見出し画像

ホテルに誘う男

彼とはマッチングアプリで知り合った。

写真を見る限り、目が大きくて整った顔立ちだ。
27歳。
身長は172cm。
職業はメーカ勤務のシステムエンジニア。
趣味はフットサル、ギター、料理。
年収700万円。
一人暮らし。

マッチングが成立してから2週間ほど毎日連絡を取り合った。
彼の生活リズムもなんとなく分かった。
文面のみだけど、親しみやすくて印象がよかった。
週末に連絡が減ったのはアクティブに活動していたかららしい。



初めての顔合わせ。お互いの中間地点の渋谷で会うことにした。
お互いお酒を飲むのが好きだから、軽く飲みたいねっとお店は彼が決めてくれた。

19時に直接お店に行った。雰囲気がいい和食居酒屋さん。

彼の名字を店員さんに告げて、席に案内されると、先に彼が着いていた。
写真よりも格好よかった。爽やかな青年だった。

「おぉ~。すぐ場所分かった?
今日はわざわざありがとね。何飲む?ビール?」

「前に魚が好きって言ってたよね?おすすめに金目鯛あるよ?」

「写真で見るより可愛いね、なんか緊張しちゃう。」

初めて会うのに不思議なくらい自然に会話が始まった。
彼はメッセージをしていても丁寧だし、お店選びのセンスもいい。
モテそうな人だ。どうして彼女がいないんだろう?


彼とは話が盛り上がった。
海外旅行が好きで、ロックが好きで、お互い地方から東京に来ていて…
とにかく共通点が多かったこともあって、今度一緒にライブに行こうだとかこれからも飲みに行きたいねだとか。


「ちょっとお手洗い行ってくるね」
私は席を立った。

酔いも回ってきたところでスマホを見ると22:00過ぎていた。
楽しい時間はあっという間。

戻ると彼はお会計を終えていた。
奢ってもらうつもりはなかったけれど、嬉しかった。

「このお店に来る途中で良さそうなBARを見つけたんだ。よかったら、付き合ってくれない?」

ご馳走にもなって断る理由もなかった。
むしろ、もう少し話したい気持ちになっていた。


お酒のボトルが壁一面に置いてある、薄暗くてこじゃれたBARに入った。
私たちは並んでお酒を飲む。
お酒が強いわけではない私は少しふわふわしていい気持ちだった。

1杯飲み終えたそうだった。
時間的にもう1杯いけるかな?と思ったところで彼が言う。

「今日はありがとう。すっごく楽しかったよ。」

締めの言葉―—―
お互い1杯目を飲み終えたところで彼がお会計の合図をした。
財布を出す私を制して彼がまた支払いをしてくれた。

スマートな彼にキュンとした。
また会いたい。
今日はいい日だった。



店を出て駅に向かおうとすると彼が手を繋いできた。
え?今日出会ったばっかりなのに?
戸惑いながらも嫌な気はしなかった。


彼と話しながら着いた場所はラブホテルの前


「まだ一緒にいたいな、行こうか」
彼が言った。


「??????」

そういうことだったのかーい!
体目的かーい!


一気に酔いが醒めて冷静になった。

「ごめんなさい。そういう気はないので。」
私は断った。

「そうか、勘違いしてごめんね。駅まで送るよ」
彼は言った。

「大丈夫です。」

私はスタスタとひとりで駅に向かった。


彼はきっと悪い人ではない気がする。
だけど、短絡的でしょうもない男に見えた。




いいなと思ったら応援しよう!