『メアリーの総て』フランケンシュタインの「F」はフェミニズムの「F」 公開中
原題:MARY SHELLEY ★★★★☆4.8
名作「フランケンシュタイン」の世にも恐ろしい、哀しき怪物を生み出したのは“18歳の若い女性”だった。その作家メアリー・シェリーを、現在の若手女優で最も才能と魅力にあふれるひとり、エル・ファニングが熱演します。
夜に眠れず、白昼夢のような空想の中でひたすらペンを走らせていた可憐な少女は、尊敬する父に捨てられたように感じていたところで、“異端の天才”といわれる妻子ある詩人パーシー・シェリーと出会い、駆け落ち。
しかし、生後間もない我が子の死、パーシーの裏切りなど、数々の悲劇に直面します。そして、悪名高い詩人・バイロン卿の別荘での滞在が「フランケンシュタイン」執筆の引き金になります。
出演者が「ゲーム・オブ・スローンズ」「ダウントン・アビー」など好きな海外ドラマの人ばかり、最近注目の若手俳優たち(『ボヘミアン・ラプソディ』のあの人も)ばかり、というのは、それだけでも至福だなと。
特に登場シーンは多くないもののメイジー・ウィリアムズとエルの2ショットは我得。
しかし! 彼女の身に起こっていく人生は過酷そのものでした。
“18歳の若い女性”は、こんな怪奇小説を書かないとでも?
彼女の周りには怪物だらけ。あの怪物は、彼女の壮絶な喪失と悲嘆の連続から生み出されたのです。
まず、大前提で、彼女の母メアリー・ウルストンクラフトは『女性の権利の擁護』を記したフェミニズムの先駆者・創始者といわれる人物。同じ名を有しながらも自身を生んだ後に亡くなってしまった母は、あまりに偉大で、永遠にメアリーにとって手の届かない“怪物”。
そんな母の墓は彼女にとって聖地でもありました。
そして、夫なるパーシー・シェリー(ダグラス・ブース)は自由恋愛を謳う、今でいうどうしようもないゲス男。
結果的に、創作に刺激を受けることになるバイロン卿(トム・スターリッジ)も、さらにゲス。
もちろん男性だけが怪物なのではなく、愛し合えない継母(ジョアン・フロガット)や、母親の違う妹クレアもね。。。彼女を演じたベル・パウリーがまあ素晴らしい。
メガホンをとったのは、祖国サウジアラビアで初の女性監督となり、長編映画デビュー作となる『少女は自転車にのって』(12)が第86回アカデミー賞外国語映画賞に出品されたハイファ・アル=マンスール監督。
やはり、生き方を制限されていた少女を描く物語となりました。
唯一の理解者ともいえる『吸血鬼』を記したポリドリもまた、哀しい存在だったんですね。
『ボヘミアン・ラプソディ』のロジャー・テイラー役でブレイク中のベン・ハーディが演じていることもあり、ポリドリ目線での物語が見たくなってしまうという事態。
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