【コラム】あの言い伝え?科学で解明する話
落ちた食べ物は3秒以内に拾えば大丈夫?それとも10秒?
よく言われるのは、3秒ですね。俗にいう、「食べ物の3秒ルール」食べ物を地面に落としても3秒以内に拾えば大丈夫!というもの。でも、それって、本当に大丈夫なの?って、意外と半信半疑で、何十年って経っていませんか?
ということで、本日は、これらの言い伝えが、本当か嘘か?科学的に解明したいと思います。生活に関わる科学のお話しをしたいと思います。
では、今日は色々ある伝説?言い伝え、まやごと?例えば
「食べ物の3秒以内ルール」「肉料理にはパイナップルがよく合う理由」
「なぜ?フグや蛇、カエルなどの毒を持つ動物は、自分の毒で死なないのか?」「指紋鑑定は日本がきっかけだ」「一夜漬けの勉強は、あまり効果が無い」「健康診断はあまり効果がない」
などがありますが、今日は、「食べ物の3秒以内ルール」と「一夜漬けの勉強は、あまり効果が無い」を選んで解明していこうと思います。
①食べ物の3秒ルール
実は、私も、落とした食べ物の「3秒ルール」を信じて、拾いなおして食べたことがあります。
ご存じですよね? お菓子などをうっかり落としてしまったけど、「3秒たっていないからセーフ」と言って食べてしまうルールのことです。
もう10数年前にも、大手洋菓子メーカーで「お菓子を落としても3秒以内に拾えば販売できる」というルールがあったという報道がなされたぐらい、日本人にとっては、メジャーな言い伝え、伝説です。もちろん、メーカー側は否定していますが。
そこで、実験のお話しです。
落とした食べ物の「3秒ルール」は、2007年以降、数回にわたって米英の大学により研究がなされてきました。今日は、その発表された論文の研究内容をご紹介します。
まずは、
「米国のラトガース大学の研究グループの実験」です。
細菌を含む2種類の緩衝液で表面をコーティングしたステンレス、タイル、木材、カーペットを準備し、この上にスイカ、スイカ、パン、バターを塗ったパン、グミを12.5㎝の高さから落とすという実験を行いました。 各食品は、1秒未満、5秒、30秒、300秒の時間で放置されました。それぞれの実験を20回ずつ行い、食品へ移行した細菌量を測定したいうものです。
すべての組み合わせを調査するために、なんと2,560回も実験を行ったということになります。
その結果、素材上に放置される時間が長いほどより多くの細菌が移行する傾向が認められました。この結果は、落とした食べ物を早く拾った方が汚染は少なくてすむということを示していて、「3秒ルール」を一部肯定しています。 一方で、食品の湿気や置かれる表面の性質の方が、放置される時間よりも重要であることが明らかとされました。 たとえば、水分の多いスイカには瞬時に多くの細菌が付着しますが、乾燥したグミには細菌はあまり付着しないことが判明したとうこともおまけでお知らせしておきます。
このように、素材によっては多くの細菌が瞬時に移行することもあることがわかったので、落とした食べ物の「3秒ルール」は科学的には否定されていると考えられています。 落とした食べ物の3秒ルールは生活の知恵 落とした食べ物の「3秒ルール」は科学的には否定されていますが、この「3秒ルール」は、世界各国に存在していることがわかっています。ただし、バリエーションがあって、英国や米国では「5秒ルール」が主で、米国の大学では「10秒ルール」が用いられているそうです。 なぜ、この「3秒ルール」は世界各国に存しょうか? 実は、汚れた食品を食べることを正当化するような慣用句も、以下のように世界中に存在していることがわかっています。
・胃をきれいにするホコリもある(スウェーデン)。
・人は死ぬまでに1ペック(約9リットル)のホコリを食べる(英国)。
・人は年間7ポンドのホコリを必要とする(デンマーク)。
・ホコリがベーコンを作る(ドイツ)。
人類は、太古の時代から食料の調達に大変な苦労を重ねてきました。苦労して手に入れた食べ物を床に落としたくらいで捨てるのはもったいないから、何とか食べることを正当化できないものかということで、世界各国でこのような慣用句が生まれたと考えられています。 しかし、瞬時に汚染されることもありますから、落とした食べ物の「3秒ルール」は、あくまで自己責任で行われるべきものであることに留意する必要があります。
⑤一夜漬け勉強は、あまり効果が無い
今までもお話ししてきたことですが、日常的の出来事や学習したことを記憶しているのは、いったん海馬に記憶されます。海馬は、大脳の側頭葉の深部に位置しています。海馬にいったん保存された情報は、このままでは短期間しか覚えておくことはできません。 そこで、海馬は、これらの情報を整理整頓し、重要だと考えられる情報のみを大脳皮質へ送り長期記憶として定着させています。また、海馬は、基本的には生命に関わることを重要だと判断する傾向があります。 このように、記憶は、大きく短期記憶と長期記憶に分けることができます。短期記憶は、いったん海馬にファイリングされるということです。メモ書き程度のすぐに忘れてもよい記憶のことです。一方、長期記憶とは、大脳皮質に定着されている、長期にわたって覚えている記憶のことです。
つまり、海馬は、記憶を必要なものと不必要なものに仕分ける司令塔なんですね。一時的に保存されますが基本的には数時間から数日しかもちません。一方、長期記憶は、海馬から大脳皮質へ送られて知識として定着するのです。
このように、脳の中では、新しい記憶は海馬に、古い記憶は大脳皮質に保存されています。よって、海馬が正しく働かなくなると、昔のことは覚えていても、新しいことはすぐに忘れてしまうのです。一夜漬け勉強は無駄になるというわけです。
よく一夜漬け勉強には学習効果はないといわれています。なぜかといえば、今説明してきた通り、 記憶の仕組みを考えればわかりますよね。翌日に試験を控えて一夜漬けで覚えた内容は、通常、海馬で短期記憶として記憶されます。そのため、試験当日は覚えていたとしても数日後にはすっかり忘れてしまうため、学習効果はあまり望めないのです。
それでは、一夜漬けで覚えた内容を忘れないようにするためには、どのようにしたらよいのでしょうか? 記憶を繰り返し思い出していると、脳はその記憶は重要だと判断するようになります。つまり、一夜漬け勉強による記憶でも、復習して思い出すことで長期記憶として保存されるのです。
つまり、長期記憶として記憶したいものは、何度も繰り返して思い出すというのが良いのです。
結果、一夜漬けは、目の前の試験対策には良いが、学習効果としては、効果は薄らいでいくということです。いることがわかっています。 睡眠中に、脳は記憶を整理し必要な記憶を強化して定着させており、睡眠が不十分だと学習効果が減弱することも明らかにされています。 したがって、成績を上げるにはしっかり勉強するのと同時に、十分な睡眠をとることも大切です。