1話 変えてあげようか

ゼミの教室は一階。
ゼミ生は4人。

「はずれのゼミだった。まさかオタク2人と根暗とか」
と、西野ハルがいう。
西野ハルは、高校時代は一軍だったとかを自慢してプリクラを見せてもらったことがある。
真っ黒でボサボサの黒髪にでかいメガネ。真っ白の肌。まあまあなぽっちゃり体型。
隣に映ってる子は確かに派手な子ではあったが、見た目は一軍とはほど遠かった。
「根暗はまだ綺麗だからいいけどさぁ」

根暗、と言われたのが私だ。槙原淳 (マキハラジュン)男みたいな名前だが、見た目は普通に女性。親が男の子が欲しくて付けようとしていた名前らしい。しっかり女として育ち、日々、綺麗になることだけを考えている。
ただ、実際友達はあんまりいない。根暗と呼ばれるのはそのせいだ。
私の興味は自分自身や美容で、中・高と美意識の低い人に対してムカついてしまい、関わらないようにした。しかも他人に興味ありありの人間の噂話もとても健康に悪い。

オタク2人とは前に座っている男と女だろう。
田辺 浩と渡辺 幸
2人とも西野サンの声を聞こえてないフリをする。散々ディスられ、ゼミの先生の話を一通りして解散することになった。

次会うのは、一週間後だ。

私は西野サンが大学を辞めることを願いつつ、帰ろうとした。

「酷くないですか?あの女」
田辺がいう。四角い形のメガネは目のサイズにあっていなくて、髪の毛はテンパのままきて、髭は最低限剃っている。いらいらが募る。

「酷くない。実際2人とも、見た目に頓着なさすぎる」
渡辺サンもなかなか酷い。おそらく見る人がみたら中学生と見間違えるだろう。お風呂に入っていないとかではない。ただ褪せた服を着ている。

「見た目??はぁ?」
「綺麗にしてる方じゃないですか?お風呂も入ってるし、そんなゴリゴリの陽キャファッションじゃないですが、、」

「き、きれいにしてるほう!?はぁ?」
私は声を荒げてしまった。
流石に田辺はびびって仰け反ってる。

「落ち着いて、、、」
自分に言い聞かせる。私は確かに友達はいないが、単純にイライラするから話しかけられても最低限の話しかしないだけで、テレビにはバンバン話しかけるタイプだ。

「僕、、はまだしも、渡辺さんは綺麗にしてるでしょ」
「清潔感は女性なら基準値は高いと思う」
おちついて、私

「え、待って2人とも、本気でいってる??
おしゃれにする気がないと思ってたけど」

「おしゃれじゃないですか?この服、+++ってブランドで1万円で買った、、、」
「ブランドだからいいってわけじゃない」

大体どこよ、そのブランド

「まぁ、元がいい人にはわからないと思うんですが、てかそれ整形もしてるんじゃ??」
「整形したからって髪の毛ツヤツヤ目がぱっちりにすぐすぐなるわけじゃないし、学生の分際でお金貯めれねーよ学費私が払ってんだわ」

「大体、元も別にそんなよくないわ中学から美容になんとなくハマっただけだわ」

「槙原さん、それなら、私にお化粧を教えてくれませんか??」
渡辺さんは謙虚にいう。
「わかった、、けど化粧だけで人は変わらんからな??」
私は言った。

「田辺、おめぇもな」
と私は田辺を指差す。ぴっと背筋が伸びた。

「授業終わったらバイトがあるから詳しくは話せないけど、まず田辺、お前毎日風呂入ってる?」
「えっと、、」「入ってから清潔感について語れ。あと服も毎回洗濯しろ」

「それで渡辺さんと田辺。お風呂の後はなにしてる?」
「髪拭いて、水飲んでます」「舐めてんの」

「一応、化粧水つけて、髪乾かしてます」
「わかった。まずは化粧水はオッケー。その後乳液とかで保湿をして。そのあとにボディクリームをつけよう」
「女性は大変ですな」
「ちなみに田辺もだからな。お前は顔が油っぽいからさっぱり目の化粧水で」
「え」
「髪洗う前に髪を解くと、汚れが浮きやすくなってるからそれくらいはできそう?ボディクリームも高いやつだと最初はキツイかもだから、安いのだと500円くらいであるよ。乳液とか化粧水はいいやつがいいけど、最悪化粧水は安いのをバシャバシャ使う説とかもあるから自分の肌質にあったものにして」

「は、はい」
「でも肌ってすぐ変わらなくないですか?1週間で変わりたいんですが」
田辺はうざい

「それは少しでも美容をやってるやつが言うんだよ」
「わかりました。コンタクトにしましょう」
「いや、田辺お前はメガネ顔だ。急にコンタクトにしても似合わないかもしれないし目が小さくなるだけだ。だから一旦そのダサい黒縁四角メガネを銀縁の大きめのメガネに変えないか?」
「えぇ、、」

「まず服とメガネでだいぶ変わるけど、それだけでも肌が汚くて化粧もしてない、毛周りが整ってなかったら垢抜けない。時間もないから服とメガネは一旦無しで初日は髪の毛と肌質だけでも改善に向けてほしい。後眉毛なんだけど、正直このふさふさ加減をいきなり1人で治すのは、事故のもとだから一旦美容院で整えてもらってくれないか?話はそこからだ」

そういうと渡辺さんはにこやかに頷いて、田辺は不服そうに頷いた。連絡先を交換してゼミのグループを作った。

西野ハルは入っていない。

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