トイ・ストーリー4に学ぶ演出技法
トイ・ストーリー4は2019年7月公開のディズニー、ピクサー制作のフルCGアニメーション映画です。
今回はこちらの作品の演出解析を進めていきたいと思います。
2019年7月16日現在、劇場公開中作品ですので、未見の方やネタバレを回避したい方はここから先を読まないよう注意してください。
※ここから先本編のネタバレあり
ウッディはボニーには必要ないもの
今回の作品でウッディはボニーの人形遊びのメンバーから外されてしまいます。さらにボニーはこの作品でフォーキーとウッディが居なくなった際に、ウッディが居なくなったことには一切触れず「フォーキーが居ない」という発言を繰り返します。
また、物語後半でウッディはフォーキーの救出作戦に失敗し孤立してしまいます。
その際にウッディの横にはゴミ袋が配置されており、ウッディはもうボニーには必要のないものとして描かれています。
ウッディ一人のショットで画面カミテ側にゴミ袋
ゴミ袋の片隅で孤立する = 必要のないもの
左右反転で関係性の変化を描く
物語の冒頭、トイ・ストーリー3から9年前の話から
光と影、対峙と受け入れ
ウッディはフォーキーを助けるために、救出作戦に失敗したあと一人でアンティークショップ「セカンドチャンス」に戻り、ギャビー・ギャビーたちと対峙します。
この際にウッディは日向、ギャビー・ギャビーは影の中に分けて配置されます。
ウッディは日向、ギャビー・ギャビーたちは影の中に立つ
光と影に分けて配置することで、敵対していることを描いています。
光と影に分けて配置 = 心が離れている、敵対している
ギャビー・ギャビーが自らの生い立ちを話しつつ、一度子供と一緒に遊びたいという願望をウッディに話ながら近づいていきギャビー・ギャビーも日向側に入ってきます。その際ウッディはギャビー・ギャビーを拒否することなく彼女の願望を受け入れることにします。二人が日向側に入ることでウッディが彼女を受け入れたことを間接的に表現しています。
お互いが光の中に配置 = 心が近づいた、受け入れた
女の子に選ばれなかったとき顔を見せなくする
ウッディからボイスボックスを引き継いで、可愛い声が出るようになったギャビー・ギャビーは女の子に持って帰ってもらおうと、アピールをします。
女の子は一度ギャビー・ギャビーを持って考えますが「いらない」と言って箱の中に捨ててしまいます。
このあとウッディがギャビー・ギャビーの様子を見に行きますが、ギャビー・ギャビーの顔が全部または一部が隠れている状態で会話が進みます。
背中越しでの会話
顔の下半分が見えない状態での会話
このように話をする際に顔の一部や全部が隠れているときは、キャラクターの不安や物事を受け入れたくない気持ちなどを表現していることがあります。
顔の一部、全部を隠して会話する = 不安、悲しみ、物事を受け入れたくない
アイデンティティを次へ引き継ぐ
ウッディはこれまでのシリーズで大切にしていた、「保安官バッジ」をカウガールのおもちゃジェシーに、「ボイスボックス」をギャビー・ギャビーに引き継ぎます。
これらのアイテムはウッディにとってアイデンティティの象徴であり、これを他のキャラクターに引き継ぐことで、「生まれ変わる、違う生き方を始める」ということの暗示になっています。
大切なアイテムを他のキャラクターに引き継ぐ = 生まれ変わる、違う生き方を始める
まとめ
今回のトイ・ストーリーは、同じディズニー系列の「カーズ3」や「アベンジャーズ/エンドゲーム」にも見られた「ヒーローをやめ一個人としての幸せを追い求める」を描いた作品であり、ウッディが「おもちゃであることをやめる」ことを念頭にキャラクター同士の距離感の変化を表現する演出が多く見られました。