電波を送り続けてきた結果
電波を送り続けてきた結果
少女は、かつての繁栄を誇った街の残骸の中でただ立ち尽くしていた。周囲には瓦礫や、崩れ落ちたビルの残骸が散乱しているが、奇妙なことに、どの建物も物理的に破壊された痕跡は見当たらない。街全体が静かに朽ち果てたかのようだった。
彼女が感じているのは、理解できない不安と喪失感。すべてが変わってしまった。電波を送り続けていた異星人との交信が、これほどまでに街を蝕むとは予想だにしなかった。電波が引き起こしたものは、目に見える破壊ではなく、人々や建物が持つ存在そのものを揺さぶる何かだったのだろう。
街は崩壊し、彼女ひとりが残された。今となっては、その電波がどんな影響を与えたのか、どこまでが自分の責任なのか、誰にもわからない。
少女は、思わず震える手で通信機に触れた。これまで何度も異星人との交信を試み、そのたびに不思議な応答を受け取ってきた。最初は単なるノイズのように思えたが、徐々にその信号には規則性があり、何かを伝えようとしていることに気づいた。それが原因で街がこうなってしまったのだろうか?
「一体、何が…?」
彼女は空を見上げた。街を覆う曇天は、まるで彼女の心のように重く、先行きが見えない。人々が消え、街が崩れ去ったのは電波のせいだと確信しつつも、その過程や理由は全くわからないままだ。物理的な破壊がなかったことが、なおさら事態を不可解にしている。
交信相手が何者かも、彼らが何を望んでいたのかもわからないまま、彼女はただひとりこの廃墟に取り残された。だが、どこか心の奥で彼女は感じていた。この街の変容は、ただの偶然や誤りではなく、必然だったのだと。
通信機からふいにかすかな音が鳴り始めた。途切れ途切れの雑音の中に、少女の耳に何かが聞こえた。いつもとは違う、明確な言葉のようなものだった。
「……おまえは、選ばれた……」
それは異星からの声だろうか? それとも、街の崩壊と共に何か別の存在が目覚めたのだろうか? 彼女は通信機を握りしめ、再びその声に耳を傾けた。
「選ばれた…?」彼女はつぶやいた。これがすべての答えを解く鍵なのか、それともさらなる恐怖の始まりなのか、まだ誰も知る由もない。
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