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【ライブ感想文】「春、の歌を頼りに」折坂悠太ツアー2024あいず《4/17福岡DRUM LOGOS公演》

*おことわり
当日の記憶だけを元に書いています。曲目・曲順はその通りでなく、ライブレポ風ではありますが、あくまで個人の感想です。どうぞおおらかに見守っていただけますように。


開場、中へ入る。
フロアに流れるのは、ソウルやジャズが中心のジャンルレスな音楽。開演 30分前で、すでに結構埋まっている。まだ少し見える床の、白と黒の格子模様。白の部分が夕陽色に染まる。

ほの暗いステージの上には、サーキュレーター?それとも飛行機のエンジン?うっすらと“何か”が見える。

客層の男女比はだいたい半々、少しだけ女性が多いよう。みんなとてもおしゃれ。トレンドでなく個性的な、信念を持ったファッションという感じ。年齢は 30〜40代が中心だろうか。20代以下と思われる若者も、大人世代も。全体としては幅が広い。

待っている間のBGMが心地よい。あ、これ知ってる。レゲエの、誰だっけ。

隣にいるカップルの女の子が、さっきからずーっと喋っている。応える男の子の、穏やかで優しい声。聞こえてくる会話だけで、お似合いのふたりだと分かる。

そうこうするうち、いよいよ開演。

ステージ後方のスクリーンに、部屋の中で灯されたキャンドルの炎が映し出される。ぶるっと小さく揺れる炎を見ていると、胸の高鳴りがほんの少し落ち着いた。

そして、バンドメンバーと折坂氏が登場。
飛行機のエンジンに見えたのは、大きく丸いライトだった。電球色の強い光は、客席を照らすためのものかな。光に当たり浮かびあがる自分の顔を思い、スッと鼻筋が伸びる。

折坂氏は、体も顔もシュッとしていた。ああ、やっと。会いたかった。

「道」「犬ふぐり」のはじまりから、歌がのびやかだ。かつて小さな部屋で生まれたであろうフォーキーな曲たちが、“今”の空気をまとっている。マイクの前に立ちすくみ、「あけぼの」と「トーチ」。“まだ動けない誰か”と“あの日の自分”を忘れないと、誓う歌。

「人人」でたゆたい、「針の穴」で高まる会場。しあわせな空気が満ちてゆく。

「夜香木」で、花が咲いたときの、言葉にできなかった気持ちを思い出す。うれしいような、こわいような。大人になることが諦めや哀しみにならないように。エレキギターを搔き鳴らし歌われたダンスミュージック(新曲)に“祈り”の念を感じたのは、思い違いではないだろう。鳴りやまない音楽を前に、踊り揺れる大人たちの姿があった。

「格闘中の」として紹介された新曲は、たしかに試しながらの演奏。けれどそれ以上に、楽曲の、かろうじて聞き取れた言葉の、まっすぐなまなざしに驚く。あの一筋縄ではいかない彼が、こんなにストレートな愛を歌うなんて。次々に押し寄せる光。

「さびしさ」「抱擁」「鶫」「春」、そして新しい曲たち。
すでに知った曲も、初めて知る曲も、あかるくて朗らかでふわふわざわざわゆらゆら、宣言通り「ほかほかな春」だった。
晴々とした包容力のある歌声、恋のはじまりみたいなみずみずしい言葉。“らしさ”を抱きつつ、ポップネスが全開している。

歌を信頼し、素直に歌う。そんな佇まいに見えた。心と体で今この瞬間を感じながら、一方通行ではない「お互いに向き合おう」と呼びかける歌、だった。
ああ、この人の音楽は、ここからますます広がってゆくのだな。すでに開かれた未来で、これらの歌はどんな輝きをもって響くのだろう。

高らかに鳴った出発の“合図”と、世界を見つめるまっすぐな“eyes”。放たれた「あいず」を頼りに、私たちはどこへゆこう。何を見よう。くちびるに春の歌を伝わせながら、今、軽やかなステップで。

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上野イクヨ
本の出版を目標に執筆を続けています📙📕📘よろしければお力をお貸しください🐆🦒🦓🦩🦚🌬️🫧