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「ベンチャー投資家が見る、コーチング市場とmentoの可能性」イベントレポート

mentoは今年(2022年)4月にベンチャーキャピタルのWiLから資金調達を行いました。ベンチャー投資家の視点からは、コーチング市場がどのように見えているのでしょうか?SmartHRや、Caster、LegalForceなどの出資経験もあるベンチャーキャピタリストの難波さんをお招きしてお話をお伺いしました。

難波俊充
2013年よりWiLに参画、日本国内のスタートアップ投資を担当しBtoB/BtoC含めシリーズAから多数支援。前職サイバーエージェントには2003年から2013年まで在籍、広告代理事業、米国支社代表取締役、投資子会社SVPなどを歴任。

株式会社mento CEO 木村憲仁
2014年に早稲田大学を卒業し新卒でリクルートホールディングスへ入社。販促領域のプロダクトマネージャーを4年半務め、消費者向けのサービス開発を牽引し事業成長に貢献。
2018年に株式会社mento創業し翌年パーソナル・コーチングサービスmento(メント)のサービスを開始。これまで延べ2万時間以上のコーチングセッションを提供し、ミレニアル世代のビジネスパーソンの成長を支えている。
Twitter:@norikmr

コーチングを「人を育てる」研修市場で広げていく

ーーーさっそくですが、今回mentoに投資した理由や今後の可能性をどのように見られていますか?

難波:一昨年くらいから、メンタルヘルスケアの領域がアメリカでも注目されています。瞑想のアプリは日本でも普及しはじめていますし、BetterUpというコーチングを提供する会社が4000〜5000億円以上の事業価値で評価を受けているという事例もあります。同社は、コーチング市場ではなく研修市場を取りに行っているんですよね。この事例をもとに日本の研修市場でも一定の規模を取れそうだと考え、mentoに投資させていただいきました。

研修市場に入っていくには、研修として導入しやすい価格でコーチングを提供することが必要だと考えています。これまではコーチングを受けるのも、学ぶのも高かった。mentoはコーチングサービス提供の構造改革を行うことで、マネージャー研修予算でもコーチングを提供できるようになったんです。mentoはより多くの人にコーチングの価値を提供できる、数少ない会社だと思っています。

木村:そうですね、「人を育てる」研修の市場でニーズが顕在化しています。実際に営業をするなかでも、人を育てるためのソリューションとしての価値を認識されはじめていると感じていますね。

木村:また、日本でもメンタルヘルスへの関心は高まっていますよね。世の中を俯瞰して考えてみると、人が幸せに豊かに生きることに対して敏感になっていると思います。アメリカでメンタルヘルスにお金を投じることがカルチャーになっていることはそのひとつの具体例だと思いますし、日本もそうなると確信しています。

ーーー研修の市場で規模を広げていくために、他にどのようなことが必要だと感じていますか?

木村コーチングの認知を変えることですね。コーチングはマネジメントするためのコミュニケーション手段という認知をされている方が多い。コーチング研修もコーチングを学ぶための研修とされていて、コーチングを受けたことがある、効用を理解している人は少ないんです。コーチングを受けてもらい「マネジメントの手段」ではなく、「人を育てる手段」という認知に変えていきたいなと。mentoがやるべきことは体験までのハードルを下げてスピードを縮めていくこと、その結果研修市場にコーチングを広められると思っています。

もうひとつ変えたい点でいうと、コーチングを受けるのは経営者などのエグゼクティブが多いという認知ですね。グローバルだと、エグゼクティブに限らずより多くの人が受けることが当たり前になっている。日本でエグゼクティブ向けが先行したのは、ビジネスとして成立させるためだったと捉えています。コーチングビジネスは労働集約型なので、高単価にして、それを払えるお客さんをターゲットにして売り出していくしかなかった。問題はビジネスモデルにあるので、より幅広い人が受けてもしっかりと儲けられるようにすれば、グローバルと同じように対象の人を広げられると思っています。

ーーー「労働集約型」だとビジネスとして成長しにくいという意見を持たれている方もいらっしゃると思います。難波さんはどのようにお考えですか?

難波:労働集約型のビジネスモデルでも、上場してる会社はたくさんあるのであまり心配はしていません。ネガティブに捉えられる方が気にするのは、労働集約でどこまでの規模を目指せるのか、という点になると思います。それはこれからの挑戦ではありますが、大手企業がそれなりの金額を払って使う意思決定をするほどの企業活動へのインパクトのあるサービスにできるかどうか、にかかってくると思っていて、mentoならそれができると思っていますね。

時代の変化のなかでコーチングが持つ役割とは

ーーー組織内でコーチングが活きる可能性は研修の他にありますか?

