Perfect Thunder Storm(ヴァドロック変容ストーム)調整録
まえがき
今回、MTGアリーナのBO1スタンダードにおいて自身の作成したデッキでミシック瞬間2位を達成した。本稿はその調整過程の記録である。
4/3 追記 瞬間1位達成しました
今回調整したPerfect Thunder Storm(ヴァドロック変容ストーム)はループコンボデッキである。
ループコンボデッキなのだからまずそのループを解説すべきなのだが、文章で説明するのが難しい。
このデッキのループは成立するカードの組み合わせが何通りもあり、またマナ生成とドローの連鎖からループに到達するルートは引いたカードによって左右されるためだ。
古いリストではあるが要点をまとめたテキストと、現在のリストで何回か実戦でループを決めている動画で説明と代えることとする。
倍速推奨
1. チェーンからループへ
ヴァドロック変容ストーム 説明書を書いた時点でのリストでは、ドローカードとして《真実の視認》を4枚採用していた。
これをヴァドロックや《スカルドの決戦》で手札以外から唱えて大量ドローし、追加の変容カードを引き込むことで連鎖するいわゆるチェーンコンボだった。
デッキ調整中、別のヴァドロック変容デッキ(《強欲な血喰い》でドレインする型だった)でバウンス呪文である《乱動への突入》の採用を見かけた。
本デッキでも試してみると、デッキの動きとの相性が凄まじく良いことに気づく。
たまに《一瞬》って言っちゃう
「クリーチャー1体に複数枚変容→そのクリーチャーをバウンス」を繰り返す過程で、
・《黄金架のドラゴン》を変容または呪文の対象にとって宝物を出す
・《戦利品奪取》《領界路の開放》をヴァドロックの能力で唱える
これらによって発生するマナが消費するマナを上回るなら、無限にマナが増えるループが成立するのだ。
あとは余ったマナでドローを進め、任意の呪文を繰り返し使えば如何様にでも勝利できる。
見切り発車して致死打点まで完走するしかなかったコンボに明確なゴールができたことで、見違えるように安定するようになった。
また《海駆けダコ》を瞬速でヴァドロックやドラッキスに変容し墓地のバウンスを再利用するトリッキーな動きが加わり、対戦相手への干渉手段も増えたため様々なゲームプランを取れるようになったのである。
イコリアの《瞬唱の魔道士》
このバウンス呪文は初め《乱動への突入》2枚からの採用だったが追加で《非実体化》も2枚採用することに決め、最終的には《真実の視認》が全て抜けることとなる。
2. Search for Glory
このデッキは、《雷の頂点、ヴァドロック》に大きく依存したコンボデッキである(一応ヴァドロックなしでもループは可能だが、条件が厳しい)。
できれば複数枚のヴァドロックが安定した連鎖のために欲しい。
であれば4枚採用するだけでは足りず、ヴァドロックをサーチできるカードを入れたくなってくる。
だがそんな都合の良いサーチカードがあるだろうか?
……あった。
《ゲートウォッチ招致》は泣いていい
《栄光の探索》ならば、要である伝説のクリーチャー《雷の頂点、ヴァドロック》、強力なアドバンテージ源である英雄譚《スカルドの決戦》、ついでに氷雪土地までサーチできる。
さらになんとこのカードは持ってきた《雷の頂点、ヴァドロック》自身の能力で墓地から唱えることができる。
つまり1枚使えばその後ライブラリの《雷の頂点、ヴァドロック》を全て手札に加えることに繋がり、《領界路の開放》もあればそのまま墓地の呪文が唱え放題となって勝利できるのだ。
単なるサーチカードにとどまらず、《領界路の開放》と《栄光の探索》の2枚だけで(ほぼ)ループが揃う強力なコンボパーツとして採用が決定した。
3. 正体不明の追加戦士
本来、ループが成立しているのであれば途中で《棘平原の危険》か《領界路の開放》の+1/+0修正のモードを使い続けることでそのまま勝利できる。
だがそこには1つの問題があった。
MTGアリーナにはターン内の時間制限が存在するのだ。
勝つまでに必要な手順が長すぎ、時間内に勝ち切ることが困難なのである。
一応、対戦相手の土地でないパーマネントを全て手札に戻した後、《非実体化》などの妨害を《雷の頂点、ヴァドロック》+《海駆けダコ》での再利用も合わせて大量に構えてターンを返し、次のターン中に《スカルドの決戦》のクリーチャー強化能力で決める……
そのような勝ち方も可能ではあるがあまりスマートではない。
せっかくサーチである《栄光の探索》を採用したのだから、サーチ可能かつ1枚で簡単にフィニッシュできるカードはないだろうか?
