これからの『暮らし』を、人類の社会と経済発展の成り立ちから考える。
暮らしの本質って何だろう?
セキュリティ(プライバシー)
所有(自己表現)
コミュニティ(他者との繋がり)
暮らしの本質を大きく分けると、上記のようなキーワードが思い浮かぶ。
例えば、セキュリティだけなら『ビジネスホテルや賃貸物件』
そこに所有・自己表現を付け加えると『一戸建てや分譲マンション』
コミュニティなら『シェアハウス』など。
現代の住まいは?
近年、都市部の若者は家を買わないケースが増えてきています。
経済的要因もありますが、人々のライフスタイルと価値観の多様化(一人暮らし、パラレルワーク、LGBT)と様々なニーズに合わせた高機能な賃貸物件の増加も挙げられるそうです。
また、日本の自動車メーカー『TOYOTA』はロボットやAIが融合した都市開発を進めています。
なぜ現在このような流れになっているのか。
その本質を知るためには、人類の『暮らしの歴史』を、共同体や経済含め、包括的に紐解く必要がありそうです。
人類が辿ってきた”暮らし”の歴史
暮らすということは、内と外を明確に分けるということ。
縄文時代では、狩猟・採集生活をベースに、内と外が分かれていました。
つまり、外=動植物のいる自然環境、内=寝食がメインの居住空間
暮らしも日々の生活における消費に特化したもので質素なものでした。
銃や防具なども無い時代、動植物が豊富な地域はヒトにとって天敵も多く、身体の安全を確保する上で自然発生的にこのような居住空間=集落が構築されました。
10畳ほどの広さの竪穴住居には、3〜5人が生活していたとされています。ただし、ひと家族が3〜5人というわけではなく、集落は「男性の家」「女性の家」「若者の家」の3軒で構成されていたのが特徴です。
現代のような家族単位ではなく、性別や年齢で明確に分けられていたのが意外ですね。
そして時代は進み、弥生時代。
稲作の伝来によって狩猟採集から農耕メインの社会となり、大量に収穫した富(食糧)を貯蓄するようになります。
ここで生まれたのが高床式倉庫。
小規模な共同体の暮らしに、はじめて未来の富を大量に保管する場所ができました。(その日暮らしから夢見る暮らしへ)
人口は3倍も増加し、天候や土壌の差異によって集落間の大規模な収奪事件(戦争の起源)も起こりはじめます。
今でこそ、機械工学の発展により、機械を操縦して少ない労働力で農業を行うようになりましたが、この頃は全て人力で、農耕道具もあまり発展していないので数多くの人手を要しました。
また、21世紀は情報工学の発展(社会のデジタル化)で、AI制御により機械の操縦すら人間から手離れしていくとも言われています。
それと同時に、短期・成果型の狩猟から長期・計画的な農耕作業にシフトしたことで「労働」という概念と、それを包括する社会体制の基本形が同時に出来上がりました。
富(作物)を生産するものは労働者の原型に。
労働者を指導・監督するものは教育・管理職の原型に。
富を管理する者は金融・銀行業の原型に。
全体を統治するものは権力者の原型に。
権力を動かすものは司祭・朝廷の原型に。
現代まで続くピラミッド構造を持つ社会的階層の大部分がここで形成されたと言えるでしょう。
エジプトのピラミッド建設は、農耕社会の到来による労働の概念と労働を包括する社会的階層の出現によって実現しました。
また、ピラミッドができたエリアは港町で食料や生活用品、建築資材といった様々な交易品が行き交っていたため、農業以外の生産労働がいち早く起こりやすい地理的環境もあったとも言えます。
現代では、インフラ整備や科学的観測・実験といった公益目的なしに民間の余剰労働力を使う大規模な開発が行われることはあまりありませんが、科学革命が起こる前の世界では、純粋な権力者の意向、宗教的儀礼に基づいて余った労働力が使われていたことが多かったのです。
農耕以外で労働力が余るということは、搾取可能な広大な属州を抱え、強力な権力を有している証拠。ピラミッドや古墳などは権力の象徴として内外に誇示され、コミュニティの持続的な繁栄を図っていた側面もあります。
MEMO
ピラミッド建設のような過酷な労働の対価に採用されていたのがビール。
古今東西、お酒の力が人類を労働に掻き立てたのかもしれませんね🍺
生産と消費の因果律からの解放
労働者はこれまで、生産の対価として消費をする権利が与えられてきました。(まさに、"対"価ですね)
大昔は集落単位の経済規模であったため、対価は食糧の現物支給が基本でしたが、交易が発展すると遠く離れた集落や価値観の異なる人々を結び付けるためにより便利な貨幣(信用)という新たな概念が登場します。
また、貨幣には限られた発掘量(希少)で、経年劣化の少ない硬貨(金、銀、銅)が採用されたことによって価値の固定化が可能になりました。
貨幣の発明により、商業が発展すると交易もより活発になり、集落も様変わりしてゆきます。
多様化する労働と町の風景
中世にもなるとヨーロッパでは集落が村や町に発展し、農業以外の職業、商店・専門店が生まれました。(道具屋さんや服屋さんなど)
貨幣の発明と各地方を回る交易商人のお陰で、農業が弱い地域でも手工商業によって潤沢な生活を送れる町が出現し始めたのです。
町から街へ発展すると、職種別に「同職ギルド」が結成され、お互い営業権を独占するようになり、人々の間で分断と階級の多層化が進み始めます。
中世の都市では、商人ギルドの中から、生産者である手工業者の親方たちが分離して、職種ごとに団体(組合)を結成し、商人ギルドに対抗するようになりました。(今でいう事務所から独立する芸人さん?)