難波:時代の変化という観点で、組織で求められる能力が変わってきている、それに対してコーチングが活きる場面が増えてきていると考えています。前までは指示された仕事をやっていれば、給与を貰えて、会社が成長していましたが、今ではそのような時代が終焉を迎えています。今は、課題発見力や解決策を編み出していく力が必要であると言われ始めている。こうした思考の変化を促すためにコーチングが重要になると思います。

木村:戦後の日本企業の勝ちパターンは、しっかりと決めたものを大量に安価で作り切る製造業。その再現性を上げるために、そういう人材を育てることに注力し、そのための雇用モデルが構築されていました。ですが、現在はその定説が壊れつつあり、再構築されている最中だと思っています。今では、以前のように決められたことを遂行する能力の高い人よりも、指示がなくても自ら課題を発見して解決できる人が必要。そういう人材をどうやって育てていくのか、というところでコーチングがソリューションにもなりうるかなと思いますね。

難波:そうですね。大企業の方々が、組織改革のツールとしてコーチングを活用するようになっていくと思います。例えば他にもダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を進めるためにコーチングを使うというのもありえるなと。結果として経済の発展にもつながるので、社会全体でみてもコーチングが世の中に良い変化をもたらすのではないかと思っています。

木村:D&Iは、私たちも大事にしたいと思っているキーワードのひとつです。大事と言われ始めているけれども、そのために何をしたらいいかわからないという方が多いと思っていて。事業のテーマとして明確なソリューションを打ち出すことにすごく関心があるし、やっていきたいですね。

ーーー法人の話を多くしてきたのですが、mentoはもともとは個人へのサービスから始められていますよね。

木村:そうですね、個人にちゃんとサービスを提供していきたいんですが、それだけだと商売として結構難しいんです。個人のプラットフォームを成立させるには法人向けの事業が必要で、法人向けの事業を伸ばすためには優秀なコーチが必要になります。なので、個人向けのサービスは、法人事業のコーチングをレベルアップしていく研鑽の機会と捉えています。

そうなると、企業が人材を育てるために投資したお金が回り回って、世の中でキャリアに悩んでいたり人生をもっと楽しみたいと思ったりしている、個人を助けることになる。コーチも経験を得られてうれしいし、僕らも個人にも法人にもコーチングがちゃんと提供できる、ビジネスとしてちゃんと成立する、大きなエコシステムが完成する。それを実現していきたいと思いますね。

テクノロジーとコーチングがかけ合わさることで生まれる価値

ーーーどの業界でもテクノロジー活用には注目されていると思います。コーチング業界におけるテック活用は進んでいくと思いますが、人が提供するサービスだからこそ人の価値が発揮される部分も大きいのではないかと思いますが、その領域をどのように考えられていますか?

木村:究極をいうと、例えばZoomでつないでAIがコーチングをする、問いを投げるようなイメージかと思うんですが、ちょっと違うかなと思っています。技術的に難しいというよりは、コーチングは人と人が向き合うことで価値が発揮されると思っていることが大きな理由ですね。人がちゃんと人に話を聞いてもらうことで、もっと自分を探求したいと思えるようになる。本当の意味で相手に受容され、自己を省みるために他者に自分を預ける感覚を持てるのは、人ならではの価値だと思っています。なので、全部を機械化することがベストではないのかなと。

難波テクノロジーでコーチングの効果を可視化するというのはいいかもしれませんね。コーチも受けた方も感覚的に実感している効果をロジカルに理解できると、その次の行動や気づきが深くなるのではないでしょうか。構造的に物事を理解する力、抽象的なものを読み解く力は人によって得手不得手がありますが、構造化はテクノロジーが得意な分野です。特にAIは画像認識、音声認識、発話内容によって、どのような感情の動きがあるかを明確にするのは面白いと思いますね。

コーチも振り返る材料が生まれるので、経験豊かで百戦錬磨なコーチが育ち、結果的にサービスがより良くなっていく。mentoが日本で一番優秀なコーチがいるプラットホームになれば、コーチングをお願いしようと思ったらmentoにするしかないとなるので、ビジネスの成長にもつながります。コーチがmentoでコーチングすることが楽しい、自分も成長できると思い続けてもらい、コーチに愛されるプラットフォームになることが良い循環を生んでいくと思いますね。

木村:今mentoはコーチと受ける人のマッチングの役割を担っていますが、ゆくゆくは人が変わるためのソフトウェアを含むサービスにしていきたいと考えています。いまはプロのコーチの皆さんがクライアント1人ひとりに向き合っていただいています。加えて、その体験を再現性を持たせていく、コーチがサポートしきれない部分をサポートしていく、クライアントが必要だと思ったナレッジを提供していく、そのようにソフトウェアがコーチにエンパワーメントするプロダクトをつくっていきたいなと。

その結果として、サービスが労働集約からソフトウェアの領域に変わっていくことで、市場からも評価をしてもらいやすくなり、お客さんに提供できる価値も高まっていくと考えていますね。

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