するとカードリストから1枚のカードが目についた。
オルヴァールに変容……人間だこいつ(1敗)
《万物の姿、オルヴァール》だ。
「自分のパーマネントを呪文の対象にとった時、そのパーマネントのコピートークンを出す」、つまり自分の《黄金架のドラゴン》に《棘平原の危険》を撃ち込むというこのデッキにおいてはごく自然なムーブがそのまま4/4飛行速攻を大量に並べるフィニッシュにつながるのである。
ドラゴン(2)のコピー_最新版_修正反映_再提出
それだけではない。オルヴァールが戦場にいる状態において、
クリーチャーを変容する
→そのクリーチャーをバウンス呪文で対象に取る
→そのコピートークンが出る
→そのコピートークンに手札に戻ったカードを変容する
以上の手順を繰り返すことで、1枚の変容カードでその能力を複数持ったクリーチャーを生み出せるのだ。
これによりヴァドロックが1枚しかない時などでもループに入れるルートが増え、コンボそのものの成功率も向上したのである。
右クリックで何が重なってるか見れるのこの前知った
4. 完全なる進化
最後の進化の始まりは、環境で採用率の高い除去《霜噛み》対策の検討中であった。
噛まれて進化するの、スパイダーマンか?
このデッキのクリーチャーのタフネスは3以下がほとんどで、変容キャスト時に1マナで除去されてはコンボ始動が難しい。
《黄金架のドラゴン》を変容元にできれば良いのだが、《霜噛み》を採用しているのはキルターンの早い赤単やカウンターを採用しているイゼットテンポ。
つまり5マナで《黄金架のドラゴン》を出して変容する動きは許されない事が多く、またそもそも毎ゲーム《黄金架のドラゴン》を引けるとも限らない。
3種類イラストあるけど全部好き
そこで試みたのが《永遠羽のフェニックス》の採用である。
変容持ちかつ4マナ、つまり《両生共生体》のコスト軽減や《領界路の開放》から最速3ターン目に着地でき、コンボ成立までの盤面を支えられる。
また1度でも変容に成功すれば除去されても1マナで復活しコンボ始動の種となることもできるのではないか、との目論見であった。
採用後、何度か対戦しているうちあることに気づく。
《永遠羽のフェニックス》が生成する羽トークンのテキストをよく見ると、「フェニックス・カード1枚」と書いてある。
つまり自身だけでなく、全てのクリーチャー・タイプを持ち、もちろんフェニックスでもある《万物の姿、オルヴァール》を蘇生することができるのだ。
オルヴァールはフィニッシュ力こそ高いものの、序盤に手札に来ると役割が少ない。
しかし1枚しか採用していないため手札入れ替えで捨てづらい問題があった。
それが逆に序盤に捨てることで必要なときに1マナで蘇生できるようになったのである。
万物の姿、オルヴァールを墓地から守備表示で特殊召喚!
このデッキにおいては(人間でもであるため)変容できないデメリットであった「多相」が、メリットに反転した瞬間であった。
この時点でデッキ名を《雷の頂点、ヴァドロック/Vadrok, Apex of Thunder》と《永遠羽のフェニックス》の別イラストカード《完全生命体、デストロイア/Destoroyah, Perfect Lifeform》から一語ずつ取り、最高峰のコンボデッキ「The Perfect Storm」にあやかって「Perfect Thunder Storm」と名付けた。
そして以下がその後ミシック瞬間2位を達成することとなった現在のリストである。
抜くカードがわからず61枚。ここから何を抜くかは読者への宿題とする
Deck
4 Pollywog Symbiote (IKO) 63
4 Sea-Dasher Octopus (IKO) 66
3 Goldspan Dragon (KHM) 139
4 Open the Omenpaths (KHM) 143
3 Showdown of the Skalds (KHM) 229
2 Lore Drakkis (IKO) 194
4 Temple of Epiphany (M20) 253
4 Vadrok, Apex of Thunder (IKO) 214
4 Needleverge Pathway (ZNR) 263
4 Riverglide Pathway (ZNR) 264
4 Hengegate Pathway (KHM) 260
4 Spikefield Hazard (ZNR) 166
4 Seize the Spoils (KHM) 149
2 Into the Roil (ZNR) 62
1 Snow-Covered Mountain (KHM) 283
1 Search for Glory (KHM) 27
1 Snow-Covered Island (KHM) 279
2 Unsubstantiate (M21) 82
2 Raugrin Triome (IKO) 251
1 Orvar, the All-Form (KHM) 70
1 Valakut Awakening (ZNR) 174
2 Everquill Phoenix (IKO) 114
あとがき
このデッキやプレイングに意見とアイデアをくれた友人たちに感謝をしたい。
また、プロではない私が1から組み上げたデッキが勝てたという事実が、世のデッキビルダーたちの希望になれば幸いである。