2021年度薬ゼミ全統I(246回)雑感(理論2)
模試は大学や地域によって受ける日時が違うようなので、Twitterを避けてこっちで書いています。ということでネタバレ注意です。
また、あくまで独断と偏見による雑感であることをご容赦ください。何かあればコメントかTwitterのほうでよろしくお願いします。
薬理
薬理は一番勉強を勧められますが、それは他の科目とのつながりが強いだけでなく"勉強すれば確実に取れる単元"だからというのが大きいと思います。逆に言うといろんな勉強論の中でやみくもな順番に薬理を始めても危ないのでは…と思うこともあります。
問題文はほとんど「どこの」「何の受容体・酵素に」「どう作用して(結合様式や活性化など)」「何の器官が」「どうなるか」の5つに分解されるので、この5つをしっかり押さえておくことが得点のための大事な要素だと思います。たいていの国試の問題は3つくらいで大丈夫だったりするんですが、細かい薬ゼミは5つのどこからでも引っ掛けてきたり、最近の国試の難問では薬ゼミ並みの厳しさを持っているものもあります。
151. 受容体の問題は外さないようにしたいところ。生理学-薬理-病態と理解するには絶対に外せない項目だなと思います。この中だと5-HT₃はあまり知ってても役に立たないかもですが、残り4つは大事になります。
152. 交感神経系・副交感神経系も外せないところ…なもののややこしいと思う人は多いのでは…。ピロカルピンとトロピカミドとか。この中ではカルプロニウムはややマイナーなものの、他はきっちり理解して判別したいです。
153. 国試の薬理で麻酔薬が出るときは麻酔薬の括りでしか出てない気がします。ただひとつひとつの薬のはたらきは特徴的なので、麻酔の項目をきっちりやる、という感じで勉強したら稼ぎどころにできます。また構造と麻酔の効き方は密接に関係しているので、だいたいの構造(脂溶性かどうかなど)を思い浮かべられると安定する気がします。
154. 抗てんかん薬は定番なものの作用点が多く複雑で間違いやすい所。なんとか定番のものから選択肢を取捨選択していきたいところです。この中だと1,3,4に自信があればなんとかなるのでは。5のペランパネルは比較的新薬かつ選択肢からは切りづらいと思いました。
155. 5のリルゾールのように使われる機会が限られるものはほぼ誤答でしか出ない、というのは国試の原則としてあったような気がします(例えばメカセルミンとか)。見たことないな、迷うな…って時は他の選択肢の判断を優先した方がいいかもしれません。2のCGRPの説明とかは抗CGRP薬も出たので今後国試には出やすいかも。
156. 3のバシリキシマブがやや難しく、ほかの誤答も癖がある問題。1は構造からアザチオ"プリン"なので誤答だということに気づけば、レフルノミドの記述だとわからなくても大丈夫だったはず。また2や4のような選択肢で「ん…?」と違和感を持った時は、逆にこの記述が何の薬剤なら該当しそうなのかを考えるアプローチが大事だと思いました(たぶんタクロリムスとメトトレキサートを正答として答えさせる問題なら分かる人が増えると思うので)。
157. 最近増えてる構造式の問題。実際薬剤師が特に実地で分かってなきゃいけないことはそういうことな気もしています。Aはイソフラボンの構造なのでイプリフラボン…までわからなくても、1の「エストロゲンが分泌」の違和感をを見落とさないようにしたいです。残りのうち構造が分かりにくいのがD、選択肢が難しいのが3だと思うので迷うのは3と4。3については1位と25位が水酸化されたものが活性型VD₃、という知識と肝臓25位→腎臓1位の流れまでは厳しいものがあるので、肝と腎で2回水酸化されるということさえ押さえておけばいい気がします。
158. RAASについて理解していたら迷うとしたら2か3。アロチノロールをα₁β遮断と覚えていたか、エナラプリルのプロドラッグを覚えていたかどうかになると思います。
159. 血管系は生理学の正確な知識が要求される分野なので苦手な人が多いイメージ。カルバゾクロムの薬理を覚えてたらラッキーで、あとはCa²⁺やcAMPのこと、トロンボモデュリンの役割などをしっかり理解していないと難しいと思います。
160. 生殖器系は内分泌系でまとめられることが多く、どちらかというとそっちのほうが似た薬が多くて難しい感じがあります。この5つだとそれぞれ全然違う薬効なので比較的選びやすかったのでは。
161. これも薬ひとつひとつが特徴的なので割と答えやすいはず。こういう括りで出なくても実践で出そうな薬が多いので得点源にしたいところ。
162. 内分泌系はややこしくて難しいことが多いのですが、今回の問題は比較的わかりやすい選択肢になってる気がします。
163. これもしっかりやってるかどうかで差がつく問題ですが、優先度としては下がるかも。5のフルシトシンの薬理がやや特徴的で難しいのと、3のコレステロールという引っ掛けに注意。
165. 薬理は連問を意識すると問題の幅が狭まったりするので逆に楽なことが多い気がします。これも164が選べているかどうかで決まる問題。
167. エボロクマブの薬理を覚えてなくても誤答を切れる気がしますが、5にあたる薬剤がないのがちょっとややこしいです。
薬剤
この科目が近年難しくなってきたのは過去問のテンプレート的問題から外れてきたことによるものだと思います。本来は物理・化学・薬理・実務など非常に多面的な視点が必要になるので、かなり難しい科目だと思います。特に今回の模試は後半が難問続きだったので、勉強したのに…と感じた人も多かったのでは…
168. 今回の中では典型的な問題。どれもほぼ必須事項だと思います。
