今月の課題図書:論点思考
仮設思考に引き続きBCGのコンサルタント内田和成氏の著書。
仮設思考は問題を設定した上での解決方法や実行策を考える為のものだったが、今回は「そもそもの問題設定を正しくしましょう」というもの。
問題設定を正しく出来ていなければ当然その問題を解いても望んだ結果は得られない。
与えられた問題をまず疑うこと。「どの様な新商品を出すべきか」と聞かれても「新商品を出すことが売上の増加、企業の成長につながるか」と考えること。
■論点を設定する際のステップ
①論点候補を挙げる
②論点候補を絞り込む
③論点を確定する
④全体像で確認する
①〜④は毎回全て行う訳ではなく、③と④を行ったり来たりすることもある。
■論点と現象を区別する
文字通りだが、つい陥りがちなこと。
これも「論点を正しく設定しないと間違った答えを出す」ということに加え、「論点によって打ち手は変わるので、現象のどの側面を論点とするかを設定しなさい」というお話。
例えば「会社に泥棒が入った」は一見問題のようだが、これはただの事象である。そこから「セキュリティ体制の不備」を論点とするのか「エスカレーションの遅さ」を論点とするのかによって打ち手は異なる。
またよく「少子化問題」と言われるが少子化も問題ではなく現象である。
そこから「労働人口の減少に伴う日本の生産性の低下」「生産年齢人口に対する老年人口の増加による若者の負担増」「社会保障費の歳出像による財政破綻」のどれを論点とするかにより打ち手は異なる。
つまり、論点を決めるには「誰の、何の為の問題なのか」ということを考えて、与えられた問題も常に疑う必要がある。
■論点の流動性について
一度論点を決めてもそれで終わりではない。
・論点は人によって変わる
・論点は環境によって変わる
・論点は進化する
ということを心がける。
・論点は人によって変わる
→上述の通り。少子化という現象について、若者の立場で問題を考えれば「負担増」だし、国の立場で問題を考えれば「生産性」や「財政破綻」である。
・論点は環境によって変わる
→ウォークマン最盛期のソニーにとっては「ウォークマンのシェアをどう伸ばすか」が突然のipod登場により「ipodにどう対抗するか」が論点に変わる。
また、時間と共に論点が変わることもある。新薬の開発フェーズにおいては、効果や副作用が論点としてフォーカスされるが、開発後は「どう売るか」が論点となる。
・論点は進化する
→例えば上司から「新規顧客を開拓して欲しい」と依頼が有り、その為の調査をしていたら、結果「既存顧客のリピート率を上げた方がよい」と分かり上司にそれを報告したら「確かに、ではリピート率を上げる方向で」の様になることもある。
■論点に当たりをつける
論点の候補を挙げる&絞り込む行為。
論点を選ぶ際に大事なことは「解けること」と「効果があること」。この章ではこれを繰り返し強調している。
解けない問題に向き合うことは学問の世界では意味があっても、予算や時間の限られたビジネスの世界では意味がない。
また、解けたとしても効果が薄ければこれまた意味がない。
なので「解決できるか」「解決できたとして実行可能か」「解決した時のインパクトはどの程度か」の3点で考える。
当たりをつける為のアプローチの方法としては「Why so?」を繰り返し深堀する【芋づる式】や、他にも依頼者の関心の低い分野を探る、という方法もある。
後者について、依頼者の関心が高い分野は比較的マネジメントされている、依頼者が状況を把握している可能性が大きい。
なので関心の低い分野を探ると、大きな問題が潜んでいたり、改善の余地が大いにある可能性があるとのこと。
ただ、どの方法で行うにしても、仮説を用いて臨むこと。絶対に網羅思考をしてはならない。
芋づる式に深堀りをしていると、当然問題が深まる場合もあるが、行き詰ることもある。
そんな時は視点を変えることが重要で、これを「転調する」と呼んでいる。
例えば、自社と競合の商品で認知率・トライアル率・リピート率を比較しても正直有意な差が出ない。
そんな時はこの論点は捨てて、地域別・チャネル別…等異なる視点で論点を考える。
では、解決できない問題とはどんなものか。
例えば今のリソースでは難しいもの。これは分かりやすい。
厄介なのは「確率が低いもの」である。確率が低くても「絶対に起きない」とは言い切れないからだ。
ちなみに、筆者はメーカーの経営者から「上手く行っていない技術が本当に使い物になるか証明してくれ」という依頼があったらしい。
この時は各要素の成功率が何パーセントで、その分布はどんなもので、という情報を元にコンピュータで何千・何毎回もシミュレーションをぶん回す「モンテカルロ・シミュレーション」を使用して結果を見せたとか。
