あんときのフィルムカメラ 番外編:HEXANON AR 50mm F1.7でレンズ沼
高速鉄道と私たち
高速鉄道を走らせるのは文明である。誰もがそれを便利だと思う。だからどの国も、経済がある程度成熟してくると、高速鉄道を建設する。しかし、一〇分間隔でこれを運行し、さらに一分の遅れが出てるのにも慎重になること、逆に言えば、一分の遅れで一般市民から苦情が来るのは、日本特有の「文化」である。
(出典)平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』講談社現代新書、2016年、195頁。
人口が減少し、産業全体が縮小していくなかでは、とてもじゃあ、ありませんが「経済成長」を望むことは不可能です。しかし、なぜか、経済成長で不況を乗り越えようという言説を耳にすると、
はてさて
などと思うとき、紐解きたいのが劇作家平田オリザさんの『下り坂をそろそろと下る』(講談社現代新書)を紐解くことをおすすめします。
人口は少しずつ減り、モノだけがあり余っているのが現代社会の実情です。大きな成長など望むべくもない時代であるとすれば、それを前提にしてあらゆることを見直すことが必要になりますが、平田さんの本書での指摘は、その導きになります。
ここまでお読みになって、「時間通りのほうがいいに決まっているじゃないか!」とお怒りになる方もいるだろう。だが「いいに決まっている」というのは、すでにその時点で一種の判断停止だ。
(出典)平田オリザ、前掲書、195-196頁。
「大きいことはすばらしい」のか?
さて、先日、1976年に発売されたKonicaの一眼レフカメラ コニカ Acom-1 に標準レンズ KONICA HEXANON AR 50mm F1.7 にISO100 富士フイルム富士カラー100を入れて冬から春への景色を記録してみました。
1976年と言えば、ポストオイルショックの高度経済成長の終焉のはじまりの時代とでも表現すればいいでしょうか。
要は大きいことはすばらしい式の認識の転換が求められる時代背景は整ったタイミングですが、人間の認知にはやはり少しズレがありますから、次々と大型化、あるいは正確化が進行していく時代です。
カメラを振り返れば、当時は1980年のオートフォーカス前夜です。露出優先、シャッタースピード優先といった機能がデフォルトになりつつある時代であり、それはカメラの大型化を必然とさせていくわけですけれども、このkonicaのAcom-1は露出計は内蔵するものの、そうした複雑な機構を盛り込まず、コンパクトにカメラを創造することで、一眼レフカメラ普及の一役を担うことになりました。
基本的な機能がしっかりしてい、加えてコンパクトで使い易いということが売れた理由でしょうかね。
だとすれば、便利であるにこしたほうがない式の、先の「時間通りのほうがいいに決まっているじゃないか!」という言説には、やはり
限界があるんじゃね?
などと思ってしまうのですがね。
落ち着いた色彩再現力のヘキサノンレンズ
加えて、中古のフィルムカメラの場合、例えば、シャッタースピードの正確さは「だいたい」というぐらいで使っていかないと、足元を救われてしまうのが事実ですから「時間通りのほうがいいに決まっているじゃないか!」と言われましても、それは「確かにそうですが」で話が終わってしまいます。
話が終わってしまえば前へ進めませんので、そういうものだとして使っていくほかないけれども、それでも
まあ、間に合ってしまう
というのが事実ですから、「なんとかじゃないか!」と高度経済成長式の言説には注意したほうがいいかも知れませんね。
さて、脱線が長く続きましたが、Acom-1とヘキサノンレンズに戻ります(苦笑、
フィルムカメラで撮影するとどうしても、現像で仕上がりが出来上がるまで、実際どのように撮影されたのかわかりません。
そして、それがフィルムカメラであえて撮影する醍醐味ですが、コストが嵩むのも事実ですから、今回はもう少しヘキサノンレンズの魅力を確認したく思い、デジタルカメラにアダプターを挟んで、少しだけ初春から桜の季節をスケッチしてみました。
カメラ本体は、富士フイルムのX-Pro1で、ISO200。露出優先で撮影してみました。
レンズの性能チェックの意味を込めて、開放F1.7と最小絞りF16で同じ被写体を撮影してみましたが、いかがでしょうか?
現在のレンズのように「こってり」とした色彩ではありませんが、落ち着いた色彩再現力がこのレンズの魅力ですね。開放時のボケ具合が少々煩わしい感は否めませんけれどもね。
拙い写真ですが、以下、作例です。
撮影は2021年3月19日から4月1日にかけて。X-Pro1、ISO200、露出補正なし、ホワイトバランスオート。香川県仲多度郡多度津町、三豊市で撮影しました。瀬戸内讃岐の春を告げる花々を中心に取り上げてみました。
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。