謎の点(記憶)
確か10年くらい前。
初夏だったかな。
首都圏の山間にある実家の庭にて朝8時頃。近くの診療所へ祖母を連れて行く日で、支度ができるのを車の横で待っていた。雨の次の日のような清々しい青空を見渡していると妙な感覚がした。一部分モワッとした様なクリアではない様な部分があって、目を凝らして見るととても小さな白い点が複数、視界の左から右へ動いていた。その点たちは意識しないと目に止まらないけれど、一度ピントが合うと青空によく映えて見えた。数は7つ。個々の形は認識できない、陰影も分からない、見れば見るほど距離感も分からなくなるくらい小さな白い点たちが、鳥の群れのような三角形を形成して右へ動いていく。ジェット機の音も追い掛けてこない。なんだろう、あれは。祖母が出てきたので、見てあれ、なんだろうねと話しかけたが当時既に80歳を過ぎていたので、どこ?何?と少し空を見上げただけで車に乗り込んでしまった。祖母に急かされつつももう少し、と見続けた。スピードはゆっくりだが動いていることは確実にわかる。そのうちに規則的だった形が崩れ始め、進行方向に対し平行な一直線に編隊した。時間の感覚が曖昧だし最後まで見届けてはいないが、見ていた時間は恐らく5分以内だったのではないかと思う。見ることに必死で、当時スマホも手元にあったはずなのに何も記録しなかったことが本当に悔やまれる。誰に話しても信じてもらえない、検索しても似たようなものも出てこないしあれ以降見たこともないが、本当に見たのだ。