見出し画像

おばあさんの金木犀(300字)

食パンに塗った絵の具は

ひからびてパサパサ。

ヒザの穴を縫ったおばあさんは

椅子でぼんやり。

 

茹でたとうもろこしの香りが

ただよってきたリビングに、

NHKが事実を告げている。

 

週に2回のお掃除を

おばあさんはぼんやり見てくれている。

窓をあけると金木犀の香り。

「トキさん、庭の金木犀が立派ね。」

おばあさんはぼんやりと

私の後ろ姿を眺めている。

 

また来週よろしくです。

夕日のキツイ玄関を出ると、

かすかにコオロギの声。

 

中央線は人の匂い。

人の合間からビル街のネオン。

おばあさんの夜はどんなだろう。

とうもろこし食べてくれてるかな。

  

家族はどこにいるんだろう。

 

改札を抜けると首筋がひんやりとした。

来週はタライで足湯をしてあげよう。

いいなと思ったら応援しよう!

ただよい散文 -UKEN-
もしお気に召したら僅かでもサポートいただけると嬉しいです☆ よろしくお願いいたします