【日記】スケートリンクに投げ込まれてしまった。
温子(妻)
亜美(娘)
お父さん、スケートリンクに投げ込まれてしまった。
帰れそうにない。
亜美、自分が一人前になりたいと思うことをやりなさい。
そして、無理に変わろうとしないこと。
「人は変わらなければならない」と、どうしても思ってしまうものだよね。でも、変わってしまった後では元に戻ることができない、不可逆的な成長は山ほどあるんだってことを、忘れないでください。
無理に変わろうとしなくていい。
何だって、時の中で出来るようになるんだよ。
温子、すまない。
ふりかえってみれば、お前に出会えたことで俺は俺に出会えたんだと思いう。
本当はずっと同じ道を歩いていけたらよかったけれど、長いようで短かったこの坂道で詰んだ草花、見上げた花火、踏みしめた落ち葉、かわした言葉、そんなもう二度と戻れない日々が俺を支えてくれていたんだと思う。
以前勤めていた会社で、廊下に血がボトボトと垂れていて、そこそこ大きい騒ぎになったことがあっただろう。
あれ、俺の鼻血だったんだ。