【台本】社畜死神と見習いショタ死神【かけあい】
タツヤ:社畜死神。見た目インテリ。
カナタ:見習い死神。見た目ショタ。
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カナタ:あ、いたいた。タツヤさん、探しましたよ。こんなところにいたんですか。
タツヤ:ああ、カナタですか。なんです、わたしは忙しいのですが。
あと2分56秒後には抜魂体(ばっこんたい)No.49532の回収に向かわなければ、
カナタ:わかってますよ。それが変更になったから急いで伝えにきたんです。
閻魔様の秘書があなたを探してたんですけどほかにもご用あったみたいなんで、ぼくが代わりに。
タツヤ:変更になった?
あのおじいさん、完全に死にかけだったでしょう。
カナタ:そうなんですけどね、なんか奇跡的に回復しちゃったらしくて。
閻魔様もびっくりされてました。
タツヤ:奇跡的って、医者に余命宣告されてませんでしたか?
カナタ:ええ、されてましたよ。本人も知ってました。
そのせいか生きる気力もなくって、もういつ死んでもおかしくないって、誰もが思ってましたね。
でも、奇跡が起きちゃったみたいなんですよねえ。
タツヤ:そんな状態だというのに回復とは……具体的になにかあったのですか。
カナタ:それなんですけどねえ……。
タツヤ:なんです、はやく言いなさい。
カナタ:恋、しちゃったみたいなんですよね。
タツヤ:……は?
カナタ:恋ですよ、恋。あのおじいさん、若い看護師さんに恋、しちゃったらしいです。
すでに看取りの準備に入ってたらしいんですけどね、なんか、一目惚れらしくて。それで元気になっちゃったそうです。
タツヤ:……あのおじいさん、おいくつでしたっけ。
カナタ:86、ですね。ちなみに看護師さんはピチピチの24歳です。
タツヤ:いい年をした人がいったいなにをやっているんだか……
カナタ:いいんじゃないですか? 誰が誰に恋をしようと、相手に迷惑さえかけなければ自由は自由でしょ。
タツヤ:それでも限度というものがあるでしょう。
カナタ:男は何歳になっても男ってことですね。まあ、ぼくにはよくわかりませんけど?
タツヤ:……それで? あのおじいさんの回収はまだ先になりそうってことですか。
カナタ:ええ、あの様子じゃ、もしかしたら何年か先になるかもしれないってことでした。
タツヤ:まったく人間ってやつは、儚いんだかしぶといんだかよくわからないですね。
カナタ:ほんと、そうですね。
タツヤ:まあ、いいです。それで、ほかの要回収者の情報は?
カナタ:それが、夕方までないんですよ。
タツヤさんならきっとそう言うだろうと思って、ぼくも聞いたんですけど。
タツヤ:夕方ですか……だいぶ時間があいてしまいましたね。
カナタ:ええ。なので、ぼくからひとつ提案なんですけど。
タツヤ:なんです?
カナタ:お昼、ごいっしょしませんか? ぼくも今から休憩なんですよ。
たまにはいっしょに、どうです?なんだかんだ、タツヤさんとしゃべったことってあんまりないなあって思って。
下手するとふたりになったのなんて、ぼくがタツヤさんに回収されたとき以来じゃないですか?
タツヤ:だとしたら、53年ぶりということになりますね。
カナタ:ですねえ……あのときはまさか自分が死神になることになるとは思わなかったし、
そもそも死神がこんな大所帯な上にこんな忙しいなんて知らなかったんですけど?
タツヤ:それはわたしも同感です。
そもそも死神などというものの存在を信じてもいなかったというのに……。
カナタ:そういえばタツヤさんはこうなってからどれくらいに……。
ああ、立ち話もなんですね。続きは食べながらにしましょう。
ぼく、おいしいところ知ってるんですけど、どうです?