『イエロー・マジック・オーケストラ』(アスペクト)紹介記事

 80年代のテクノポップブームを牽引した日本のロック史の最重要グループ、YMOの初の公式インタビュー集。02年のソニー復刻盤に収録された原稿を再構成したものだが、すでにCD所有者も多いリアルタイム世代組にとっては、嬉しい書籍化になるだろう。

 細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏という異なる個性の3人で結成され「日本のビートルズ」と呼ばれることもあった彼ら。ソニー、ホンダが海外制覇に着手を始める80年代初頭を背景に、コンピュータ・サウンドとエキゾティックな旋律で世界進出を成功させた唯一の日本人グループとしても看板に偽りはない。解散後の各人のソロ活動も、坂本のグラミー賞受賞など活躍の場は多岐に渡るが、本書のインタビューの収録場所も、サンフランシスコ(細野)、ニューヨーク(坂本)、東京(高橋)と3都市にまたがっている。自ずと話題も2回の世界ツアーの総括や海外進出で感じた軋轢など、国際色豊かなものになった。

 バブル期らしく実はピリピリしたムードもあったという93年の「再生」の相克を超え、結成25周年目のリラックスした中で行われたインタビューは各10時間。6年の活動期間の、レコード会社のビジネス的な思惑とメンバーの衝突など、今だから話せる裏話の連続には読んでいて思わず息を呑む。後期のメンバーの対立劇もファンにはよく知られているが、レノン/マッカートニーのビートルズ神話を連想させて、実にロックバンドらしい。

 ヒューマン・オーディオ・スポンジとして“再結成”を果たすのは、本書の取材の翌年。3者バラバラになったヒストリーが再び引き合い、当時の出来事がパズルのように組み合わさっていく様は本書の醍醐味といえるはず。

(雑誌『奇想天外』より再録)

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