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褒めるっていうか、盛り上げる
大学生の頃、4年間、小学生にサッカーを教えるバイトをやっていた。
教えると言っても、「こうした方が蹴りやすいかも」とか「ここでボールもらった方がチャンスなるかも」みたいなふわっとしたことしか言っておらず、あとはもっぱら応援したり、盛り上げたりしていた。
当時のバイト先には私を含め3人、教える人間がいて、1人は指導歴10年以上のベテランの方で、もう1人は元Jリーガーという経歴であった。
その中にただの大学生が混ざっていたので、本当に私が教えることなんてなかった。
練習も雑談が多かったし、2人のコーチが真面目にサッカーを教えている中で、笑い声ばっかり聞こえてくるのが私の担当していたクラスであった。
元プロや指導歴の長い人は何を教えているのか気になり、普段教えていない学年の子達に、何を教わっているのか聞いてみた。
指導歴長いコーチは何を教えてくれてるの?
「リフティングが多いよ」
元プロコーチは何を教えてくれているの?
「ドリブルが多いよ」
ふわっとしたアドバイスしてない自分が恥ずかしくなった。
私って何を教えてるんやろ?
子供に聞くことではなかったが、ぽろっと口から出てしまった。
普段教えている子供ではなかったが、「え?お前何言ってんの」というような顔をされた。
「笑いちゃうの?」
私はサッカー中に笑いを教えていたらしい。
その日から、割り切れたというか、そもそもサッカーを教えていたつもりはなかったが、笑いを教えているというか、笑いは提供できていたんだと思い、子供と積極的にコミュニケーションを取るようになり、
電車引率の試合の時には子供からうるさいと注意されることもしばしばあった。
大学を卒業するタイミングでバイトも辞めたのだが、その後一緒に笑わせあっていた子供たちも何人か辞めたのを聞いた時は、私がいないことだけが原因ではないだろうが、ゲームとかの娯楽に負けない笑いは提供できていたのかもしれないなと、少し自信にはなった。
それから10年以上経ち、先日久しぶりに、知人が教えている小学生のサッカーチームの試合を見る機会があった。
今の小学生は普通に技術が高く、「こうした方が蹴りやすい」とか「ここでもらった方が、、」などのアドバイスは必要がなさそうであった。
10年以上ぶりに子供のサッカーを見た、強豪校出身でもなければ選抜などにも縁もゆかりもない人間にできることは、
応援することしかなかった。
「頑張れー!」
「いけいけー!」
「ナイスー!」
面白くないプロの試合よりも盛り上がり、盛り上げた。
と思う。
今の小学生は本当に技術は高いが、あと一歩相手との距離を詰めたり、線を出そうなボールを最後まで追いかけるとかは、
声で盛り上げたらもう一歩足を出したり、出そうなボールを滑り込んででも残そうとするプレーが見られた。
その上で、いいプレーはいいプレーで盛り上げるのが効果的なように感じた。
褒めるというより盛り上げるが、なんとなくしっくりくる気がした。
その日の帰り、奥さんの運転で家まで帰った。
奥さんは、心配性で、真面目な性格で、運転は非常に慎重派である。
そのため、おそらく運転は好きではないと思っている。
法定速度は順守し、右左折、車線変更は何度も首を振って目視で安全確認をする。
普段は、「そこまで首振らなくてもしなくてももう曲がれるよ」や、
「もうちょっとスピード出してもいいかも」と思ってしまうのだが、
「車線変更ナイスー!」
「すり抜けてくるバイクいたやん!車線変更前の安全確認サンキュー」
と盛り上げてみた。
「え?そうかな?」
「あれ?もしかして私、運転うまくなってる?」
とご機嫌で運転してくれた。
これを、
「お!車線変更上手ー!」
とか、
「え、今のすり抜けバイク見えてたん?すごいやん!」
としてしまうと、わざとらしさと、子供扱いしているように見えてしまうので逆効果のように感じることもあるだろう。
子育ても、夫婦関係も、もしかしたら職場の先輩後輩も、大事なのは褒めるではなく盛り上げるかもしれない。
奥さん、あの日の運転、マジでナイス!