紅茶検定、受けてみた。
朝の紅茶が美味しい季節になってきた。
眠い目を擦りながらでも私の手はきっちりとティーカップを選び、お気に入りのティーバッグを沸かしたてのお湯に沈められる。
仕事中に紅茶が欠かせない季節になってきた。
とにかく職場が寒い。
子どもたちといるときは動くし子どもたちの体温が高いのでそんなに感じないけれど、事務仕事をしているとことさらに冷える。
手元の紅茶は冷え切って動きが鈍くなってきた指先を温めるためにも重宝する。
紅茶と夜更かしが楽しい季節になってきた。
毛布を体に巻き付けて紅茶の香りに包まれながら読書をして、お茶請けにはちょっと高級なチョコレートをつまむ。
休日前の夜はこうしてゆったりと更けていく。
幼い頃から紅茶が好きだ。
かの文豪・森茉莉女史が著作『貧乏サヴァラン』のなかで日々の生活に紅茶が欠かせないことを語っているが、私にとっての紅茶もまさにそう。
(ついでに言えば彼女の「書くには紅茶が欠かせないが紅茶があるからといって書けるわけではない」という主張には深く頷かざるを得ない。ほんとそれ。)
ただ紅茶が好き、というだけで、正しい淹れ方とか茶葉の種類とか効能とか、そういった知識はほとんどない。
なにせ私はティーバッグで三杯紅茶を淹れる女である。
これが正しくないのはさすがにわかる。
でも貧乏性なのでついついやってしまう。
紅茶好き失格である。
そんな私が今回、『紅茶検定』なるものにチャレンジした。
◆紅茶検定とは?
そもそも紅茶検定とは、
ことを目的とした検定だ。
国内唯一の紅茶関連業者団体である日本紅茶協会の協力のもと開催されている検定で、紅茶のおいしい淹れ方をはじめ、世界の紅茶事情や紅茶の道具など、紅茶にまつわるあらゆる知識を学ぶことができる。
初級(ベーシック)、中級(アドバンス)、上級(プロフェッショナル)の三段階に分かれていて、級が上がるにつれてより細かな知識が試される…といった感じだ。
合格するとティーアドバイザー養成研修の会費が15%オフになるらしい。
ティーアドバイザーってなに。かっこいい。
◆受験に至った経緯
私がこの検定を知ったのはもう2年くらい前のこと。
よく行く紅茶のお店のリーフレットに店員さんのインタビューが載っていて、なんとなく目を通していたときだった。
店員さんが紅茶の魅力をより深く学びたいと受験したというその検定に興味が湧いた。
調べてみると検定自体が不定期開催らしい。
その時はちょうど第4回の試験が終わった直後、次回開催は未定ということだった。
「紅茶検定」なんて知っている人の方が少ないだろうなぁ。
履歴書によくある資格欄とかに書いてあったらとんでもなくかっこいい。
そうでなくとも好きな紅茶の茶葉の名前とか答えられたらもっと堂々と紅茶好きを名乗れるのでは?
そんな感じで頭の片隅に存在を留めて約2年。
Instagramの広告で第5回紅茶検定の開催を知った。
もともと好きなものはより深く知りたい私。
紅茶を含め勉強したいことは多々あるけれど、きっかけがないと着手できないずぼらな私はこれを機に紅茶について勉強しようと受験を決めたのだった。
今回私が受験したのは初級(ベーシック)。
しかし開催を知ったのが受験日1ヶ月前とかなりぎりぎり。
教採ぶりの受験勉強が始まった。
◆受験勉強
受験勉強といっても、指定のテキストを繰り返し読んだだけなのだけど。
しかも勉強時間は通勤時間と休日のみ…。
テキストの分厚さにさっそく気が遠くなりそうな私。
ところが紅茶検定のテキスト『紅茶の大辞典』はオールカラーページで写真も多く、大辞典というより紅茶好きのための雑誌やコラム集のような感じだった。
おいしい紅茶の淹れ方にはじまり、紅茶の道具や歴史、茶葉の種類と特徴や茶園の位置…紅茶をこよなく愛する庶民の味方・ティーバッグを使用した紅茶の淹れ方も。
ただの紅茶好きである私には知らなかったことばかり。
紅茶の世界、奥深い。
しかし何事も実践してみなければわからない。
ということで、学んだ知識をフル活用して紅茶を淹れてみることにした。
やはりここは馴染み深いティーバッグで。
ティーバッグはチープ、というイメージがあるけれど、便利かつ形状にあった製法をされているだけで品質にはなんら遜色ないらしい。
ならゴールデンルールと呼ばれる正しい淹れ方をすればティーバッグでもおいしい紅茶を淹れられるはず…!
汲みたての水でお湯を沸かし、あたためたカップに注いだ。
そこに静かにティーバッグを浸すと、じんわりと紅茶の色が広がりだす。
その光景を見ていたい気持ちをぐっとこらえて、きちんと蒸らすこと約3分。
もちろん一つのティーバッグで三杯淹れるなんて邪道なことはしない。
蓋にしていたソーサーを外すとふんわり広がるいい香り。
…えっ、ティーバッグなのに!?とここでびっくり。
ティーバッグでもこんなにいい香りがするんだ…と感心しながらひと口飲んで目を見張る。
お、おいしい…!
これまで家で飲んできた紅茶の常識を覆すおいしさに私はまじまじとティーカップを見つめた。
おうちで、しかもティーバッグでこんなに美味しいお茶が飲めるなんて。
もう一つのティーバッグで三杯飲んでいた私には戻れない。
余談だが「いや、はじめて根拠に基づいて淹れたからおいしく感じているだけかもしれない」と思った私、このあと普段の飲み方でもう一度飲んでみた。
見事に色つきのお湯だった。
もちろんこのあと缶入りの茶葉でも淹れてみたが、これがまたなんとも心躍る作業だった。
いい香りだし、茶葉を掬う感触やポットに落とす時のさらさらした音など、何もかもが私の心を擽る。
茶葉で紅茶を淹れるのは結構手間がかかるし片付けも面倒なので特別な時しかしないけれど、この時間さえゆったりと楽しむこともまた紅茶の醍醐味なのかもしれない。
長年親しんできた(はず)の紅茶についてはじめて出会ったかのような衝撃を繰り返しながら私の勉強は続いた。
休日にはきちんとゴールデンルールを守って淹れた紅茶を片手に参考書のページを捲る。
就職してからなにかと忙しない日々を送っていたけれど、この時間は勉強しているはずなのに不思議とゆったりすることができた。
そして9月の最後の日曜日、私はどきどきしながら試験のURLを開いたのだった。
◆結果は・・・
そして先日、とうとう結果が出た。
やったー!!
勉強期間短かったし、ひとつ基礎の基礎でミスをしたので不安でしたが無事合格。
ひとつ憧れを叶えた瞬間だった。
後日郵送されてきた合格認定書は、カレルチャペック紅茶店オーナー・山田詩子さんのイラスト入りでとってもかわいい。
取得級によって絵柄が違うそうなので、並べて飾りたくなってしまう。
そこで。
2023年2月。
紅茶検定中級、受験します。
もちろん認定書が欲しいだけが動機ではないけれど。
せっかく勉強したなら行けるところまで挑戦してみたい。
中級では個人的な鬼門・産地についての問題も多く出題されるらしい。
今回よりも勉強期間は長めに取れる(はず)なので、テキストをじっくり読み込んで合格に向けてがんばろうと思います。