『女は二度決断する』当たり前の平穏はもう二度と訪れないからこその決断 公開中
映画鑑賞メモ
英題:In the Fade ★★★★★
そこに待つものは、決してカタルシスではなかったのですが、エンドロールの間、劇中の母・カティヤの心情について、ファティ・アキンの狙いについて考えを巡らせました。
2018年の忘れられない1本となりそう。
主演のダイアン・クルーガーは、バレリーナからモデルに転身し、『トロイ』『ナショナル・トレジャー』『イングロリアス・バスターズ』などに出演してきましたが、キレイどころ女優、というイメージがありました(すみません)。
今回は初めて母国ドイツで、トルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督のもと、ドイツ語での演技に挑戦。ネオナチによるテロにより、最愛の家族を不条理に失った女性・カティヤを熱演します。
ダイアンの悲嘆の演技に、圧倒されます。
物語は3部構成になっており、第1部は事件と家族について、第2部ではテロの犯人が捕まった後の裁判が描かれます。第2部の法廷までは、ダイアン演じる母にして妻のカティヤに、全身全霊で感情移入しております。
ネオナチの肩を持つ輩がいることは、事実で。
ところが、
第3部では、我々はイッキに彼女から突き放されてしまうのです。
彼女の意図が、まるで見えなくなってしまうのです。
ああ、彼女のiPhoneに残っていたような、当たり前の平穏だったあの日々は、もう二度と訪れないのですね…。
久々にエンドロールの後までも、移動の間までも噛みしめる1本。
いくら隣のカップルが、上映の間ずっとアルコールをがぶがぶ飲んで、持ち込んだ煎餅をガサガサ食べようとも、
その小っさなヘイトが、さらなる憎しみを誘い、増幅させるのです。
(なので何も言いませんでした…)
・第75回ゴールデングローブ賞 外国語映画賞受賞
・第70回カンヌ国際映画祭 主演女優賞受賞
・第90回アカデミー賞 外国語映画賞 ショートリスト選出(ドイツ代表)