同職ギルドは、加盟していない者の営業権を拒否する権利(ツンフト強制)を持ち、技術水準の維持に努めましたが、その閉鎖性が強まることによって自由競争の欠如がかえって技術の停滞をもたらし、ギルドの規制の及ばない農村部などに新しい技術が生まれてくると急速に衰退しました。
繋がりゆく世界と経済・金融の誕生
交易ルートが広がるにつれ、紙や銃火器(書面による契約の効率・細分化と、契約履行を担保する暴力装置の誕生)など新たなものが次々に発見・発明され、人類は大航海時代へ突入します。
同時に、力を手にした欧州の海に面した国々(イギリス、オランダ、スペイン、ポルトガル、フランス)が知性(紙)と暴力(銃)を持って世界中を植民地化してゆきました。
しかし、一回の航海にはリスクと莫大な費用がかかります。
なので、株を発行して操業資金を多くの人々から集めて成果によってリターンを配当する株式会社の原型が現れました。(オランダの東インド会社など)
今でこそ株は有価資産として認識されていますが、法整備が未発達の初期はギャンブルのようなもので、プロジェクトの創業者が資金調達して持ち逃げする詐欺もあったようです。(現代でいう仮想通貨のICO詐欺に近い?)
そして江戸時代、硬貨の進化版ともいえる生産・移動が容易な紙幣(藩札)が開発されると、安定的に貨幣の供給が可能になり、各地域で量的緩和などの金融政策や、まとまった価値の移動が容易になります。
これにより、現代まで続く経済学の基礎が出来上がったとも言えます。
産業革命が生む資本主義と自由労働
時は流れ、近代の産業革命後、発達した機械や科学技術の恩恵を受けた社会では、多額の貨幣を集めた資本家が、労働者(主に地方農民)を都市に集め、次々に発明される機械を操縦させて物を大量生産し、中央集権的に生産効率・規模を高めました。(現代の主要な経営理論の源流はここにあります)
また、自ら(または複数人や企業単位で)資本を貸し付け、有望な若手に研究・開発や事業を行わせ、リターンを得る投資家たちも現れます。(ベンチャーキャピタルの源流)
しかしその一方で、労働者の環境は劣悪を極め、子供も朝から晩まで働き詰めの毎日を送るようになります。
また、ロシアの農村においても市民革命や近代化に伴い、多くの農民が貴族による封建社会に紐づく農奴から解放されましたが、実態は地主が資産家に変わったに過ぎず、賃金奴隷として売られているのが現状でした。
そんなロシアの後進性を意識し、改革の必要性を認識していた知識人階級(インテリ)が農村共同体にあった相互扶助の伝統に着目し、資本主義を通過せず社会主義を実現する運動として自由な農村共同体を目指したナロードニキ運動が展開されましたが、政府の弾圧が厳しく失敗に終わりました。
革命の展望を失った農民やインテリのなかには、無政府主義や虚無主義に走るものも現れ、皇帝や政府高官の殺傷をめざすテロリズムが活発化しました。
MEMO
日本社会は西洋に遅れを取る形で戦後、軍国主義の終焉と共に本格的な資本主義体制へ移行しました。
これまで地方の相互扶助・共同体に紐づいていた人々が、年功序列やスキルによって自分の価格が決定する都市部の自由労働市場(マーケット)に参入し、高度経済成長をもたらしたのです。
一方で、西洋が辿ってきた道と同じく、相互扶助や共同体の無い自由競争下における労働環境は物質・精神面ともに過酷を極めます。
そんな社会的情勢下で、労働者による暴動やロシアで起こったナロードニキ運動を防ぐために、平和的な地域コミュニティが必要となりました。
インターネットがまだ無い時代、都市部では地域の連帯・繋がりを生む新興宗教(創価学会など)が隆盛を極めはじめ、地方の共同体から離れアイデンティティを喪失した人々の精神的な受け皿となってゆきます。
そして都市部で成功を収めた労働者たちは政界にも参入していき、自民・公明(創価学会が支持母体)の連立政権という今の日本の政治の姿を形作りました。
世界を変えた鉄道とコンテナの発明
ナロードニキ運動や労働革命の失敗により、資本主義の継続を選択した世界各国では、資本の一極集中と熾烈な開発競争が進み、ついには物資を輸送する鉄道網が敷かれたことにより世界規模の大戦が起こるようになります。
そうして二度の世界大戦を経験したのち、今度はコンテナという輸送コストを格段に下げる物流革命が起きたことにより、グローバリズム(世界的協業)が加速していきます。
自国で生産するよりも、海外から輸入・生産した方がコストが安いものが次々に出現したのです。
グローバリズムとはいえ、根底に根ざしているのは一極集中型の資本主義です。
その結果、現代の世界経済はGAFAと呼ばれる4大グローバル企業が掌握することになりました。
このように産業革命から現代に至るまで、資本の集中と、労働者の都市部への一極集中は同時に進行し、アンバランスな富の寡占(格差)と社会・経済的不安は年々増加しています。
これからの未来
では、富の生産・移動・管理がAIによってリモート制御可能な未来が訪れた場合、私たちの暮らしはどうなるのでしょうか?
