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異形の町に迷い込んだ少女

異形の町に迷い込んだ少女は、今夜も異形の者たちへ会いに行った。

異形の町に迷い込んだ少女、アヤは、今夜も異形の者たちに会いに行った。月の光がかすかに照らすその町は、昼間とは異なる生気に満ちていた。異形の者たちが町の通りや広場に集まり、それぞれが独自の奇怪な姿で談笑し、あるいは黙々と作業に没頭していた。

アヤは、自分がこの町にどうやって迷い込んだのか、未だによく分からなかった。ただ気が付くと、見知らぬ風景が目の前に広がっていた。何度も町を歩き回り、人間世界に戻る方法を探してみたが、町の出口すら見つけられない。ここがどこなのか、どうすれば元の世界に戻れるのか、誰かが知っているはずだとアヤは信じていた。

夜になると、異形の者たちはいつもよりも活気づき、町は奇妙な光に包まれる。アヤは、彼らの中にこそ秘密を知る者がいると感じていた。だからこそ、毎晩異形の者たちに会いに行き、情報を集めようとしていた。

今夜、アヤはいつもよりも深く町の奥へと足を運んだ。そこには大きな広場があり、中央には古びた石の台座がそびえ立っていた。その周りには異形の者たちが集まり、まるで何かを祝うかのように踊っていた。

アヤはしばらくその光景を見つめていたが、ふと目に留まったのは、一人静かに立っている異形の者だった。その者は、顔のない仮面を被り、漆黒のローブを纏っていた。彼の存在が他の者たちとは異なる何かを感じさせた。

アヤはその者に近づき、声をかけた。「すみません、私は人間の世界に戻りたいのです。あなたはその方法を知っていますか?」

その者はゆっくりとアヤに振り向き、無言で彼女を見つめた。仮面の裏からは何も感情を読み取ることができなかったが、彼の沈黙がかえって意味深く感じられた。

しばらくして、彼は低く静かな声で答えた。「戻る方法は存在するが、それを知るには代償が必要だ。お前はその代償を支払う覚悟があるのか?」

アヤは少し考え込んだが、決意を新たにし、強く頷いた。「覚悟はあります。どうすればいいのでしょうか?」

仮面の者は手を差し出し、冷たい指でアヤの手を握った。「私に続け。真実を知るための道を示そう。しかし、忘れるな。選んだ道は、後戻りできないものだ。」

アヤはその手を握り返し、彼の後を追って歩き始めた。二人は広場を抜け、町のさらに奥深くへと向かっていった。その先に待ち受けるものが何であれ、アヤはその運命を受け入れる覚悟を固めていた。

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