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セックスがしたいわけじゃなかった
ある日出会ってしまった。
理想の人に。
彼は地元のサッカーチームのマネージメントをする仕事をしていた。
元々は選手として活躍していたが、引退後に今のポジションに就いて毎日忙しい日々を過ごしている。
私は学生時代からサッカーを観るのが好きで、よくスタジアムにも行っていた。
彼は学生時代に日本代表に選ばれたことがあるらしい。
ミーハーな私はその経歴を聞いただけでもテンションが上がった。
そもそも、この飲み会をお願いしたのは私だった。
よく行くBARの常連さんの繋がりで、元サッカー選手と知り合った。
その人はタイプではなかったけれど話が面白くて面倒見のいい人だった。
「彼氏が欲しいから誰か紹介してほしい。出来れば顔を合わせてから連絡を取り合いたいから飲み会をしたい」
という流れで幹事を頼んで出会いの場を設けてもらった。
私も幹事という立場だったけど、アシストに徹する気はなかった。
いい人がいれば積極的にいきたい気持ち。
4対4の飲み会で全員が元サッカー選手、
年齢は24歳~32歳。幹事以外はイケメンだった。
私は一目惚れした。
笑顔が可愛くて、少し甘えたような喋り方の彼に。
一目惚れなんて中学生以来でなんだか変な気持ちだった。
肩書補正も入っていると思うけれども、彼をずっと見つめていたかった。
とはいっても、飲み会が盛り上げるようにみんなでワイワイしたり、席替えして彼と離れた席になっても普通に楽しんでいた。
絶対、また会うんだ。次に繋げるんだ。
飲み会が終わる時間に向けて、どうやって連絡先を聞こうかと考えていた。
その時点で、彼は私の目の前に座っていた。
「連絡先知りたいな」
彼に向けて私が言った側から幹事が入ってきて、
「じゃあ、グループ作ろうよ~」
ライトな雰囲気で全員と連絡先を交換した。
二次会に行く流れにもなったが、私は次の日が仕事だからと断った。
別に二次会にいけない時間でもなかったが、わざと断った。
飲み会で話が弾んだからこそ、断った。
寝る前にグループ内でお礼のメッセージを送った。
翌日になると「ありがとうございました。楽しかったです。」とグループ内に社交辞令が1ラリー交わされる。
これにて合コン終了!
気になる彼には彼女がいるだろうか…
女性から積極的にいっても引かれないだろうか…
恋する乙女のように勝手に不安と期待を募ってしまった私は幹事の男性に彼のことを相談していた。
「彼女はいないよ、というか女性の話はあまり聞いたことがないよ。
きっと食事くらいなら行ってくれると思うよ。」
この回答はかなり好印象だった。
男らしくて色気のある見た目なのに、女性には控えめなのかとも思った。
週明けに彼に個人的にメッセージを送る。
「こないだはありがとうございました。
もう少し話したいと思ったので、ご都合のいい日にご飯でも行きませんか?」
決してモテるメッセージではないが、女からご飯に誘って嫌がる男はいないだろうと勘違いして生きてきた私は、モテるテクニックなど持ち合わせていない。
「こちらこそありがとうございました。
お誘いいただけて嬉しいです。
来週の金曜日はどうですか?
その日以外だと結構先になってしまいそうです。」
驚くほど速いラリーで予定が決まった。
順調すぎて怖い。
その時の私はまだ楽しかった。
まるで自分に恋の主導権があるようにさえ思ってた。
だけど、現実は甘くないし、私にはその価値もなかった。
タイミングも上手く掴めなかった。