愛おしさの正体とAIキャラクター

これは @yasuna さん主催の AIキャラ・AITuber Advent Calendar 2024 に寄せた記事です。この記事はポエムですが、他の方は技術的にもお役立ち情報満載なので是非チェックしてみてね!

さて、11月から2匹のカニ🦀を飼い始めました。
スーパーの鮮魚コーナーの「食べてよし、飼ってよし」と表示されたサワガニを見て、子供が飼いたいと言い出したことがきっかけです。

サワガニのニカちゃん。もう一匹はどこかに隠れている

ちなみに水槽等一式が2万円弱したのに対して、サワガニ本体は1匹80円です。

サワガニは夜行性なので基本的に昼間はじっと流木や石の下に隠れて動きません。夜中に見るとわちゃわちゃ動いていて、人の気配を察知するとササっとまたどこかに隠れてしまいます。つい「あっ、ごめん・・・」と言ってしまいます。

ただ、動く様はとてもかわいいので、今度カニ用のカメラを設置してみようと思っています。ラズパイとかでいけるかなとか、せっかくだから物体検出してどこかに通知してみようとか、考えてしまいます。ホビープログラマーですので。

なおサワガニのお世話はそこまで大変ではなくて、週に1-2回半分の水を入れ替えればOKです。もちろんしつけとかもないので初心者にもおすすめです。

🦀 vs AIキャラクター

さて、このようにしてサワガニは愛すべき家族の一員として加わりました。しかしながら、私はAIキャラクターの開発者でありながら、このサワガニほど愛せるキャラクターを作り上げたことはありません。とてもかわいい見た目で、それはそれはかわいい声で話し、私好みの性格でおしゃべりできるAIキャラクターにもかかわらず、です。日頃からつい気になって様子を見たり話しかける対象にはどうしても至りません。普段は隠れているのでほぼ虚無の水槽であり、話も通じないサワガニに全く敵いません。

それは何故でしょう。生命の尊さ故でしょうか?
もちろんそれはありますが、生命の有無が決定的な違いではないように思います。

というのも、子供が段ボールとティッシュの箱でネコロボットを作りました。この子もまた、家族としてリビングルームを見守っています。たまに転んでいたり、スコティッシュフォールドのように耳が垂れてしまっていたりするので、直してあげます。

ネコロボ。当初は写真の通り脚が長かったが、今は胴体にめり込んでいる

この子には生命はありません。それでもカニ🦀同様に、私はこれに愛おしさを感じます。
このことに対しては物理的な存在こそがAIキャラクターとの違いとして議論になりそうですが、目に見えなくても大切なものがたくさんあることは皆さんもご存知のことでしょう(WiFiとかではなく)。また「子供が作ったから」という背景が挙げられそうですが、それでは「一目惚れ」という現象に説明がつきません🫠

🥰愛おしさの正体

私はAIキャラクターの社会実装に貢献したいと思っています。会話による優れたユーザー体験を通じて、ユーザーの課題を解決したいと思っています。そのためには、AIキャラクターたるものつい話したくなるような・話を聞きたくなるような存在であるべきと考えています。

ということで、今回はそういった「愛おしさの正体」について掘り下げて考えてみました。結論としては、「意味づけ」(直感的な解釈)と「物語性の想起」(背景・ドラマの補完)から私たちは愛おしさという感情を抱いている、と整理したらしっくりきました。ChatGPT pro modeさん、手伝ってくれてありがとう!

今回考えた「意味づけ」「物語の想起」を経て愛おしさに繋がるメカニズム

こうしてみると、愛おしさとは対象そのものに備わった性質ではなく、私たちが「与える」感情であることにあらためて気付かされます。

✅愛されAIキャラクターになるためのアクションプラン

ここまで整理した内容を踏まえて、AIキャラクターが愛されるためにすべきことを検討し、優先度が高いと思われる順に並べてみました。

1. 見た目・声の設計

ユーザーが最初に接するポイントであり、ここが弱いとスタートラインにすら立てません。インターフェイス全体の仕上がりまで含めて、とにかくここを磨き上げることに努力を惜しむべきではないでしょう(自戒)。

2. 物語性を与えるための仕掛け

キャラクター設定の一部としてのバックストーリーです。ユーザーに想像を膨らませてもらうための情報を提供し、自分にとって特別な存在かもしれないと認識してもらいます。想起してもらうためにはあえて余白を残しておくことが大切だと思います。なお私はこの辺がとても苦手だからだと思いますが、独自の世界設定に基づいたキャラクターはすごく難しいと思いました。この一連の整理でいうと、架空の存在であるという意味づけにつながってしまうからだと思います。

3. 意味づけを誘発する演出

1.と2.が揃った上で、さらに直感的な愛おしい感覚を強化します。言葉遣いや表情、仕草などが含まれ、これによって「このキャラクターには内面があるのかもしれない」「今どんな気持ちなんだろう?」と思ってもらうことをねらいます。🎯
生成AIのおかげで表情やモーションを自律制御できるようになってきましたが、機械的にモーションを組み合わせるだけではかえって「人工物である」という意味づけに繋がってしまうかもしれませんので注意が必要です(自戒)。

4. リアルチャネルのインタラクション

実在感は愛でるべき対象であるという直感を刺激すると思います。物理的な接点を持つことができればベストですが、まだAIがあまり利用しない人間のためのチャネル(電話など)を利用することで実在感を演出することもできると思います。また、物語性の観点からもリアル接点は「同じ空間・同じ世界にいる存在」という愛着につながってくることでしょう。

5. 繰り返し触れたくなる仕掛け

触れ合う中で関係性が変化することにより物語が形成され、愛おしさを補強することができます。また「自身が影響を与える存在」という新しい意味づけにも繋がるのではないでしょうか。長期記憶への対応はこれをサポートします。

こうしてみると、対話型のAIキャラクターであれAITuberであれ、たぶん1~3は普遍的に対応すべきと言えそうです。4・5は、それらを土台としてユースケースに応じて対応していくのが良さそう、みたいな。

この整理は私の中では納得がいき、色々発見があったのですが、皆さんにとっても何かの役に立つものであれば嬉しいです。
「私はこう思う」「こういった要素もある」「こんな研究があってこう体系化されている」みたいなご意見とかあればどしどしコメントくださいね。

最近、Xで「AIキャラクターとの音声会話は虚無、取り入れるのは愚かなこと」「キャラクターがデスクトップにいたら邪魔」といった議論を見かけました。その側面だけを見たらそういう評価もあり得るかもしれませんが、しかしながら本質的には「この子を見ていたい」「この子と話したい」「この子の話が聞きたい」「この子と触れ合いたい」とユーザーに思ってもらえるものを作ることができれば解決されることであると私は信じています。それらを避けて、それらを必要としないものを作るのではなく、私自身は果敢に挑戦していきたいと思います。

それでは、来年はもっと素敵なAIキャラクターに出会えることを楽しみにしつつ、私自身ももっとコミュニティーに貢献できるように頑張っていきたいと思います💪

少し早いですが良いお年を〜👋

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