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ダイバーシティのある学校?

少し前にMBATというMBAの学校対抗運動会のようなものがパリ(HEC Paris)で行われました。その際、ポジティブな話ではないものの、個人的に学びの多かったイベントがあったので、少し話を丸めながら紹介させてください。

状況 

MBATは合計で1500人くらいの学生が約20のヨーロッパのMBA校から集まるイベントで、ケンブリッジからは150人程度参加しました。パリへの移動、現地での宿泊、多数の競技など、とても複雑なロジスティックスを伴うイベントということもあり、こうしたことをとりまとめて、HECとのやりとりをする窓口として、各学校MBAT担当を設置します。ケンブリッジはヨーロッパ系の男性Aでした。

事件はホテルの部屋割りを決める際に起こりました。主催のHECは、各校が交流できるようにするため、各学校の参加者を一つのホテルに固めることはせず、いくつかのホテルに分割させる形式を取りました。ケンブリッジは合計3つのホテルに割り当てられます。

ここで、Aは以下のように割り当てをしました。見ての通り、だいぶ露骨です。

  • ホテル①(学校の隣):Aが仲の良いメンバーを集める

  • ホテル②(学校からバスで20分程度):ごちゃ混ぜ

  • ホテル③(学校からバスで20分程度):中国人・日本人など

以降の時系列

  • 中国人男性B(ホテル③に割り当て)が、「部屋決めはくじ引きで決まったのか」とチャットで質問

  • Aは、「生成AIのアルゴリズムで決まった」と回答

  • Bは「ランダムだとは思えない」と回答

  • ここで、ホテル①に選ばれた人たち(中華系アメリカ人を含む)がAを応援。「大変な調整ありがとう」といったメッセージを送る。ここに、ホテル①に選ばれたメンバーから大量のlikeがつく。

  • Bも感謝を述べつつも、「これはnepotismとratial profilingに基づくものであり、そしてケンブリッジの人がこうした行いに賛同することが不快だ。その上で、ホテルの割り当ての結果自体に不満はない。」と表明。

  • ここで、中華系アメリカ人女性Cから、「このアルゴリズムは冗談でしょ。別のものが必要だよ。」というコメントが入り、大量のlikeがつく。

  • この後、Cに同調するコメントが続く。

  • Aは、「気分を害した人には申し訳ない。そういう意図ではなかった。自分は、仲の良いグループを一緒のホテルにしようと調整を行ったが、限界があった。白紙のエクセルを送るので、早い者勝ちで埋めてくれ。」と回答。

  • 同時に作業する人が多すぎた結果、エクセルシートが崩壊。最終的にはオンライン会議を繋ぎながら、シートを投影して、ランダムで部屋を割り当てる形で収束。

所感

言わずもがなAの行為は褒められたものではありませんし、日本人的な感覚で言うと、「あまりにも露骨すぎないか、もう少し上手くやれ」と感じます。その上で、個人的には学びの多いイベントでした。

Aによる事態収束

Aの最後のコメントは、本当にそうなのか若干怪しいですが、私は炎上した際の対応はかなり上手いものだったと感じます。

まず、人種差別であったことは認めず、仲の良い人たちをグループにしたと言う表現で踏みとどまったこと。そして、解決策の議論に誘導していったこと。エクセルに自由に名前を入れるという若干雑な方法ですが、この案が出てきたことで、もっと適切な方法がないかという方法の議論に移っていきました。

Bのアプローチ

私も違和感を感じつつも、波風を立てたくないなと思い諦めてしまっていたので、素直にBの振る舞いには尊敬をしました。

コミュニケーションの方法として特に参考になった点は、まず最初の時点で喧嘩腰にならずに、割り当て方法をフラットに聞いた点です。加えて、結果に不満があるのではなく、プロセスが不満だと明確に問題を切り分けたことです。これらは、冷静に議論を進め、Aが誤魔化せないようにする上で、極めて効果的だったと感じます。

Cの役割

Cのフォロワーとしての役割はベストだったのではないでしょうか。

Bのコメントはとても直接的なもので、空気が重く、賛同の声を上げづらかった中で、Cはユーモアを混ぜながらもAの方法に対しては違和感を明確に示し、Bをサポートする役割を担いました。これによって、それ以外の人たちも賛同をしやすくなっていきました。また、純粋なアジア人ではなく、中華系アメリカ人であるCが発したことで、欧米VSアジアという対立構造にならず、是々非々の議論になっていった印象もあります。

自分は誰を目指していくのだろう、?

「ダイバーシティー」「インクルージョン」を強調しているような学校でも、実はこういう事態は起こりえます。普段はフラットに話せてていても、学生全員を同じ土俵で比べる作業を通じて、Aが感じていた序列が可視化してしまったのだと思います。

実はBが意見を表明した後、私はBに個別にメッセージを送り、「自分は弱くて仕方ないと思って諦めてしまった。みんなの前ではあなたに賛同できなくて申し訳ないが本当に感謝をしている。」と感謝を伝えました。そうしたところ、Bから逆に感謝の言葉をもらい、後日Bからの誘いでコーヒーチャットをしながら、将来やりたいことなどについて意見交換をしました。次のステップは、みんなの前でBをサポートできるCのような人になることかもしれません。

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