ヒントは、自律分散型社会、ルール作り(DAO)、選択的参加です。
これまでの企業は社会的理念(ミッション)はあれど、労働者の大半の目的はそのような大それた価値観よりも目先の生活のため、消費的対価(金銭)のためでした。
そして、資本家サイドも同様に労働者の便益よりも、企業の利益を当然追求し、労働者は労働者である限りその多くは追い込まれてゆきます。
また、巨大企業はクジラのように中小企業や自営業者を飲み込み、街の原風景が失われ巨大企業のチェーン店や同じブランド店が立ち並ぶモール型施設が席巻します。
中には、生まれた境遇によって仕事や教育など選択の自由が無く、自らの意思が全く介在しない強制労働を課せられている人も世界中に存在していました。
それは何故でしょうか?
その理由の一つに、人間が『物質的な振る舞い』を見せていた点が挙げられます。
物質的世界(リアル)と量子的世界(インターネット)
人類は、顔や見た目、性別、年齢、居住国・地域など、全て物理的な制約のある社会に身を置いていたことで、物理的生産と物理的消費の二項対立構造の輪廻に巻き込まれていたのです。
近年、あらゆるものが電子化し、インターネット上でものを生み出したり、価値のやりとりを行う人々が増えてきています。
言葉や意思決定など、あらゆる行動・選択や約束事(契約)は電子(量子)となり、場所や時間を問わず光速で世界中を飛び回ります。
SNSではインフルエンサーと呼ばれる人が次々に現れ、不思議な引力や性質により時空間を超越して大衆を引き寄せています。
この不思議な性質は、物理的制約から解放された人々が量子世界のルールに基づいた振る舞いを行なっていることが起因しています。
モノよりも時間。ブロックチェーン&AIが形作る社会とは?
モノは目に見えますが、時間は目に見えません。
これが物理世界と量子世界における大きな価値源泉の違いです。
これから、誰もが選択の自由と基本的生活の維持が当たり前に保証される社会が実現すると、時間の価値がより高まります。(同時に責任も伴います)
人々は『今』という貴重な時間を費やすに値する魅力的なルール・コミュニティに参加するようになります。
これはあらゆる研究・開発などの学術分野や、スポーツやゲーム、アート、音楽、娯楽などのエンタメ領域でもそうです。
そして、旧来の物質的資本主義世界に見られた『生涯で築いた資産』や『目に見えない功績』では無く、繋いだモノ(ブロックチェーン)が人生のNon Fungible(代替不能)な価値となります。
ブロックチェーンは栄養やDNA情報の相互分配が可能なへその緒のようなもので、人々をあらゆるスマートコントラクト(デジタル上の約束事)やDAO(プロジェクト)に接続させます。
アートな世界とサイエンス
ルールや仕組みといった体系的な枠組みは、主に『私 or 私たち or 社会は◯◯だ』という思想で成り立っています。(サイエンスよりアート領域に近い)
なので、これから様々な規模のアートが生まれる時代になってゆくでしょう。
AIやロボティクスによるダイナミックな働き(サイエンス)は、私たちに様々な結果=データを与え、データがアートの源泉になってゆきます。
王権国家が民主国家に。
民主国家が企業国家に。
企業国家が個人国家に。
一つに固まっていたものが、次第に柔らかく、自律分散し、軽くなってゆく人類史の流れがわかるように思います。
Go to future.
"見えるものの全てが 触れるものも全てが リアリティー(質量)がないけど 僕(光=量子)はたしかにいるよ" Perfume / エレクトロワールド
次に量子(ハダカ)の世界から目が覚め、あらゆるものに質量が戻ってくるときは、全ての記憶(データ)を失った時。
途方もない年月をかけて、わたしたちはこの物理と量子が奏でる美しい世界の往来を繰り返している。
それはわたしたちが覚醒と睡眠の連続を日々繰り返すように。
それはわたしたちが生と死を経験するように。
夢は、醒めたらすぐ忘れてしまうような儚いもの。
触れてるようで、触れられない世界。
全てはフラクタルに繋がっている。
いつか一人の国から
便りが届いて
だから行かなきゃ行かなきゃ
結局ぜんまいは巻かれた
最大限界生きたいわ
宇宙全体が手品いやい
正真正銘未来以来
偶然性さえ運命さ
コンピューターでも解けないわ
果てしない 光線の海
全身全霊で向かうわ
再生 再生 再生成
光の海に隠された、知恵の実を探して。
Back to the future.
今、覚醒と睡眠の境界線が融ける音が聞こえた。