心も財布もスッカスッカ男
インフルエンサーという謎の仕事をしている綺麗なお姉さんと仲良くしていたことがある。
彼女に誘われて5対5の合コンに参加した。
私は秘かにいい男がいないかと期待していた。
結果的にいえば当たりの合コンだった。
全員イケメンだったし、会は盛り上がった。しいていえば盛り上がったけれど、個人的な話をすることはなく、男性陣のことをよく知らずに終わった。
「よかったらご飯に行きませんか?」
たいしたラリーもしないうちに、同い年だった製薬会社勤務の元サッカー少年からお誘いがきた。
特にタイプではなかった。楽しい合コンだったけれど、話の内容は全く覚えていなかった。行っても行かなくてもどちらでもよかった。
暇だし行ってみようかな…。
気が進まないけれど、行ってみたら楽しいなんてことはいくらでもある。
私の場合は大抵のことが当てはまった。
よくしゃべる人だった。
話にオチはないけれど、退屈しない程度に話題は尽きなかった。
お酒を飲んで、少し酔ったところで彼は追加オーダーをした。
メニューのことを聞きながら、店員さんにダル絡みしだした。
「だめだよ~! バイトなんだから」
めんどくさい通り過ぎて痛い客。店員さんも苦笑いだ。
「いいじゃないですか、何頼もうとしてるんですか?」
変な空気を打破しようと、私が間に入った。
お酒が運ばれてきた。彼は少しどころか結構酔っているようにも見えた。
時間はPM9:30
大人の男女がサヨナラするには全然早すぎる。
彼のことはたいして知ることが出来なかった。
けれど、たいした男ではないとは思っていた。
「ごちそうさまでした! また飲み行きましょう!」
軽い社交辞令を言って手を振ろうとした。
彼はまだ飲み足りないらしく、奢るからもう1杯だけ付き合ってほしいと言ってきた。
次奢らなくてもいいから、この店奢ってほしかったわ。
一瞬にして気が利かない男だと認定された。
一軒目のお会計は2人で約¥11,000だった。
なにも言われなかったから¥5,000出した。
彼が少し多く払ったとしても許容範囲内の対応だったと自負している。
仕方なく、1杯だけ行くことにした。
繁華街にいたので店には困らない。
こじゃれたBARに入った。
当たり障りない会話をしながら、ナッツをつまみならお酒を飲んだ。
ダーツがあったので1戦だけした。
お酒の力もあって意外と楽しかった。
PM11:00
そろそろ帰るねといい、お会計をお願いした。
2人で¥4,000だった。
私は財布すら出す気がない。
「¥2,000しか持ってない」
信じられないことを言い始めた。無銭飲食する気なのか?
「カードで払えば?」と私は言った。
私たちは今日1日でため口で話す仲になっていた。
「たまには、自分で払いなよ」
私は絶句した。
冗談なのか?正気なのか?どちらにしても腹が立つ。
「奢るって言うから付き合ったのに」
この一言は言ってはいけない言葉なのか?
彼は一軒目で¥1,000多く払ったと主張してきた。
「厳密にいうと¥500な!」と思った。
私より¥1,000多くは払ったが、彼と私で割り勘だとすると¥500。
もうええ。¥2,000出せばいいんだろ?
解放してくれるんだろう?
彼のダサさに負けてお金を払うことにした。関西弁でいうとキショい。
お金を出してから私は言葉を発しなかった。
電源が切れたロボットのように無になった。
お店の人に「御馳走様」と告げて、彼を見ずにその場から去った。
私の対応は大人気ないものになったことは自覚している。
時間とお金を無駄にしてしまった。
寄付したと思って諦めるしかない。