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Thank You For The Music|すてきな人を支える、音楽のはなし。 〈1〉

すてきなあの人は、どんな音楽を聴いているのだろう?  自身も音楽が大好きなライターikuが、すてきな人を支える音楽の話を聴きに行く、連載企画。3回シリーズでお届けします。
いつも寄り添ってくれる音楽に、「Thank You For The Music」!!

※こちらの記事は、2016年からフリーペーパー「南日本新聞フェリア」と同ウェブサイトにて掲載していたものの再掲載になります。本文中の情報については、現在と内容が異なる場合がありますのでご了承ください。


1) 時と場所と音楽と | ククルクク 店主・伊集院浩久さん

鹿児島市永吉にあるカフェ、ククルクク。店主の伊集院浩久さんが、ブラジル音楽の巨匠、カエターノ・ヴェローゾの歌う「ククルクク・パロマ」から店名を付けたそう。

雨の日に、タルトとコーヒーでくつろぎたくなる雰囲気の店。伊集院さんが〈thank you for the music〉のために選んだのは、ホセ・ゴンザレスの『ヴェニア』だ。スウェーデン出身で、ベン・スティラーの映画『LIFE!』の主題歌を手がけるなど音楽通に評価が高い。

『ヴェニア』は、シンプルで優しいギターと哀愁を帯びた歌声が心地よい、フォーキーな香りもするアコースティック・アルバム。「初夏の休日の西日が差す頃にレースカーテンがひらひらと舞う中でただぼーっと聴きたい」と、話した伊集院さん。いろいろな場面と音楽が、パズルのようにはまる瞬間が気持ちいいという。

取材の帰り、私も海沿いを車で走りながら、カエターノの「ククルクク・パロマ」を聴いた。美しい旋律と声。パズルがはまった瞬間だった。

ホセ・ゴンザレス / 『ヴェニア』

カエターノ・ヴェローゾ / 「ククルクク・パロマ」


2) 歌声に癒やされて | プチシネマ 主宰・下池奈津子さん

黒髪のショートカットがすてきな、下池奈津子さん。「プチシネマ」という映画の移動上映会や落語会を主催する。自らもバンドや弾き語りで歌う下池さんが10年ほど前から聴いているのが、ドイツ生まれ・アメリカ育ちのミシェル・ンデゲオチェロ。スワヒリ語で「鳥のように自由」という意味の名を持ち、ジャズやフォークなどをルーツに、作品ごとに異なる音楽性を打ち出している。

99年作の『ビター』は、弦楽器などの生音からバンドサウンドまでそろった、ジャンルを問わないボーカル作品。少しハスキーで柔らかな歌声が、凝り固まった心をほぐしてくれそうだ。

「疲れたとき、夜中に薄暗い部屋で聴きます。母親のような包容力のある声で、安心します」と下池さん。無理に気分を上げるのではなく、そのときの波長と合う、落ち着いた音楽を聴きたいと話す。聴く人に優しく寄り添う音楽の魅力を再認識できる、大人のための一枚。

ミシェル・ンデゲオチェロ / 『ビター』


3) 今、あえてCDで| カメラマン ・ 小原賢文さん

店に出かけ、お気に入りのCDを買う。フィルムを開け、プレーヤーにセットして、流れ出した音に心を躍らせる。カメラマンの小原賢文さんも、そんな経験を懐かしむ一人だ。

歌詞カードを読みながら同じCDを何度も聴いていた中学時代を思うと、インターネットからデジタルデータで音楽を買うことが多くなった今の状況は、少し寂しいという。

「今でも特に好きなアーティストはCDで買います」という小原さんが、あえてCDで聴くのは、リオデジャネイロオリンピックの開会式にも登場して話題をさらったブラジルの巨匠、カエターノ・ヴェローゾの『カエターノ・ヴェローゾ』。ギターを抱きかかえたジャケットが印象的な、1985年録音の弾き語りアルバムだ。

マイケル・ジャクソンの曲をメドレーに取り入れるなど、ポップスファンの心をくすぐる選曲もすばらしい。なにより「美しい声と美しいギター、シンプルだからずっと聴ける」。納得の名盤。

カエターノ・ヴェローゾ / 『カエターノ・ヴェローゾ』


今回はここまで。次回、〈2〉へと続きます。お楽しみに!

※ 2025春、「Thank You For The Music」は新たに〈サンキューフォーザミュージック〉へと生まれ変わり、連載企画をスタートする予定です!
こちらもどうぞお楽しみに ♪


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上野イクヨ
本の出版を目標に執筆を続けています📙📕📘よろしければお力をお貸しください🐆🦒🦓🦩🦚🌬️🫧