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汚い話①

汚い話です。苦手な方はご注意ください。


大学時代、2つ上の先輩が非常に私のことを可愛がってくれた。

初対面の時から何かを察してくれたのか、「お前はタメ口でいい」という許しを得て、厚かましい私はその日からその先輩にはタメ口で話している。

その先輩は私にいろんなことを教えてくれた。


初めてご飯をご馳走してもらうという経験をし、厚かましい私は、100円じゃない回転寿司に、行列のラーメン屋などで毎回ご馳走になっていた。

あと、おしゃれというか、ファンション的なことを教えてくれたのもその先輩だった。


服などを買いに行く時はついて行って、おしゃれな店やかっこいいブランドを教えてもらった。

そのせいか、2人ともが卒業した後のクリスマスに男2人で遊ぼうという悪い企画を行ったのだが、


ブランドこそは違うが、赤いコート、茶色のニット、濃いめのデニム、という全く同じ格好で集合してしまった出来事があった。


その時はお互いをいじるのに、ビールが3杯ほど必要であった。


その先輩から非常に影響を受けている私は、卒業してからも定期的に会うのだが、その度に何かしら影響を受けている。

先輩がウイスキーにハマっていた頃はウイスキーを飲んでいたし、先輩が髪を伸ばしてたら私も伸ばして、切ったら切っていた。

一番直近で会った時は、かっこいいメガネをしていたので真似して同じのを買おうと思った。

メガネもカッコよかったのだが、ファッションもスポーティーというか、アウトドアっぽい印象になっていて、父親にもなってたので系統が変わったのかなと感じた。

それも真似するつもりである。

私は、そこに追いついていなかったので、自分が持ってる中で一番高いTシャツと、学生時代先輩とよく買いに行ったブランドのズボンを履いて行った。

そのズボンは買ったはいいものの、なかなか履く機会がなく、先輩と会うこのタイミングがベストな気がして、その日にデビューした。

先輩の奥さんとお子さんにも会って、夜は久しぶりに先輩と2人で飲みに行った。

何軒かお店をはしごして、解散しようかとなったタイミングで、先輩がトイレをしたいと言い出した。

確かにお酒も飲んでおり、私もトイレはしたかったので、近くの公園の公衆トイレで2人で用を足した。ちなみに小さい方である。

先輩は、泊まりで来ていたので、ホテルまで歩いて送ることにした。

「やっぱ、まだトイレ行きたい」

と先輩が苦しそうな声で言ったきた。

「いや、さっき行ったやん」

とは答えたものの、確かにまた出そうちゃ出そうやなと思って、トイレを探しながら歩いていたのだが、夜中なこともあって、空いてる店は少なく、コンビニなども利用を断っている店が多かった。

「最悪もう一軒飲んでもいいからトイレ探して」

と言われ、


先輩というものはいつまでも先輩で、タメ口使っているが、さん付けで呼んでおり、先輩の言うことは絶対、で育ってきてるので、すぐ入れそうな店を探してきて、先輩を誘導した。

店に入るや否や、先輩はトイレに駆け込んだ。

後輩なんで、この会計も出してもらう気満々なのだが、気を遣って、先輩と自分の飲み物を注文した。

先輩はなかなか帰って来ず、失礼を承知で一口ハイボールに口をつけたが、先輩が席に戻ってくる頃には私のハイボールは半分になっていた。

「ごめん、先飲んでる」

「あー、全然いいよ」

となり、2人で飲み直した。

「結構、トイレ長かったな」

「大きい方してたから」

と先輩は言った。

「公園の時も大きい方したかったんやけど、トイレ汚かったし、我慢しててん」

先輩は続けた。

「え?小さい方してる時、出そうにならへん?」

と先輩に聞いてみたところ、

「あー、おれ、大きい方と小さい方わけてできるねん」

と、ドヤ顔で言っていた。

学生の頃、先輩の当時の彼女のことを可愛いですね、って言った時と同じドヤ顔をしていた。


「お前はまだできひんのかー」

こんなものにできるできないもないし、器用不器用なんてものもない。


でもお酒を飲んでることもあり、先輩はいつまでも先輩なのだなと感じたし、追いつかないといけないな、と言う気持ちになった。

先輩と別れて、徒歩で自宅に帰っていたのだが途中で、小さい方がしたくなった。

もちろん先ほどと状況は対して変わらず、空いてる店もなければ、時間や場所的にコンビニもないような状態であった。

さっきの店で、してから帰ったらよかったなと思いながらも我慢した。

ピークを越す感覚を誰しも経験したことがあると思うのだが、それに余裕をぶっこいでいたら、突然の便意である。

遠回りになってもいいので、トイレを見つけることが優先順位の最上位となり、目視できるくらいの距離に公園を見つけた。

トイレがない公園の可能性、あったとしても汚い可能性、いろんな可能性を瞬時に計算して、弾き出した結論は、GO、であった。

いや、計算なんかしていない、綺麗なトイレあってくれー、としか思っていない。




めちゃくちゃ汚いトイレであった。


「あー、おれ、大きい方と小さい方わけてできるねん」

少し前の先輩の言葉が脳裏に浮かんだ。

小走りしたこともあってか、ピークの波は超えているように感じた。

先輩にできて、後輩にできないことはない。

そう決意して、そのトイレで小さい方だけをすることにした。



え?どうやってわけてするん!?



ってびっくりするくらい、普通に大きい方が出てきていた。


大きい方を我慢する、小さい方だけ出す、とか意識をどこかに向けたり、何かを頑張るとかもなく、普通に出てきていた。


小さい方を出し切れば、大きい方の我慢はできたので、

不本意ながら、汚いトイレで残りの大きい方を出し切った。


パンツはもちろん、新品のポールスミスのズボンもしっかり汚れていた。



やっぱり先輩はいつまで経っても偉大な先輩なんだなと実感した1日だった。

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