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ソファー
お風呂上がりの湿り気を抱き込んだバスローブ。しっとりと甘いガラム味のそれを纏ったしなやかな躰が腰を下ろす。
いつもの定位置、右端の少しへたった俺の上。
冷たい水滴が堕ちてきて、また雨が降るのかと構えると、それが洗いざらしの髪からの落とし物と知りホッと胸を撫で下ろす。
水は嫌いだ。特に淋しい水は奥深く沁み込んで歪な痕を残す。
鳴り響くチャイムに熱を持ち始める躰。スキップする鼓動がバスローブから伝わってくる。
部屋に入ってきたのはいつもの大柄な体躯の男。
俺よりベッドにいる方が長くて癪に障るけど、寡黙で割と丁寧なこの男を俺は嫌いでは無い。
男の登場にお喋りなテレビが目を覚まし、急に空間が賑やかになる。
「猫、飼いてーな」
スクリーンに映し出された子猫を眺めるしなやかな躰。
大柄な男の方が「猫が2匹ですか…..」と目尻を下げてボソッと呟く。
「いや1匹だろ、なんで2匹?」
そんな会話を聞きながら、俺は頼むからやめてくれと肘掛けを合掌させる。
やんちゃなあいつらの相手をすると傷だらけになってしまう。それにうちにはもう高貴なグレーの猫がいるし。
少しの静粛の後、二人は静かに近づき、俺はスクリーンにキスシーンが流れていた事を知る。
最初の一手は猫のように伸びをした躰から、大柄な男のこめかみにお誘いのキス。それに続く男からのお返しの唇が、まだ少し濡れた髪の毛にそっと触れる。
「乾かしましょうか?」と切羽詰まった声で男が囁き、「…..焦らすなよ」と躰が身を捩る。
全体重をかけて俺に乗ってきた二人に、ここから先はベッドでどうぞと、少し苦しげな軋み声で愚痴ると、二人は怒られた子供のように微苦笑を浮かべながら立ち上がった。
二人が去るとパーティーは終了とばかりにまた眠りについたテレビの代わりに、「まだ起きてる?」と月がカーテンの隙間から顔を覗かせる。
月にウインクをしながら、二人の残した体温が心地よくて軽く伸びをすると、置いて行かれたバスローブが一緒に寝ようよと優しく俺を抱きしめた。