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アンチbitFlyer SFDのススメ

UKIです。

つい最近もbitFlyerの乖離抑制システムSFDが作動してしまいました。今回は、bitFlyerのSFDについて所見をまとめたいと思います。


1.はじめに

(1)SFDとは

SFDとはSwap for Differenceの略であり、BTC現物とBTC-FXの乖離を抑制するために導入されました。具体的な仕様は以下のリンクを参照下さい。

【重要】「SFD」一部変更の実施に関するお知らせ

簡単に説明すると、BTC現物とBTC-FXの乖離が一定%を超えた場合、乖離を抑制する方向の取引にはリベートを付与し、乖離を拡大する方向の取引にはフィーを徴収するシステムです。

現在の価格乖離はおよそ+5%水準付近であり、+5%価格乖離以上の取引では取引高に対して0.25%のリベート(フィー)が付与(徴収)されることになります。
上手く取引すれば、短期間で本来の価格変動以上のリターンを得ることができるため莫大なリターンを得ることができます。


(2)SFDの正確な仕様

上記のリンクでは触れられていませんが、価格乖離の計算方法はbitFlyer LightningにおけるBTC現物のLTP(最終約定価格)をベースとして計算されます。そもそもbitFlyerはこの正確な仕様をユーザーに周知すべきです。

例1.BTC現物のLTPが823321の場合(+5%価格乖離の場合)
SFD基準値=LTP×1.05=864487.1
このとき、小数点以下を切り上げた864488における取引ではSFDが発生します。逆に小数点以下を切り下げた864487における取引ではSFDが発生しません。

例2.ポジションの影響
SFDによるリベートは決済取引には付与されません。この決済取引とはユーザーの保有ポジションで判定されます。保有ポジションが正のときに+5%乖離以上でショートしてもリベートは貰えません。ポジションが0以下のときにショートして初めてリベートが貰えるようになります。

注)上記の2つの事例は実機確認によるものです。解釈に相違がありましたらご指摘下さい。


2.SFDにおける攻防

(1)基本的な戦い方(+5%価格乖離の場合)

上記の仕様を鑑みると、SFDの基本的な戦い方は以下のようになります。

・リベートを貰うためにポジションが0以下で+5%価格乖離以上の水準でショートする。
・ポジションをニュートラルに戻すために+5%価格乖離未満の水準で買い戻す。

このため、まずは現物LTPから算出したSFD基準値の近傍に売り指値が集中することになります。続いて約定できたプレイヤーは基準値以下の価格で買い戻すために買い指値を入れることになります。


(2)現時点における必勝法(らしきもの)

SFDゲームに参加するプレイヤーは大別して以下の2種類に分かれます。

①現物LTPの値を参照してSFD基準値に指値を並べるプレイヤー
②現物LTPの値を操作して所望のSFD基準値へ誘導するプレイヤー

当然ながら後者のほうが圧倒的に有利です。予めFXに指値を入れてから現物を操作することで、確実にキューの先頭に並ぶことができるからです。
ここまででお分かりの通り、SFDとは如何に現物の動きを制するか競うゲームなのです。これは大量の資金があれば殆ど必勝と言える手法が存在します。


<必勝法の事例(現物操作)>
STEP1.現物のbest bid値を確認する。
STEP2.現物のbest bid値に20BTCの買い板を、best bid値+1tickに20BTCの売り板を入れる。こうすることで数十秒の間、現物の動きを板2枚の間に固着させることができる。
STEP3.さらに残りの1枚に固着を限定させるため、best bid値の買い板を別口座で高頻度に0.01枚ずつ売りテイクする。

このようにすることで現物の値を当初のbest bid値に固着させることができます。当然、在庫リスクを抱えることになりますが、FXでその在庫リスク以上のリターンを得ることができます。短時間で大量のサイズの0.25%リターンを得ることができるためです。

<必勝法の事例(FX操作)>
STEP1.予め分かっているFXのSFD基準値に100BTCの売り指値を仕込む。
STEP2.別口座でSFD基準値-1tickに買い指値を入れてスプレッドを埋める(現物を固着させているため、この約定でSFD徴収されることはない)。
STEP3.SFD基準値の売りが約定し始めたらSFD基準値-1Tickに反対売買の買い指値を都度都度入れる。

現物を固着させ且つFXも価格固定させているため、FXに流入する買いテイク・売りテイクを全て自身の板で捌きリベートを手にすることができます。


3.SFDがもたらす弊害

(1)乖離解消ではなく閾値近傍への固着

SFD導入の目的は、本来は価格乖離を是正することであった筈です。しかし、結果としてSFDゲームに参加するプレイヤーが増えてしまい、価格乖離の閾値近傍に張り付くことになってしまいました。
原理的に+5%価格乖離以上の水準では売り浴びせられ、+5%価格乖離未満の水準ではショートの買戻し及びスプレッドつぶし(強制的なSFDゲームへの移行)が発生するからです。
またBTC現物には本来の需給以外の目的で不要な注文が入ることになり、価格形成に歪みが生じます。そもそもこのような行為は相場操縦行為ではないか疑われてしまいます。


(2)市場参加者の変化

SFDゲームでは当然ながら裁量手動のプレイヤーには勝ち目がありません。結果としてSFDを生業とするbotのみに出来高を占有されてしまいます。SFDゲームの勝者が得た利益は一般のプレイヤーが落とした利益ではなく、別のSFDプレイヤーのミスによる利益です。当然ながら負けが込んだSFDプレイヤーは順次退場していくため出来高は先細りになり、ついには価格乖離が剥がれ始めます。
ではこのときに離れていた一般のプレイヤーが戻ってくるのでしょうか?
現在bitFlyerは新規受付停止していることも忘れてはなりません。


(3)取引所への不信感

このような状況を放置していることにユーザーの大多数は不信感を募らせていることでしょう。何よりも問題なのは、SFDで徴収したフィーの一部をbitFlyerが徴収するシステムとなっていることです。
参考までに7/21 0:00~7/22 23:00の間にbitFlyerが徴収したSFD総額はおよそ6900万円です(約定履歴から算出しました)。このうち7~8割がリベートとして還元されていると考えられますが、残る2~3割はbitFlyerがそのまま徴収していることになります。

これはユーザーに断りなく手数料を徴収していると考えることもでき、法律上の問題が発生する可能性があります(自分は専門家ではないため、ここでは問題提起に留めます)


4.SFDの代替案

SFDの代替案についてはツイッター上でも様々な意見が飛び交っています。個人的には先例を築いているBitMEX方式でよいのではないかと考えています。

BitMEXのFunding概要


5.おわりに

今回の一連で思ったことを述べて終わりにしたいと思います。

まず、SFDを利用して莫大な利益を得ているプレイヤー達、彼らは賞賛に値します。ロジックの構築能力、プログラミングのテクニック、トレードインフラの整備など、見習うべき点が数多く存在します。同じbot構築者としてモチベーションを掻き立てられました。

またbitFlyerと並ぶ国内取引所が存在しないことも問題の1つですが、このような事態を鑑みてBitMEXだけでなく他の取引所などの調査も怠ってはいけないと感じました(毎回SFDが発生するたびに感じていますが)。

全ての取引所に精通しそれらの取引所特有の癖を逆手にとって自らのアドバンテージに変換する、このような戦い方をこれからも身に付けていく必要があると感じています。