寒空の下で、夏の始まりを思い出す。
寒空の下、月明かりが際立つ夜。
あんなに暑く鬱陶しく
思えた夏が懐かしい。
そんななかで今日は
夏の始まりの話をしよう。
陽射しがアスファルトに
当たって、外の風景が
真っ白に包まれる昼間。
冷房が寒いくらいに
効いている。そんな部屋で、
自分はお茶の試飲をしていた。
熱いお茶を一口ずつ
飲みながら、お目当ての
お茶を買って帰ろうと
窓の外を見ると、ガラス越しに
蝶の死骸を運ぶ蟻が居た。
陽光が照りつける中で、
たった1匹の蟻が
一生懸命に巣に運んでいる。
風に揺れる蝶の美しい羽。
数センチの世界で、生命の循環を感じる。
夏が始まった。