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シストレのススメ~テクニカル指標の幻影~

シストレは勝てないのか?

このような文言を見つけたのでTwitterにてツラツラと意見を述べていましたが、文字数制限が面倒になったためNoteに記載することにしました。
シストレやテクニカル指標に関しては様々な意見があり宗教戦争に発展することもありますが、正解というものはないと考えております。
以下は個人的な意見であり、あくまで参考として読んで頂ければ幸いです。
内容に関する批判はご自由ですが、それらに対する回答には一切応じませんのでご承知置き下さい。また取り留めも無く書き綴っているため、読みにくい点があるかと思いますがご容赦ください。


1.シストレは勝てないのか

これに対する意見は賛否両論があるだろうが、自分はやり方次第だと思っている。現に自分はここまでにシステムトレードを使って十分な利益を得ることができている。が、やはりそれは狭き門なのであろう。

ただ、テクニカル指標を一通り検証しただけでシストレに対する判断を下すのはあまりに早急すぎる。テクニカル指標は短期トレーディングの入り口ではあるが、それだけで勝てる投資戦略が組み立てれるほど投資の世界は甘くない。もしそうだとすれば殆どの方が投資で成功することになってしまう。これは裁量でも成功する人としない人がいるのと同じことである。

シストレは勝てない。そう思っている方は一度ご自身のアプローチを見直してみることをお勧めする。


2.テクニカル指標の幻影

この前、某所でテクニカル談義が行われていた。テクニカル指標に対する解釈には正解はなく自由に論じてよいと思っているが、この話題に触れるのは何やらタブーのように考える人も存在するようだ。要するにトレーディングをする人は少なからず背負っているものがあり、それゆえに何か縋るものが必要なのだろう。それを根本から否定されると耐え難いというわけだ。あるいはトレーディングの技術を人に説く場合、テクニカル指標は最も簡潔に初心者を納得させるためのアイテムであり、それゆえ幻影の正体を暴かれると都合が悪いということもあるかもしれない。

その上で自分の意見を言わせてもらうと、テクニカル指標は単体では殆ど使えない。しかし他の指標と組み合わせることである程度の説明力を持たせることは可能だと思っている。例えば株でいうと、上げている株が更に上げるのか、それとも利確が入って反落するのかは市況によると思う。イケイケであれば利確を伸ばすだろうし、市場が懐疑的であればすぐに反落するであろう(調べれば分かるのだが、実際にはこれの逆の動きをするところが面白いところである)。

シストレでテクニカル指標の結果が出づらく、これに反して裁量トレーダーがテクニカル指標に頼ることが多いのは、裁量ではテクニカル指標が同じ水準でもインするかインしないかをそのときの相場の雰囲気で決めているためだと考えている。それこそが勘所だろうし、シストレに最も反映しにくい部分だと思う。

ただし言わせてもらうと、テクニカル指標は直近のOHLCVを組み合わせたものであり、どのような指標にしろ互いの相関が高くなるのは当然であり、誰が何を使っても性能に著しく差は付かず他者を出し抜くことは難しい。ゼロサムを前提とする相場の世界では、他者を出し抜けないということは即ち負けということである。

テクニカル指標に聖杯など存在しないのである。しかしどういうわけか、巷にはその指標に値段を付けて売っている人々がいる。さらにそれがパクリというものまで存在するらしい。あくまで価値の所存はそのテクニカル指標の開発に至った経緯や市場観察の考え方であるはずで、その指標の示す数値自体ではないことに留意すべきである。

他者と差別化するのであれば、他から独自のデータを引っ張ってくる必要があることは当然ではないか。上記の組み合わせの考え方のように、複数のテクニカル指標を駆使して利益を出している方もいるのだろうが、それは逆に難易度が高い芸当である。少なくとも投資は情報戦であり、誰もが手に入る情報だけで戦おうとすること自体、無謀なことであることに何故気付かないのか。テクニカル指標だけに頼ることは怠惰と言われても仕方がないのである。

ここまでの話を踏まえてテクニカル指標を使うかと聞かれると、自分はそうはならない。テクニカル指標は一時的にリターンとの相関はあっても因果はなく、いつ説明力が失われるか予測もできない。よって自分が使うのは因果系の事象か、専らトレード対象の統計的性質を利用した手法に限られる。

以下では1つの例を挙げてシストレのアプローチを見ていくことにしよう。


3.幻影のないトレーディング

シストレで実際に有効であるとされる運用手法はトレンドフォロー、ミーンリバージョンのいずれかに絞られる。アウトライヤーはミーンリバージョンの特異なケースと考えることができよう。いずれもマーケットの歪みを利益の源泉とした手法である。

前章で触れた統計的性質を利用した手法とは、投資対象の持つ分布の歪み(テールの長さ)にベットする手法であり、要するにトレンドフォローのことである。これはアセットの選択を間違えなければ誰でもほぼ勝てる手法であるが、勝率が低く利大損小となるため原理的にハイレバレッジを取ることはできず低資金の運用には不向きである。ここでいう原理的とはいわゆるケリーの公式のことであり、実際に低勝率+利大損小と高勝率+利小損大の場合を比較してみれば明白である。

トレンドフォロー戦略のポイントは、発生したトレンドに着実に追従することとダマシを回避することであり、この両者はトレードオフの関係にある。ダマシを回避するためのフィルタリングはその予測精度が高くとも誤判定によって失う利幅が大きいため現実的に使うことが困難である。よってトレンドフォロー戦略の構築とは、とどのつまり単純にトレード数を調整する行為に他ならない。

繰り返しになるが、トレンドフォローの利益の源泉は使用する指標に依るのでなくアセットの特性に依るものなので、アセットと時間軸の選択がほぼ全てであり、パフォーマンス向上のために指標を選別する行為は不要である。よって始めからテクニカル指標を選んだりパラメータの期間を調整したりという行為はアプローチとして間違っており、まずすべきことはアセットの統計的特性を時間軸毎につぶさに調べていくことである。

一般のシストレ理論ではこのことに全く触れられていない。テクニカル指標の勉強など不要なのである。もしも指標選別によりトレンドフォローのパフォーマンスが改善したのであれば、それは単なるランダム効果の産物かもしくはカーブフィッティングである。

なお蛇足になるが、このようにアセットさえあれば誰でもお手軽にできるトレンドフォローであるが、資金効率が悪く勝率が低くドローダウンが大きいため一般にはお勧めできない。トレンドフォローで十分な収益を得るためにはそれなりに大きな額をベットする必要があるが、そもそもトレンドフォローは相関の低い複数のアセットで分散して運用すべき手法であり、ましてや暗号通貨に一点張りするなど愚の骨頂である。

またテクニカル指標を一切用いない因果関係に基づくミーンリバージョンはこれよりもさらに説明が複雑となるため、ここでは割愛させて頂く。


4.終わりに

シストレは勝てないのか??

今一度言うが「投資は情報戦」であり、皆の知っている情報に価値などない。このことを理解しておかなければ、シストレで勝てる日が来ないのは至極当然のことであろう。

効果の高く半減期の長いグリーンアルファを見つけるためには、チャートの枠組みを超えて現実の様々な事象へ目を向ける必要がある。そろそろ霧に包まれた内海を抜け出して、晴れ渡る大海へと漕ぎ出してみてはどうか。