169. Langmuirの式を見て形に気づく人もいると思うんですが、分母分子をKで割ればミカエリスメンテンの式と全く同じ形になります。Km→1/K、Vmax→n、[C]→[Df]と対応し、そのうえでグラフを見ると1,2,4,5はクリアできます。3は知識としては優先度が低い気がします(タンパク結合の組み合わせは丸覚えだからか最近の国試で出てないような)。
170. アミオダロンのように使い方も特殊な薬剤は構造もぼんやりと頭に入れておいた方がいい気がします。調べたら水素結合のアクセプターになりうる場所がとても少ないことがわかります(→とても脂溶性)。2,3は知識問題ですが、近年の国試ではタンパク結合サイトの話よりトランスポーターが圧倒的に出ている感じがするので、そういう優先付けも必要かも。4はややこしいものの分布容積の式を立てればOKで、5は弱酸性薬物は乳汁中でイオンになって出てこれないイメージを持てればOKだと思います。
171. SNPの定義は知っておいた方がいいかも。2は知りませんでした。ただ残りは基礎的なので正解したいところ。
172. 3のMATEもそろそろ国試で出そうな…1は大部分が胆汁酸だとたぶんコレステロールの塊みたいになってしまいます。あとは薬剤攻略にはどれも必要な知識。
173. 計算問題の中ではやさしいほう。
174. MRTiv=1/ke、MAT=1/kaを思い出せるかがすべて。
175. 積分できるかどうかの問題。速度定数kとそこに含まれるDはうろ覚えでも感覚的に分かっていれば十分な気がします。
176. 1と5が難問だと思います…。非晶質について詳しくやってた人にはできた問題なんでしょうか。
177. Stokesの式を丸暗記するより、各パラメータが変化したときにどうなるかを感覚で掴む方が大事だと思います。
178. クラフト点と曇点については正確な理解が必要になります。選択肢4を考えて選べた人は薬剤の科目の考え方に慣れてるように思います。
179. 難問?乾燥が書いていないということは乾式かな…という見立てが必要。4,5の知識はマニアックかもしれないですが、4は"溶液を用いる"に違和感を持てれば…。
180. スタンダードをとことん外した問題。3のシロップ用剤は粉末ということを知ってても密閉でいいのか迷った人が多いのでは(密閉+防湿でいいらしいです)。また透析は腹膜透析のみ密封であることに注意。
181. これに基本問題マークをつける編集者は丸暗記問題は全部基本だと思ってるんでしょうか…ただ1と2は知っておきたいところ。3~5は余裕があれば。
182. 率直に言うと図がわかりにくい…と思ってしまった問題。せめてどこが固体薬物を含んでいるところなのかの図示はほしかったです。解答するには親水性マトリックスと疎水性マトリックスの違いを理解しているかが肝。
病態
メジャーな疾患はもはや3~4問しか問題にならず、安定して得点するにはいかに医薬品情報や統計でこぼさないかがポイントになってきました。新カリはここに漢方と遺伝子治療が1問ずつ加わった感じ。
164. 冠攣縮ってわざわざ書いてくれているのでβ遮断が禁忌なのはわかりやすいと思います。
166. 実務寄りの問題。選択肢はいろいろですが、正解できるかは脂質異常症に関する検査値の基準値を知っているかどうかの問題になります。
183. 幸いにも答えの3は見分けやすいのですが、復習はすべてやっておいた方がよさそう。
184. 主要疾患なので答えたいところ。正解がわかりやすい選択肢です。トファシチニブについても今や扱い方は必須知識なのではないでしょうか。3は余裕があれば。
185. DICはいろんなパターンから起こるのが難しいところ。2をちゃんと覚えているかが正解のカギで、自信がないと3~5が惑わせてきます。
186. 1,4,5は発展的知識なので、内腺が肥大すること、全摘はがんに対してなこと、あとPSAのマスクについて理解しておけばいいんじゃないでしょうか。
187. 生理学や薬理学を理解してると2,3は大丈夫だと思います。Fowler位などの体位は国試ではあまり覚えがないですが、覚えておくと実践的でいいと思います。
188. 白血球数は日給、血小板数は月給、赤血球数は年収って覚えるといいと誰かが言ってました。今回の問題と照らし合わせると日収・月給が低すぎるので汎血球減少なのがわかります。これで1,4,5は切れるんですがもう一段階としてクームス検査陰性が問題になります。全般的な知識としては2か3に絞るところまでは持っていきたいところ。
189. 国試でバセドウ病は多く聞かれても橋本病は割と出題が少ないような(病態を問う問題はなかった気がします)。そのためアウトプットの場が少なく慣れない問題ですが、粘液水腫や動脈硬化を覚えていれば正解できると思います。
190. マイナーな範囲の中のメジャーな疾患。内リンパ水腫と回転性めまいをしっかり覚えていれば3~5に惑わされることもなかったと思います。でもジフェニドールとベタヒスチンは覚えておいた方がいい気がします。
191. CMVは新型コロナとの比較で学んだ人もいるかも。問題はどれもCMVについての基本的な知識です。
192. 国試でもがん枠の問題は必ず1問出てる気がします。ATLをきっちり勉強していれば4,5も大丈夫かもしれないですが、なかなかそこまで深掘りしてない人が多いのではと思いました(1~3は大事だと思います)。
193. 検定の問題。推定と検定は理論をしっかり理解しておくことが薬学系のキャリアでは大事な気がします。理論が分かっていれば難しくない問題。
194. NNTを知っていれば計算するだけ。
195. 遺伝子関係の問題。どの選択肢も基礎的かつ重要だと思います。