「Fleabag フリーバッグ」と「Kiling Eve キリング・イヴ」 女性の多面性を、あらゆる角度から描く名クリエイターの2作
フィービー・ウォーラー=ブリッジをご存知ですか?
今、最も旬で、最も信頼の置けるクリエイターのひとり。ロンドン出身、1985年生まれ、来月で34歳になるので若き天才といっていいでしょう。
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の、ドロイド解放を叫ぶ、愛さずにはいられないドロイドL3-37の中の人、といえばわかる方も多いかと思います。
何より!現在撮影中、ダニエル・クレイグが負傷するなど、ちょっとごたごたが続いている『Bond 25』の脚本をキャリー・フクナガ監督らと手がけているんです、彼女が!!! しかもダニエルからのラブコールあってのことらしい! 素晴らしい! 頑張って!
楽しみです。
ということで、大好きな彼女が手がけた秀逸海外ドラマについて少々。
「Fleabag フリーバッグ」 Amazonプライム
フリーバッグとは、まあとにかく不愉快なヤツという意味のスラングなのだとか。
ロンドンで小さなカフェを経営する、皮肉屋で辛辣な、怒りと性欲が旺盛な、でも心には耐えがたい喪失と悲嘆を抱えている“フリーバッグ”。
実の家族からもそう呼ばれていたというフィービー・ウォラー=ブリッジが、一見クズな(そう見える)ヒロインを好演しています。
大きな特徴は、そんな彼女が『デッドプール』のようにいわゆる“第4の壁”を破って、観ている私たちに向かって語りかけてくること。
神経過敏なキャリアウーマンの姉、
繊細すぎる元カレ、
自意識過剰でハンサムのセフレ、
無神経な継母などに、イラッときたり、ドキッとしたら
こちらに、時にはウィンクなども添えて本音を語ってくれるのですが、これがまた辛辣で、的を射ていて最高に可笑しいこと!
だからこそ、私たちは破天荒な彼女にすっかり親近感を抱いてしまい、待ち望んでいたシーズン2が配信されたころには、完全に懐かしい友達に再会したような気分に。
実は彼女は、親友・ブーの突然の死に対処しきれていないのです。彼女が、一見“壊れている”ように見えるのは、幾重にも重なった
罪の意識や喪失、悲嘆ゆえ。
彼女にまるごと共感はしませんが、その痛みには私たちもどこか少なからず見覚えがあり、彼女に親しみが湧く理由でもあるのです。
また、フリーバッグの“天敵”でアーティストである継母を演じているのが、『女王陛下のお気に入り』でオスカーを獲得したオリビア・コールマンさんなんですよ、これがまた、最高に憎ったらしくて最高なお人なんです(英国ドラマ「ブロード・チャーチ」でも敵対する立場の役でした)。
さらにシーズン2では、「SHERLOCK/シャーロック」や『007 スペクター』のアンドリュー・スコットが、罪深きフリーバッグの前に現れます。
彼女が第4の壁を越えてくる、その種明かしもされます。
やはり家族の物語でもあるなと思いつつ、何気に父の日に(1人でね)観るのもオススメです。
Amazonプライム・ビデオにてシーズン1,2配信中
「キリング・イヴ/Killing Eve」
フィービーはこちらではショーランナー、脚本を担当。主演を務めるのは、「グレイズ・アナトミー」のクリスティーナ・ヤン役で知られるサンドラ・オーです。
今作のイヴ役で、アジア系女優として初めてエミー賞ドラマシリーズ主演女優賞にノミネート、先のゴールデン・グローブ賞ではアジア人初のホストを務め、主演女優賞も獲得しました。
英国保安局MI5の職員イヴは、ヨーロッパ各地で起きている不可解な殺人事件の関連性に気づきます。それは実は同一人物によるもの、しかも極めて凶悪で冷酷な、つまり“優秀”な女性暗殺者の仕業ではないかと思い当たるのです。
そのことから諜報機関MI6の秘密チームに大抜擢されたイヴですが、女性暗殺者ヴィラネル(ジョディ・カマー)を追ううちに、逆に彼女に執着され、命を狙われることに。
このヴィラネルというのが、複雑な過去とトラウマの持ち主であり、強烈なサイコパス。
人間の瞳から生気が消えていく様を、興味津々で見守るような女性です。コワいよ!
しかし、優秀で人間味に溢れ、聡明なイヴは、そんな彼女のことが気になって仕方がないんです。
まるで彼女たち、好き合ってる者同士みたい…!?
そんな2人の心理的駆け引きが、時にブラックなユーモアを帯びながら展開していき、回を追うごとに見応えを増していきます。
スリラー・コメディといってもいいほど。
ヴィラネル役のジョディ・カマーも素晴らしいですし。
クリエイターは異なりますが、この4月にBBCアメリカでシーズン2が放送されるや、即シーズン3への更新が決まりました。
が!
日本ではシーズン1がWOWOWで放送されていましたが、現在、6/17(月)の最終話放送以降は不明。
DVDリリースの情報も今のところありません。
めっちゃくっちゃ面白いのにな~。