2024.11.19
先週の土曜の午後、
「遅くなるけど泊まりにいこっかな」と彼氏からラインが来たので
やった~!と喜び、散らかりっぱなしだった部屋をキレイに掃除した。
そして、やっと朝ごはんに私の大好きなおいしいベーグルが食べられるや!と思い、一緒に食べるのにミネストローネを作った。ベーグルは冷凍保存期間の1ヶ月が差し迫っており、はやくこのおいしさを味わってほしいと思っていたのだ。
食べ物が飽和することを予想しながらも、おやつに食べるのにキャロットケーキを焼いた。早く食べないといけないクリームチーズがあったのでフロスティングに使うのにもってこいだったからだ。
こうして、キレイすぎる部屋と十分な食事を準備し、彼が来るのを楽しみに待っていた。事前に「22時位になると思うけど、また連絡するね」と言われていたのでゆっくりしていた。23時半すぎ、彼が酔っ払ってそこそこのベロベロ状態でうちへやってきた。私がお酒を全く飲まないから、酔っ払ってる姿を見るのは初めてだった。お風呂場へ急に走ったり、歯ブラシの歯ではなく首に歯磨き粉をつけたり、ウエットティッシュを持って「この水飲んでいい?」など言うのでおかしかった。
案の定、一緒に寝ようと言うので「私達は重大な問題を抱えているでしょ、〝夜眠れない問題〟だよ。考えたけど、私はヨガマットの上で寝るよ」と言うと嫌だ、なんの問題もないよ、大丈夫といって私をベッドで寝させようとする。
「だってこっちに寄ってくるでしょ?しかも上に乗っかってきたりして私は全然眠れないんだよ?!」と言っても「大丈夫、気をつけるから」と言う。「じゃあちゃんと壁側に寄ってくれる?もう、壁になりきった気分で!壁になって!」と言ったのに寝始めてわずか数分で、しかも背面から私の上にのしかかってきたので「もう!無理!」と叫んでヨガマットに避難した。猫も仕方なくヨガマットで寝るはめとなった。おかげさまで7時間、一度も目が覚めることなく安眠できた。早朝に起きれたので彼が寝ているベッドに行って2時間位は一緒に寝た。熟睡はもちろんできないからさっさと起きて身支度をした。
今日は、新しく開発したメイクをすると決めていた。いつものTHREEのアイシャドウのベージュだけを瞼に乗せ、上まつげは軽いマスカラ、下まつ毛は濃いマスカラを塗る。チークは、妹が要らないからとくれたMACのオレンジベージュで、白味があってつやっとぽわっとして可愛い。リップは BOBBI BROWNのピンクベージュで、海外の人みたいなぷっくりした唇になって可愛い。
おニューのメイク方法を施し、さあ朝食を準備しようかなとルンルン気分だ。昨日遅くまで飲んだ彼はきっとまだおなかが減ってないだろうと見当をつけながら「おなかへってる?」と一応聞くとやはり「へってない」と言う。じゃあもうちょっとゆっくりしてから食べたらいっか~ミネストローネを温めながら、ウインナーと目玉焼きを焼いて、ベーグルを温め直して、久しぶりにちゃんと焼きめをつけようなどと考えながら、猫も交えた3人で遊んでいると彼が
「今日、ちょっと会社行かないといけないんだよな。」
「へぇー何時頃?」
「10時」
「10時?!今、9時半じゃん!!!」
叫んだ私の眼球はすでに涙でうるうるになっていて、しかも既に彼と目が合ったあとだった。こんなことで泣くなんて子どもじゃんかと恥ずかしくなり、ぐっと堪えた。耐えるには顔のあらゆる部分に力をこめないといけなくて、それはきっと変な顔だろうから見られたくなくて俯いた。
もう泣き出しそうになっていることはバレてるから彼が私の目尻を触って涙が流れていないか確認したり、頬や頭を触ったりしてくる。バレるかバレないか、泣くか我慢しきれるか、無音の攻防戦が続いた。
一緒にいれる時間を楽しみにしてたのにそれがなくなったのが悲しくて、
ていうか、なんでもっと早く教えてくれないのか腹が立ち、身体の中が感情でぐるぐるになった。
「10時に会社行くなら今家でないと無理だよ」
それならばさっさと帰ってくれと思う。
「ちょっとくらい大丈夫だよ、10時すぎにここを出るくらいでいいよ。」
気を遣わせてしまった。しばらく無言が続く。喋りたいことが浮かばない。
夜遅くにうちへ来て、こっちはヨガマットで寝て、何もせずに帰るなんて何しに来たんだよと思う。エッチもしてくれなければご飯も一緒に食べられない、会話すらほとんどできてない。話したいこともミネストローネもキャロットケーキも準備してたのに意味なかった。せめて、準備していたことだけはアピールしたくて、「せっかくおいしいベーグルをやっと一緒に食べれると思ってたのに!」と言い放った。「食べてから行くよ。」「だっておなかへってないんでしょ?」「なんかへってきた」「…言わせた感あるな。」
私は冷蔵庫からミネストローネの鍋を出した。
電子レンジを駆使して、スープとベーグルを温めて器によそった。
テーブルに運んだら「うわぁ~」とリアクションをしてくれた。ミネストローネをひとくち食べて「おいしい!」と言われた。いつもは特に言わないくせに。そういうのが欲しいんじゃないんだよなと思ったりする。空元気な様子に罪悪感を感じる。
空腹ではない、いわば食事に乗り気でない人にこんなおいしいものを食べさせてもったいないことしたかな、準備したことだけ匂わせて食べさせないほうが効き目あったかな、どうするのが一番ダメージ与えられただろうか、などと真っ黒な考えが渦巻いていた。それで頭がいっぱいで、普段みたいにお喋りできなかったからBGM要員としてテレビをつける。シューイチが朝のお茶の間を賑やかにしてくれる。
テレビの映像をネタに何か話しかけてくるけど、いつもの3分の1の声量しかでてなくて聞き取れずに「…え?」と聞き直す。それが何度もあった。
絶対に知ってるような事柄をわざわざ言ってきたりして、返事のしようがないからスルーもしたりした。
「今日は前の職場の友達と飲みに行く予定があるんだ」「ふ~ん」
聞いてもないのに急になんなの、私だって夜は予定あるし、と思いながら彼が「4時から飲もうなんて変な奴なんだよそいつは」「変だねそれは」「なんか今日の夜に新幹線で東京に戻らないといけないらしい」「それなら仕方ないじゃん(変じゃないじゃん)」
別れ際も何度も私の頬や頭を触ったりして、ごめんねのつもりなんだろうが「もういいからさっさと行けよ!」という気持ちしかなくてイライラしてしまった。
振り返ってみたら随分とひどいことしてしまった、かわいそうに…
なんて思うのも束の間、事前に予定を伝えるなんて簡単なことなんだからできるでしょ、と思ってしまった。
つぎに何が起きるか予測して、相手の立場になって想像することは、「思いやり」なんて言葉を当てるには大げさなくらいシンプルなことだと思う。
例え誰であったとしても、泊まりに来るとなったら同時に翌朝の朝食について考えるのは当然なんではないか。だから私がしたことはやり過ぎではないと結論に至らせ、自分を落ち着かせたけど、いかんせん、感情が大きく動いてしまった。
彼の立場になってみたら、少ししか時間ないけど会いに来てくれたんだなってわかった。