うふうさぎになった日③
今宵は満月
そこに姿は見えなくとも
繋がっているように
あの頃が
あったから
今こうして
空を見上げることが出来ているように
あの頃を後悔ではなく
感謝で包んであげられるように
満ちて溢れて
光の道が開きますように
そんな願いを未来に込めて
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少しだけあの頃の
【うふうさぎになった日】
にお付き合いいただけたら
うれしいです
(うふうさぎは
今は障がい者施設で働いています)
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私は高齢者施設の
相談員として働いている
世間では
コロナ感染予防もかなり和らいで
以前とほぼ変わらぬ生活が
戻りつつあると思うが
高齢者施設ということもあって
うちは
まだまだ規制が多い
家族面会もその一つ
パーテーション越しの
面会ではなくなったが
2つの会議テーブルをはさんでの面会
お話が出来る方はそれでもまだいい
寝たきりとなり
呼びかけても
目を開けることのない方も多くいる
そんな状況であっても
手を握ることさえ
させてあげられない
施設の方針
そう言われたら
もうそれ以上はない
日によって
職員によって
対応に差をつけてしまったら
それこそ混乱を招く
自分の感情だけで
動くことは許されない
入所者さんと家族さんが
触れ合える日は遠い
毎月必ず
奥さんに会いに来てくれる
90歳のおじいちゃんがいる
(私たちは
お父さんと呼んでいる)
腰が曲がって
耳も遠く
歩くのもやっとなのに
30分かけて自転車でやってくる
元気だ
ただ
面会の日を忘れてしまう
しかも
全然違う日に来る
と思ったら
面会当日は
大抵遅刻してくる
そのたびに
電話して
様子を聞いて
それから
奥さんの注入食を
待ってもらって
面会日はいつも
パプニングだらけだ
奥さんは
ほとんど反応はない
だけど
お父さんは一生懸命話しかける
奥さんの状態が悪いと連絡したら
一目散に
自転車で駆けつける
実は
お父さんは気づいていないが
よく行くスーパーで
週に2回は
お父さんをみかけていた
お惣菜売り場に見覚えのある
背広姿
あっ
お父さんだ!
それからは
施設に顔を出さなくて
心配な時も
スーパーで
お惣菜を熱心に
吟味する姿を見かけると安心した
よかった~
元気そうだ
もう1年近くそんな日が続いた
お父さんの妹さんが
施設を訪ねてきた
きのう兄が亡くなったんです
夜中にお風呂に入ってて
心筋梗塞みたいです
言葉にならなかった
妹さんと二人
大泣きしてしまった
あれから
スーパーにずっと
行けなかった
悲しい?
寂しい?
自分でも
この感情がよくわからなかった
今日
スーパーに行った
予想はしていた
見慣れた背広姿がない
お惣菜売り場で
大泣きしてる私は
なんとも奇妙だっただろう
お父さんごめんね
大好きな奥さんと
もっともっと
一緒にいさせて
あげられなくてごめんね
もっとそばにいて
手を握ってあげたかったよね
もっと
何かできること
あったんじゃないかな
お父さん
私たちは
ちゃんと支援できてたかな
もうどれだけ後悔しても
時間は戻らない
けど
こんなんじゃ
お父さん
安心して天国いけないね
大好きな奥さんのこと
見守っててね
私
スーパーで
みてたのに
声かけなかった
あの日
声かけてたら
何か変わってたかな
今日は
お父さんが
いつもみてた
お寿司にしてもいいかな
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