1秒でも早く楽になりたい
「時間が解決してくれる」
そんなの待ってられない。
辛い気持ちさっさと忘れてしまいたい。
早くここから抜け出したい。
1秒でも、しんどい時間を減らしたい。
どうしてこんなにも苦しくて、どうしようもなくて、涙が出るんだろう。
スマホの画面をぼーっと見つめることしか出来なかった。
ベッドに横になって目を閉じても自分がどこにいるか分からなくなった。
本気で好きになった人だった。
彼がいる人生は色鮮やかで柔らかい光に包まれていた。
前世で血のつながりがあったんじゃないかというくらいに、出会ったときから居心地が良かった。
飽きずにトランプをして遊んだし、真剣な話をして抱きしめてもらうこともあった。
お互いラーメンが好きでよく遠出して食べにいった。嫌いなものも一緒だった。「なにが食べたい?」って言うと私が食べたいものを言ってくれる。
彼は私の頭の中が見えるのではないかと疑ったこともある。
やっと見つけた運命の人。
こんな人はもう二度と現れない。
しかし、そんな日々に終わりがやってきた。
彼は私に順位をつけた。
二股していることが発覚した。
友だちが彼が女といるのを見たらしい。
何かの間違いだと思った。
というか、何かの間違いでなければならない。
彼に確かめるために話をした。
私の部屋に来た彼は浮気を認めた。
ただの火遊びではなく、付き合いがあるとはっきり言った。
浮気は許せなかった。
黒だったら別れると決めたのに、別れることが出来なかった。
彼が私を選ぶと言ったことに安心してこの場を収めることにした。
結局彼はその女と別れられなかった。
悲しかった。自分がピエロみたいで可哀そうだった。
楽しかった思い出すべてが酷く思えた。
どうして私にこんな不幸が訪れるのだろうか。
しばらく状況が理解出来なかった。
食事が喉を通らなくなった。
なにもしたくない、なにも考えたくない。
誰にも会いたくない。
しばらくして彼から連絡がきた。
メッセージを開くか迷ったが、気になってるうちに画面を長押しタップしていた。既読にしないでメッセージが見れる。
「俺はあのとき気持ちが落ち込んでいた」
「悪気はないから分かってほしい」
つらつらと長文で言い訳が送られてきた。
自分が楽になりたいだけの内容にうんざりした。
すべてに失望した。彼にも彼を選んだ自分にも。
お前のこと誰が好きなん?
時間が経つにつれて腹が立ってきた。ほとぼりが冷めたと思って連絡してくる辺りもクズだと思った。
言い返してやろうか、無視するべき?
未読スルーすることにした。
アカウントごと非表示消去にした。
見たのか見てないのかさえもわからない透明な人。
私の中で彼は死んだ。劣悪な環境のお墓に投げ捨てた。
あなたのメッセージは私にとってはレストランとかのメルマガと同じBOXに入れておきました。二度と読み返すことはないでしょう。
言いたいことはあったけれど、返信をして返事を気にするなんてまっぴらごめんだ。私を裏切った人と関わる時間が無駄だ。
意志を持って無視することにした。
無視してるだけなのに心が軽くなった。
相手に何かを期待しなくてよくなった。
別れたことが正解だったと実感できた。
それからは1ヵ月に1回程度連絡がくる。
あなたは本当にメルマガになってしまったのね。