そこで「今から100億突っ込んで利益が出る可能性は2,3%」という結論を出して納得してもらったのだとか。
少しこの章の内容からは脱線するが、「証明してくれ」という問いをそのまま受け取らず「要は存続か撤退かの判断をしたい」ということを汲み取って回答したところは見事であり、依頼者の問いを鵜呑みにせずしっかり論点を設定したからこそ達成できたことだろう。
■全体像を確認し論点を確定する。
・プロービング(探針)を行う
論点にあたりをつけるための方法のひとつアキネーターのように質問をぶつけて論点相手の反応を見て論点を定めて行く方法。
毎回ロジカルにアプローチすることが良いとは限らない。
例えば何か食べたい何か美味しいものを食べたいと言われた時に相手の好きな食べ物や最近食べたものリストの中から探るということはしない。
課題が提示された時点でその意図や目的を確認することは非常に大切である。
ただし角を立てないように効くというスキルを身につける必要があると感じた。
また現場を見るということも非常に大切。
話を聞くということも大事だがそれ以外にも現場で働く人がイキイキしているか、また他部署の人が来た時の反応などを見ることも非常に重要である。
■発言の真意を探る
これも提示された論点を疑うと言う内容である。
例えば日常の会話であれば社交辞令等を見抜くことを日常的に行っているが、何故か仕事の場では言われた言葉をそのまま額面通りに受け取ることが非常に多い。(個人的に非常に心当たりがある。。)
ここも日常と同じように真意を直感的に考えれば良い。
また社長が自分の息子に事業継承したいが、それを表立って言うことができない為「向こう2,30年盤石な経営基盤を築きたい」という言い方で言うこともよくある。
■ワクワク・ドキドキさせる提案
要は藤田田氏の言うとおりワクワク感とやばいかも刺激するような提案にする必要がある。
■引き出しを参照する
相手の話を聞きながら自分の引き出しを参照することが大事である。
それは相手に話すだけではなく相手の話を自分の中の引き出しどマッチングさせながら聞く、つまり自分の中にあるものとリンクさせるという聞き方をするためにも必要である。
引き出しの使い方作り方引き出し方としては
・アナロジー:類似事例をあげること
・顧客視点で見る
・鳥の目虫の目(マクロ&ミクロ、対局&局所)で見る
・過去の経験を参照する
という方法がある。
特に類似事例に関しては、他業界でも構わない。
例えば通信業界において規制緩和により NTT が大きな影響を受けたことについては、過去に航空業界で同様の事例が起きていた、という類似事例がある。
それを使ってその事例から規制緩和の結果、複数企業が参入してきた場合どのような影響があるかということを例示することができる。
■論点の構造化
論点が少しずつ浮かび上がってきたら次はそれを構造化する必要がある。
ただしコンサルタントがいつもMECEやイシュー・ツリーを必ずきっちり使っているかといえばそうではない。
極論を言ってしまえば全員が自分の型を持っている。
また構造化する際にある論点Aとある論点Bが浮かんだが、それらには一見して関連性が無いように思える。
そういった場合には各論点の上位構造を考えて並列化できるもの、同じ階層・同じレイヤーの論点を考える。
また穴あきのツリーを作ることで構造ができることもある。
そして構造化を行う上でもロジックツリーやイシューツリーを全て綺麗に作ることを目的とするのではなく、そこでもあたりをつけることが必要である。
あくまでフレームワークはチェックシートとして使う
そして大論点・中論点・小論点が整理できたとしても、必ずしも大論点から着手するとは限らない。
例えば大論点は多大な費用がかかる場合にはすぐに効果の出そうな小論点から取り組んで、その後本腰を入れて大論点に取り組むということもありうる。
■引き出しを増やす為に
・引き出しを頑張って作らない。
作ることを目的化しない、という意味。その為には「集めない・整理しない・覚えない」こと。
その代わりアンテナを張りそこに引っかけるようにする。
アンテナとは問題意識であるが、もっとわかりやすく言えば「興味や好奇心」である。常日頃から興味・関心を持つこと。
■人材育成と論点思考
考えてもらう為には仮説ではなく論点を与える。
仮説を出してしまうとその証明の為のワーカーになってしまうこともある。
■論点思考と仮説思考
論点思考と仮説思考は相反するものではない。
論点を設定する際も解決策を考える際も仮説思考を用いる。
そして、与えられた論点は常に疑う。
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