『アメリカン・アニマルズ』基本浅はか、思慮なし。虚実ない交ぜ?の若気の至り 公開中
原題:American Animals ★★★★★
Based on a true story、事実に基づく物語ーーと始まるのはよくあることですが、こちらは違います。
「This is not based on a true story」から、やがてnot based onの文字が消えていきます。
これは、実話なのだというのです。
何せ、強盗事件を起こした本人たちが自ら語るのですから。
何が本当なのか、どこまで作り話なのか、メタで事件を見る私たち。
ご本人たちの顔出し具合、構成が巧み。映像と音楽も鬱屈や不穏を煽ります。これは大変好みの作品でした。
秀才で裕福で、ルックスもいい彼らの若気の至りや物質的に満たされた者の心の空虚、なんてものだけでなく
今でいう炎上狙いの自己顕示欲、承認欲求、および、なんだろう、自己実現?
演じた若手俳優4人はいずれも素晴らしく、
主犯格の問題児は、「アメリカン・ホラー・ストーリー」『X-MEN』シリーズのエヴァン・ピーターズ。『ダーク・フェニックス』にも出演しています。彼の胡散くささはご本人以上かもしれません。
そして、行き詰まったアーティスト志望の『ダンケルク』『聖なる鹿殺し』のバリー・コーガン。バリーくんはこの作品も代名詞になるのですね。応援しています。
またもプロテインを飲んでいる、『スウィート17モンスター』のブレイク・ジェンナー、
FBIに入りたかったインテリ役には「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」のジャレッド・アブラハムソン。
語り部が4人いて、虚虚実実ない交ぜで、真実は曖昧なまま。
若気の至りって便利な言葉だと思いますね。
4人とも基本浅はかで、思慮なしなんですが、タチが悪いのは、バリーくんの演じたスペンサーかと思います。。
希少本を強奪する、という非日常を経験することによって芸術家としての壁を打ち破れると、さらに高みに行けると、箔がつくと勘違いしてしまい、いざという時には怖気づき、失態もやらかしてしまう。
その線を超えた先に、何か特別なことが待っていると勘違いしている。
その線を越えることは、勇気などではなく、思慮や想像力の欠如しかないのでは。その先には、一体何があったというのでしょう?
映画では明確には示されませんが、失ったものもずいぶんと大きいはずです。