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『3年目のデビュー』はただのアイドルドキュメンタリーじゃないって話

 アイドルには夢があります。
 「いつかあの場所でコンサートをしたい」が一般的な夢だと思います。
 その夢を叶えるためには成功をしなければいけません。
 ファンの数だったりメディアの露出数だったり、CDの売上枚数だったり。
 じゃあその成功をすれば夢も達成できるのかといえば、違います。
 その成功と夢の間を階段を登るには“確かな成長“がなければいけません。今まで通りを押し通して自分の信じたことだけでやり続けて成功し、夢を叶えるアイドルもいますが、アイドルを応援する醍醐味は“成長する過程を見届けること“だと思うのです。
 
 けれど一般的なアイドルのドキュメンタリー映画の場合、“夢を叶えた瞬間“をフューチャーします。 
 「これだけ頑張ってきました」→「頑張ってが成功しました」→「夢を叶えました」という構成が多いと思います。
 成功と夢だけをピックアップして、その間にある成長は、なんとなくメディアにも出ました、忙しくなりました、くらいで描かれることがほとんどです。
 
 ですが、日向坂46のドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』は、違います。
 この映画は「夢を叶えた瞬間」ではなく「成功と夢の間にある成長の階段を登った姿が見れる」ことにスポットを当てた作品です。
 これすごいのは、日向坂が特別好きじゃない人が見ても、「あ、今この子たちは成長した」と階段の登る姿がわかることです。決定的な一歩を見ることができる。
 しかもそれが紅白などのメジャーな歌番組だったり、大きなコンサートではないのです。
 最後のある場面なんですが、この映画ってその場面の3分、いや6秒を見せるために構成されているのです。
 
 この映画、日向坂46の初のドキュメンタリーなのに、変な演出をしています。
 「あれ? なんてこんな方法使うんだろ、普通もっとオシャレにするのに」
 「なんでこんなシーンあるんだろ、別にあったらあったでいいけど、なくてもいいかな」
 というような、オシャレさよりわかりやすさを優先したような演出に疑問を持っていました。
 これ、全部その6秒を際立たせるための演出で、何気ないメンバーのインタビューもそのシーンにつながっているのです(2回見てわかりました)。
 全て6秒を際立たせるためにオシャレさとか無しにして、そのシーンに全振りしてる。
 
 普通の女の子がアイドルになって大きな翼を得て羽ばたく姿じゃないかもしれない。でも、普通の女の子たちがどうやった大きな翼を得ることができるか悩んで、どういう飛び方をすれば天高くまで行けるか、どうやって全員で飛び続けるか考えて、やっと翼が広がった。その翼が広がった瞬間を見せてくれる。なんでその翼を得たのか、見た誰もが知ってる。突然変異ではなく、当然の進化、その瞬間が見られるって凄すぎる。

 自分のステップアップの手段がアイドルになることで、その先の目標を持っているアイドルも確かに魅力的かもしれない。
 けれど、アイドルになった上で、全員で上に上がり続けることが目標の彼女たちを、私はめちゃくちゃ美しいと思います。

 それではまた、約束の卵でお会いしましょう。アディオス。

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