サスペリアと世紀末ウィーン

予告編を見たときから、ホラーっぽさよりも画面の美しさが気になっていたサスペリア2018年版。

70年代のカルトホラーをリメイクした作品です。

冷戦下のベルリン、3人の聖母(魔女)、暗黒舞踏、トムヨークの音楽などなど、どの方向から鑑賞しても奥が深そうな作品ですが、個人的には美術セット等のビジュアル面が気になっていろいろと調べてみました。

あらすじ
1977年のベルリン。アメリカからやってきた少女スージーは、暗黒舞踏を踊る名門校へ入学する。
精神科医のクレンペラーは、患者のパトリシアから自分が入団している舞踏教室で夜な夜な奇妙な悪魔崇拝の儀式が行われていると聞き、その後パトリシアから一切連絡が取れなくなったことを不審に思い、独自に調査を行い始める。
出典:wikipedia

監督は「君の名前で僕を呼んで」でおなじみのルカ・グァダニーノ監督。プロダクション・デザイナーは、インバル・ワインバーグというイスラエル出身の女性だそうです。(スリー・ビルボードの美術もやっている)

"We wanted to focus on the forefathers of modernism, especially Austrian architecture from the early 20th century," Weinberg told Dezeen.
出典:Dezeen

サスペリアの舞台が70年代ベルリンなので、普通はバウハウスのようなモダニズム建築を意識したセットを用意しますよね。ただ、上記インタビューでも語っているように、20世紀初頭のオーストリア建築にも影響を受けているそうなのです。

"Loos and Hoffman were important, as they were the bridge between the late 19th century and what would become Bauhaus. So you could still feel this classicism," she explained.
出典:Dezeen

“Loos and Hoffman”というのは、世紀末ウィーンあたりに活躍した建築家で、アドルフ・ロースと、ヨーゼフ・ホフマンのことです。

この二人が活躍した頃のウィーンは、アール・ヌーヴォーを意識した装飾の多いデザインがピークを迎え、それに異を唱えてモダニズムに移行しようとする動きが出始めた「過渡期」だったみたいですね。

アール・ヌーヴォーのエレガントさも残しつつ、ドイツらしいモダニズムも併せ持つ、両方の要素を持ったデザインイメージにしたかったんだと思います。

出典:Architectural Digest

大理石を使ったファサードなんかは、特にアドルフ・ロースの建築に寄せているそうです。

出典:Dezeen

床に描かれているバウハウスっぽい幾何学模様は魔女の爪をイメージしているそうな。
全体的にくすんだペールトーンや茶色など、彩度の低い色が使われている点もけっこう好きです。(この辺は70年代冷戦当時のベルリンの暗いイメージ)

ダリオ・アルジェント版の、カラフルで毒々しくてコンセプチュアルな世界観(こっちも好き)とは正反対なアプローチで、どっちの作品もビジュアル的に楽しめると思います!

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余談ですが、タイトルデザインはDan Perriさんで、スターウォーズのタイトルシーケンスを考え出した凄い方。

出典:vox

さらに余談ですが、ルカ・グアダニーノ監督はインテリアデザイナーになりたかった方らしく、2018年にはAesopローマ店のインテリアコモ湖の別荘など映画以外のプロジェクトにも携わっているそうです。だからインテリアが美しいんですかね〜