『半世界』あっちも、こっちも、どっちも世界は十人十色 2/15(金)~公開中
稲垣吾郎がSMAP解散後、「新しい地図」に移って初めて主演した映画、しかも阪本順治監督作品で、山で備長炭づくりをする男、という意外も意外な役柄に興味を引かれ鑑賞。ある地方都市で描かれる幾つもの世界。ひそやかな問題提起もあり。
英題:Half The World ★★★★☆4.5
父親の炭焼き業を継いだ男・紘(稲垣吾郎)と、自衛隊を辞めて故郷に帰ってきた男・瑛介(長谷川博己)、家族経営で中古車販売を営む男・光彦(渋川晴彦)。小・中学校といっしょだった3人のおっさんたちが、友との関わりから自分を見つめ直す、
特に、主人公の紘はいじめに遭っている息子との関係、行き詰まる手作業での炭焼きの仕事について見つめ直していくことに。
そのイメージがまったくなかった吾郎ちゃんの山男ぶり。炭づくりの作業でのどこかおぼつかないへっぴり具合、不器用な感じ(そこがいい)が、本当は別の何かになりたかったのかもしれないけれど、「継がなくてもいい」と言った父への反発からの意地、やるからにはきちんとやっていくという決心が見て取れる佇まい。とても良い。
そんな中での、PTSDを抱えた友の帰還。
長谷川さんが、途中で「くぅらぁきぃ」(MOZUより)ばりの狂犬へと急変する点は、きっちりと向き合おうとするハリウッドなどの映画とは違って、あまり日本映画では描かれないこと(特に今は)と思っていただけに、その意味でも大事な映画といえると思います。
鋭い一言を放ち、いるだけで場を和ませる渋川さんもいい、池脇さんの献身ぶりにグッと来る方も多いでしょう(あれが当たり前と思うなよ、なんつて)。
あまり大々的には宣伝されないでしょうけれど、今なら口コミで伸びていける映画かも。
それぞれが地に足つけて生きている場所が、それぞれの世界。
軽々しく、他人の世界に口を挟むものではないのかもしれません。