第9話 「発見」
…ある日の夕方。
イミ「のび太くん、聞いてくれよ!大発見だ!
『多色のうごめき』が何でできているかが分かったんだ!」
のび「……?」
「多色のうごめきって何?」
イミ「多色のうごめきを知らない??どうなってんだキミは…!」
深くため息をついて、イミえもんが説明をはじめる。
イミ「多色のうごめきとは、人だよ。そして世界でもあるし、文化なんだ。」
のび「人であり世界であり、文化…?」
イミ「そう。自然はもともと無色なんだけど、人は世界を認識するときに色を生み出すんだ。そして色はうごめきながら拡張変化する。それが多色のうごめきだよ。」
のび「……分かったような分からないような。人や世界は多色のうごめきという概念で認識できる。ということかな…」
困惑しながらも少し考えるのび太。
のび「で、その多色のうごめきが何でできているかが分かったってことだよね。それは一体、何なの?」
イミ「土だよ」
のび「土??」
イミえもんが興奮したように話しだす。
イミ「土というか粘土みたいな感じかな。粘土は水分を多く含んでいるときは形を変化しやすいし、なめらかに他の粘土とうごめくのさ。
しかし、うごめくのを止めて乾いていったり、他の固い面とぶつかったりすると固まっていく。
固まると強くなって安心感は持てるけど、その分ひび割れやすくなり強い衝撃を受けるとそのまま崩壊する恐れがあるんだ。
つまり、ある程度の水分を含んである程度の圧力でうごめき続ける、弾力のある粘土であることが、美しいうごめきを描くエネルギーになるんだ。」
(…やばい。イミえもんが止まらなくなってきた…)
のび太はスッと立ち去ろうとする。
イミ「ちょっと!のび太くん!そんな態度を取られると僕のうごめきが固くなってきちゃうじゃないか!」
そのまま立ち去るのび太。
イミ「うわ、やばい、、固まる。水を与えなくちゃ。ああ、そうだ。思いを馳せよう。思いを馳せるとうごめきは水分を含んでとろとろになるんだ。まだ見ぬ世界へ思いを馳せよう。………のび太くんの中の僕が見えていない世界を想像しよう……」
……10分後。
イミ「あああ、何だかとろとろになってきた気がする……。どうでも良くなってきた……。あぁ最高。今、ボクは粘土だ。」
おわり
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