風呂上がりの首筋に!
#2000字のホラー
アレは学生時代、疲れて帰って風呂に入りそこねて寝落ちした夜だ。
深夜。ベタベタする身体で目が覚め、どうにも我慢できずに風呂へ入った。ウチは貧乏長屋で風呂にシャワーは無かった。お風呂の給湯もなく、地味に沸かし直しをしながら入った。コレでもマシになった方だ。ここへ引っ越すまでは風呂無しトイレ無しのの家だったわ!ここへ来た時も当初は空き地だけで途中から空き地にお風呂場を建てたと言う状況だった。今は浴室内から点火も出来るが、最初は外のボイラーでしか点火は出来ず、真冬の寒い時も外に位置と出るような有様だった。風邪引く時もあったなー(笑)そんな環境で育つと風邪も引かなくなる。野生の王国はこうして作られていくと言う過程を知らずに辿っていく。
皆が寝静まっているので流し湯の音もあまり立てないように静かに浴びながら、サッパリとして浴室を出る。辺りは真っ暗。浴室にしか明かりはない。すると首に違和感を覚えた。
ん?黄金虫か?このモゾモゾは?と、首のモゾモゾを右手で掴む!左手にはバスタオル。
手を開くと、そこにはGKがいた!
丸々と、そしてツヤツヤとヌメった光を背中の光沢に宿すGK
黄金虫だと思い込んでふんわり握ってしまった馬鹿な俺(笑)
ヤツは灯りに向かって飛んで来たようだ。
着地点がたまたま風呂上がりの俺の首筋。
いーやー!黄金虫ならぬ油虫やんかー!キャーッである。
深夜に騒げない悶絶。GK如きに大きく翻弄されるチキンな俺。ふんわり握ったGKをブンブン振り払って、再び風呂に入り直した。浴室の小さな窓は全開で月が見えていた。この小さな窓から覗いていた男が居たなと思い出す。猫を探して迷い込んだと言う苦しい言い訳をして風呂場を覗いていたが、その時入ってたのは父親だった。懲りずに2回も覗きに来た男だった。GKはアレから懲りたのか、二度と深夜に対面することは無かった。
風呂上がりの首筋に油虫!の体験はあの1回こっきりであった。
改めて考えれば、黄金虫、深夜に飛ぶか?
それ以来、風呂を出る時は気をつけるようになったかと言えば、そんな事もない。
無防備に出るのは変わりない。