ピエタとトランジ

『ピエタとトランジ』藤野可織 講談社

(女子高生のピエタ、着崩した制服姿。正面の非常階段を登り上手上の踊り場に座る。カップアイスを片手にスマホを操る)スクリーンに打ち出される文字。

【〈これは小説じゃない。記録だ。備忘録。私と友人の冒険についての〉】(以下【】はスクリーン)テーマ曲。

(いつのまにか女子大生〜80代までの8人のピエタ現れ、それぞれの方法で記録をし始める。大勢の人が溢れてきて殺戮者達のステップを踏む。無音。下手前に女子高生のトランジ登場。標準仕様の制服。殺戮者達がパッと道を開ける先に非常階段)

トランジ:パンツ見えてるよ、ピエタ。

ピエタ:見せてんの。なんで私のあだ名知ってんの。ト・ラ・ン・ジは、なんで転校2日目でサボってんの?

トランジ:・・・私の近くにいるとみんなろくな目に遭わないから。

ピエタ:? 気にすんなって。

トランジ:そのうちわかるよ。(MUSIC,C I)

(女教師が上から降ってくる。群がる殺戮者達は生徒で教師で保護者である。いじめ、自殺、不倫、殺害、家庭内暴力、想像できる限りの殺戮のダンスが繰り広げられ)【トランジはものすごく頭がいい代わりに、周囲に事件を多発させる体質なのだ。全校生徒数は半分以下に減っていた】非常階段を降りる2人は有名な探偵とその助手を思わせる。MCO殺戮者達倒れる。女らしき者の腹が膨らみ男らしき者は頭が燃え始める)

ピエタ:あーあ。全滅するかと期待してたのに。

トランジ:事件を解決するのは面白いけど、私のせいで人が死ぬのは気分悪い。

ピエタ:あんたのせい?自意識過剰じゃない?

【メロンソーダ殺人事件】(ファミレスで勉強する2人。殺戮者達はメロンソーダに毒を盛り、トイレで出産、強盗となりナイフを振り回す、解決に乗り出すピエタとトランジ)【女子寮連続殺人事件】(医大生になったピエタの寮で人が次々と消えていく。発端は寮生の彼氏のDV。キーワードは〈女の子はみんな、男に殺されると思ってたのに〉)【男子大学生集団変死事件】〈トランジのそばにいるとみんな死ぬの。なのに、いちばんいっしょにいるあんたが死なないのはどうしてなの?〉【海辺の寒村全滅事件】〈トランジは連続殺人鬼じゃないよ〉トランジの体質は感染する〈トランジも産めないよね。だって死んじゃうもんね〉〈ピエタは子供を産んで。ふつうの幸せを手に入れることができるんだよ〉〈ハァ⁈〉【無差別大量死夢想事件】〈私はピエタじゃないんなら存在する意味がない人間だ〉【夫惨殺未遂事件】ピエタの結婚。夫の頭が燃えている、ピエタが首を締めると益々燃え上がる炎。【死を呼ぶババア探偵事件】〈そうだよ。今も楽しいよ。最高〉【疑似家族強盗殺人事件】〈トランジの事件誘発に感染〉〈災禍を撒き散らし始めた〉【傘寿記念殺人事件】〈人々はただ互いが原因で死んでいく〉【高齢者痴情のもつれ殺人事件】〈ばーか。そんな未来が欲しかったら最初から〉【世界母子会襲来事件】〈世界が滅びるね〉〈滅びない、滅びるのは人間だけ〉

(殺戮者のダンス。ありとあらゆる殺戮が行われるなか、女と思われる者たちは男と思われる者達相手に妊活なるものを強要しそれが原因で一層新たな殺戮が始まる中、高校生のピエタ登場、踊り場に高校生のピエタ)

トランジ:パンツ見えてるよ。

ピエタ:見せてんの、世界が終わるところをいっしょに見に行かない?

トランジ:次はピエタが死ねかもよ。

ピエタ:えい!(アイスをトランジに投げつける)

トランジ:うわっ(服でアイスを拭って)死ねよ。

ピエタ:お前が死ねよ。

(2人が非常階段を降りると階段が立ち上がり1本の傘の芯になる。傘が開いて大きく広がる下、殺戮者たちがいつまでも踊り続けて炎に包まれ、ピエタとトランジ笑いながら。テーマ曲)終

想定媒体「芝居しようよ」君ならどう演出する/舞台化ピエタとトランジ草稿

*どのシーンをどう広げても縮めても構わない。

*ピエタは9人いる方が良い。トランジは高校生だけでも良い。

*殺戮者は変幻自在OK

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