『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』全BrBaファンに向けたジェシーの落とし前、最終章…たぶん Netflix配信中
原題:El Camino: A Breaking Bad Movie ★★★★★
「ゲーム・オブ・スローンズ」と並んで、現代の海外ドラマを代表する傑作「ブレイキング・バッド」、最終回の“その後”を描いたNetflix映画。NetflixではこうしたTVシリーズの続編を「Netflix TV Event」と名付けたようです。
主人公となるのは、アーロン・ポールが演じたジェシー・ピンクマン。
最終のシーズン5、愛する人を殺され、脅しを受けながら囚われの身となっていた彼が劇的な形で逃亡した直後から始まります。
これが約5年待ちに待っていた続編かぁとワクワクして臨むと、冒頭の“再会”から胸がいっぱい、ラストの思いがけない人物の登場にも涙が止まらず、
全「ブレイキング・バッド」ファン、ジェシーファンに向け、いわば落とし前を付けた“完結編”になっておりました。
(たぶんこれ以上、彼の物語は描かれないと思われ)
『ズートピア』にもパロディが!伝説的海外ドラマ「ブレイキング・バッド」
「ブレイキング・バッド」(BrBa)がスタートしたのは2008年のこと。
肺がんで余命2〜3年と知った公立高校の化学教師ウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)が、妊娠中の妻スカイラー、脳性麻痺のある長男ウォルターJr.、そして、これから生まれてくる子のために財産を遺そうと、かつての教え子でドラッグの売人、ジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)を巻き込んで、超高純度のドラッグ“クリスタル・メス”を精製、麻薬王“ハイゼンベルク”としてドラッグビジネスに身を投じていくというもの。
タイトルの「ブレイキング・バッド」とは、「悪に手を染める」とか「道を踏み外す」という意味です。
しがない普通のおじさんとチンピラが道を踏み外し、まさに悪の道を転がり落ちていく物語は世界中で人気となり、撮影、編集、音楽、キャスト、あらゆる点で観る者を引きつけることに。
エミー賞やゴールデン・グローブ賞などを多数受賞し、スティーヴン・キングや「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作者ジョージ・R・R・マーティン、名優アンソニー・ホプキンスなどがファンを公言しています。
例えば、あのディズニーの『ズートピア』、地下鉄の廃線で羊が紫色のアレを作っているシーンをはじめ、本作のパロディ、オマージュは多くの作品で見られます。
「ゲーム・オブ・スローンズ」と並んで、2010年代エンタメの一般常識ともいっていいかもしれません。
とはいえ、私がHuluで見始めたのは、2013年になってから。
夜な夜な見進めていき、奇しくも本ドラマ主演のブライアン・クランストンが出演していたハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の公開日2014年7月25日に、今回の『エル・カミーノ』につながるシーズン5の最終話・シリーズ最終回が日本で配信されました。
どんなに大好きだった海外ドラマでも、シーズンを重ねていくのは嬉しい反面、マンネリ化していったり、お気に入りのキャラクターが去って(降板して)いったり、方向性が迷走していったりすることは、よくあります。しかし、このドラマはシリーズを重ねるごとにおもしろみと凄み、悲哀を増していき、そしてカタルシスたっぷりにラストを迎えた、かなり稀有なドラマ。
それでも、ジェシー自身の物語はまだ終わっていなかった、というわけです。
本来はシリーズ1で去るはずだったジェシー・ピンクマン
ジェシー役で一躍人気者になったアーロン・ポールが何度か語っていますが、主人公ウォルターのかつての教え子で、ドラッグの売人であることからウォルターに声をかけられたジェシーは、もともとシーズン1で「ひどい爆発か銃撃戦に巻き込まれて死ぬ予定だった」そう。
しかし、撮影を進めるにつれ、ウォルターとジェシーには教師と教え子や、仕事上のパートナーという枠を超えた独特の関係性が生じ、それがシリーズのクリエイターのヴィンス・ギリガンはもちろん、視聴者をも魅了していくことになりました。
先日の第71回エミー賞で「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・ディンクレイジが4度目の助演男優賞受賞で新記録を作りましたが、それ以前、3度の助演男優賞受賞記録を持っていたのが、ほかならぬアーロン。
「ブレイキング・バッド」によりブレイクした彼は、海外ドラマ「THE PATH/ザ・パス」(兼製作)やNetflixアニメ「ボージャック・ホースマン」(兼製作総指揮)、ノーマン・リーダスの弟役を演じた『トリプル9 裏切りのコード』、『ルイの9番目の人生』『ニード・フォー・スピード』などに出演し、プロデューサーとしても活躍の場を広げています。
来るHBO「ウエストワールド」シーズン3でも主要キャストを演じます。
『エルカミーノ』外に出た彼が、目指す道はただ1つ…
そして、『エルカミーノ』です。彼はプロデューサーとしても参加しています。
「エルカミーノ」とは、彼が脱出時に乗っていた名車の名前であり、スペイン語で「道」のこと。
ネタバレはしませんが、
逃亡の身のジェシーは髪を剃ったこともあり、ウォルター化というのか、ハイゼンベルク化している印象を受けます。
過去の回想を挟みながら進むジェシーの“その後”の道には、ドラマからの懐かしい面々が続々。
ドラッグ仲間、スキニー・ピートやバッジャーとの再会(こっから泣いてます)に
監禁中のにっくきあの人も、懐かしいこの人も、あの車も、
大きな起伏こそありませんが、ヴィンス・ギリガンが明言するようにドラマを見てきたファンは感涙ものですよ!!