問うか雑種!
 簡単なこと、我がマジョリティだからだ!
 健全な学校生活を送ったなら存じておろう……。
 先生がいじめられている方を注意することはあっても、いじめている方を注意することは決してない。
 なぜなら、いじめている方は必ず多数派。マジョリティだからだ。
 マジョリティは常に正しき王であり、マイノリティは王にまつろわぬ卑しき獣なのだ。
 カラスの本当の色なぞどうでもよい。多数派がカラスは白いと言うから、カラスは白いのである!
 ……上手い例えをしようとして、今からする話は全部間違っているぞ、の前フリになってしまった。
 王命である。忘れよ。

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 我の粘土板は集英社文庫なので、新潮文庫に収録された作品には未読もある。王の事情だ。

 さて、何故我がマジョリティ様か。
 現在(2020年7月)放送中のアニメ「文豪とアルケミスト」において「地獄変」の解釈が一致したからである。

 お前のウルクめっちゃ狭いとか言うな。学校のマジョリティとて、校外へ出たら逮捕であろうが!
 先に「文豪とアルケミスト」の説明をしておこう。
 元気なメンヘラ太宰治が、他のイケメンに転生した文豪たちとともに、文学を守るため戦うアニメである。原作は同名のゲームだ。
 この手のものを好むというと、必ずモデルご本人の写真を見せて「本物はイケメンどころかこうだよ?」とか申す者が現れるが……。
 本気で戦いたいなら、文豪よりグリーンベレーを転生させるに決まっているだろう。現実を見ろたわけ! FGOを見ろ我!
 次は「地獄変」のあらすじだ。
 都(京都の方)で随一の絵師、良秀。
 人並み外れた腕と傲慢さを持ちたるこの男には、溺愛する娘がいた。
 猿をかわいがる娘は、大殿の寵愛を拒絶し。
 大殿は娘にふられた腹いせに、良秀の美しい女が焼かれる姿を見ねば地獄変の屏風絵が描けぬという願いを叶える態で、娘を焼き殺す。
 
 ここから先、オチのネタバレとなる! 
 ネタバレ絶拒の雑種は疾く失せよ!

 愛する娘が焼かれる姿は、良秀に強いインスピレーションを与え。
 身の毛もよだつ見事な地獄変を描き上げさせる。
 傑作を残し、良秀は首をくくって死ぬ。

 芥川龍之介の最高傑作だ。我はこの短編が一番好ましい。
 でも、良秀がなんで死んだのかについて考えられるパターンが2つあってー。
 どっちが合ってるんだかわかんないなって。
 ……しまった。さっきからチラチラ剥がれていたギルガメッシュが、完全に剥がれてしまった。
 しっ仕方あるまい! こちらは絶対魔獣戦線バビロニアのアニメしか履修しておらぬ!
「オートモード」があって、勝てるのが基本の文豪とアルケミストすら、ほとんど進められぬゲーム音痴に、Fateは無理だ!
 でも絶対魔獣戦線はすごくイイと思った!
 卒寿のジジイでもギルの女になるよアレ! ちょっと待って、もっかいギルガメッシュ着るから!


 さて、2つのパターンの説明に入る前段階だ。
 何故、良秀は死んだのか?
 それを知るためにはこれを踏まえておかねばならぬ。
 良秀は見たものしか描けぬのだ。
 創作者としては、あまりに巨大なバグである。
 実録ものならかまわぬ。
 実録以外、それも「地獄を描いてくれ」のようなファンタジー系創作者には、致命的バグである。
 こんなバグが常態では、14歳の美少女が45歳のイケおじに筋弛緩剤を打って逆レする小説を書いた者等、入れねばならぬ檻が多すぎて困るではないか。

 ん? もちろん書いたのは我だが?
 人によって解釈は違うが生モノと見る者が多いため、検索除けに配慮せよ雑種! この注意が何を言っているかわからぬなら閲覧を控えよ! ついでにこのカプの別タグを知っているなら、疾くつけるがよい!

  話が逸れた。とかく、希代の絵師でありながら、巨大なバグを抱えた良秀。
 彼奴は地獄の責め苦の悶え苦しむ人々の真ん中に、牛車ごと焼かれる美女があると映えると思ったのだ。
 故に、大殿に美女を焼いてほしいと所望した。
 そして娘にふられた大殿は、これ幸いと良秀の娘を焼いたのである。
 そして我がマジョリティ様たる根拠これだ!
 アニメ「文豪とアルケミスト」で、「良秀は芥川龍之介の理想だった」との台詞がある!
 だからお前のウルクめっちゃ狭いとか言うな。
 確かにアニメのストーリーは、娘を焼いてまで絵を描く親ってどうなん? と迷う展開になったが、理想の一文は訂正されない。
 むしろ肯定する志賀直哉が最高にカッコいい! 卒寿のジジイでも志賀がアニキになる! ママにもなる!

(脱げかけたギルガメッシュを貼りつけている)
 あ、えー。うん。そうだ。
 理想なのだ。
 作品のためならば、何をすることも厭わない。
 芥川龍之介の理想(と、アニメで言われていた)である。
 我はマジョリティ様なので当然だが、貴様ら雑種共も「当たり前じゃね?」と思った者が多数派だろう。
 最高の作品ができるのだから、最愛の娘を焼くぐらいは常識の範囲内の理想だ。
 理想とは実現不可能な夢であるからな。
 実現可能なら、それは理想ではなく目標だ。
 ふ、理解しかねていた側の雑種も「それなら普通だ」と理解できたか。
 イイ! マジョリティだ! マジョリティの考えることはすべて普通だ!
 カラスの色などわざわざ考えるほどのことではないのだ!
 あいにくと我の住所とかいろいろあるウルクはよからぬウルクなので、芥川龍之介を読む者はまつろわぬ獣とされてしまうのだがな……。
 鳴き声がキモいと討伐対象となる……。
 よって今回はめったにない玉座! 存分に座って物思いにふけるぞ!
 良秀はいかなる気持ちで首をくくった!?
 聞け!

 2通りのパターンがある。
 パターン1は語り手の言葉にちょい足しくらいだ。

 自身の描ける中で最高の作品ができたので、創作に関して満足した。
 よって、これ以上絵を描く必要性がなくなった。
 すると絵のほかに唯一愛した娘が恋しくてならず、首をくくった。

 これは語り手の推測とも合致しているところが真実みが強い。
 最愛の娘を焼いたから、そこまで凄まじい地獄が描けたのだ。
 これがどうでもいい娘だったら、たいした作品にはならなかっただろう。
 だが! 疑問を感じぬか雑種!?
 最高の作品が完成したのだぞ?
 今の俺絶好調! 次は何を描こうかなっ? みたいな心境になってしまう方があり得るだろう!
 そこで我の考えるパターン2だ。

 最愛の娘を焼くというペナルティがあっても、なお見たものしか描けない自分の実力に絶望した。
 元々鬱展開なのに、さらに鬱い。

 しかし、辻褄が合っているのは圧倒的にこちらだ!
 焼かれた娘的には焼かれ損120%だが!
 語り手を取るか辻褄をとるか……。
 我にはまだ回答を出せぬ。
 悩んでいるくせに愉悦の表情だと?
 然り。
 悩みもまた愉悦……。読書の愉悦の頂点……。
 王命である! 「地獄変」を楽しめ!

 次回の読書はたのしは8月28日(金)! よろしくです!


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