記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【ネタバレ有】「ゲーム・オブ・スローンズ」壮大な物語の終焉。ただいま絶賛ロス中…

いやぁ終わってしまいました。世界で最も人気があるといっても過言ではない海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」が、つ、い、に、最終回を迎えました。

いろいろゴタゴタあれど、最終回は大団円

米TV界でもっとも権威あるエミー賞歴代最多受賞作品、海外ドラマを観る方なら知る人ぞ知る米CATV局・HBOの製作。最終章は放送されるや世界トレンドを独占していました。日本を除いて。

それでも先の大型連休中は、ホワイトウォーカーとの大決戦の回とその直後(最終章3話・4話)の回があったため、日本でもサーセイなどキャラ名などがトレンド入りしてうれしかったりも。

そして現在では、最終章の取り直しを要求する署名運動や、スタバ風コーヒーカップの映り込みなどがこぞって報道される始末です(それで少しでも興味を持ってくれる人が出てくればいいのですが)。

中国では米との貿易摩擦で最終話の放送が延期され、ちょっとした騒ぎになっている様子。エンターテイメント・コンテンツの政治利用に腹立ちながらも、中国でもやはり話題なのだな、と思わされた次第。


これまで、ジョークで「ゲーム・オブ・スローンズ」が流行っていないのは日本と北朝鮮くらい、と言われたりするほど、国内での認知度の低さには忸怩たる思いがありましたが、HBOと提携しているスターチャンネルは最終章となるだけに、いろいろと盛り上げようとSNSで積極的にプロモーションしたり、イベントを企画したりしており、また世界同時放送・配信ということもあって今年になって見始めたという人も見受けられました。

最近では『キングダム』の原作者・原泰久やプロデューサー陣が、人気エピソードとして支持を受ける第6章第9話「落とし子の戦い」を参考にしたことをインタビューで語っていますし、「進撃の巨人」の諫山創もファンらしく、俳優の鈴木亮平も「最終章に追いついた」とツイートするなど、以前よりは浸透してきた感はあります。

そんなこんなの「ゲーム・オブ・スローンズ」もついに終焉…。今、絶賛ロス中で、見終えたときよりもさらに寂しさが募っております。3回見返しましたが、やはり完璧なラストとは言えなくとも、ドラマファンとして大いに満足です。

寂しいけれど。

確かに最終章は駆け足で、得意の人物の心情描写が弱いところはありました。あれだけ煽ったナイトキングやホワイトウォーカーとの決戦も3話目で終了、対となるような第5話では対人間に対して大虐殺が行われ衝撃を与えましたが、ある1名を除いて、私の愛したキャラクターたちはそれぞれの持てる天賦の才能を生かせる場に収まりました。

そんな本作の魅力と、個人的な思いについてつれづれに。


「ゲーム・オブ・スローンズ」、そのスゴさとは

SF作家ジョージ・R・R・マーティンのベストセラー小説「氷と炎の歌」シリーズを、デヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスがショーランナーとなって映像化。この2人は、12月公開『スター・ウォーズ/ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー』以降に製作される同シリーズを手がけることが発表されています。

架空の大陸・ウェスタロスを舞台に、鉄の王座をめぐる名家の陰謀と策略が渦巻く権力争いと、そこに生きる人々の愛憎と宿命のドラマをエロもグロもたっぷりに、容赦なく、生々しく描いたお子様厳禁R15指定のドラマです。

1話につき約1,000万ドルといわれるほどの潤沢な製作費により、映画並み、いえ、映画以上のスペクタクルと映像美、さらに

炎を吐くドラゴンに、未来を見通す魔術、死者を蘇らせる夜の王(ナイトキング)らホワイトウォーカーと呼ばれる異形の者なども登場するファンタジーでもあり、観る者の予想をことごとく裏切る怒涛のストーリー展開が大きな魅力。そんなファンタジーの世界の中で、ときには地べたを這いずり回って必死に生きる、醜くて、弱くて脆き人間たちの物語でもあるのです。

前シーズン第七章の最終話では、全米で初回放送1,200万人超えという同シリーズ最多視聴者数を獲得し、さらに最終章では第1話「ウィンターフェル(Winterfell)」で配信などを含めて計1,740万人で更新、大バトル回の第3話「長い夜(The Long Night)」で同1,780万人、物議をかもした第5話「鐘(The bells)」では1,840万人と次々記録を更新。最終話は初回放送で1,360万人が視聴、配信を合わせると1,930万人というHBOの新記録をつくったそうです。


最も惹かれたのはキャラクターたちの運命と成長

HBOでシーズン1・第1章の放送がスタートしたのは2011年。私が「ゲーム・オブ・スローンズ」(以下、GoT)の存在を知り、シーズン1のDVDを鑑賞したのは2013年のこと。

その後、 GoTを観たくて観たくて、スターチャンネルを契約しました。

あれから6年か~。

MCUも『アベンジャーズ/エンドゲーム』で一区切りとなり、このゴールデンウイークはほかの作品に関心が向かないほど(!?)『エンドゲーム』と「GoT」のことで頭がいっぱい。そんなモヤモヤを『名探偵ピカチュウ』で癒やしてもらったりしました。


なんでこんなに夢中になったのかな? と思うと 

本作のすごいところは、こちらの予想を裏切り続ける物語はもちろんのこと、それをよりリアリティを持って見せる、スケールの大きな、それでいて繊細な世界観の作り込みにあります。衣裳や小道具、美術、すっかり観光地となったロケーションなど、ディテールまで徹底的に作り込まれているからこそ、ウェスタロスやエッソスに生きる人々がリアルに存在しているかのように見えてくるのです。

だからこそ、キャラクターたちに息づく人間性や、経験と成長に感情を大きく揺さぶられ、ときには激しく憎み、愛しくて仕方なくなったりするのでしょう。

その上、生首が飛びます、主要キャラも脱ぎます。

ベッドシーンや惨殺シーンなどの生々しさを、できるだけ隠さずに躊躇なく見せるのもそのためでしょう。ハイボーンから娼婦にいたるまでスポットがあたり、それぞれの心情がつぶさに描かれています。


また、『ハリポタ』のように魔法は武器にはならない、銃などの火薬機器が一切出てこないことも挙げられます。ドラゴンは別として

騎士たちは剣を駆使し、それを持たざる女性や使えぬ立場の者は知恵や理性、噂話やずる賢さで敵と対峙します。サーセイ・ラニスターやマージョリー・タイレルのように、ときには女性であることを武器に使う人も。それだけ、生身の人間同士の対峙、関係性が物語の主軸になるのです。

必要とあらば、主要人物であっても死が訪れます。そもそもゲーム・オブ・スローンズ、玉座(スローンズ)を巡る物語なので、権力争いに敗れた者、陰謀に巻き込まれた者、サイコパスに囚われた者などは大概、否応なしに死。

まず主人公かと思いきや、ウェスタロスの北部を治めるエダード・スターク役ショーン・ビーンは、第1章ですぐに死…。では、狂王と呼ばれた前王エイリス2世の息子で、東へ追われたヴィセーリス・ターガリエン(ハリー・ロイド)は? と思いきや彼も死…。ならば、スターク家の長男で北の王ロブ・スターク(リチャード・マッデン)かと思えば、死…。

という具合。


そして最終章最終回でも、「GoT」を牽引してきた立役者のひとりで、#MeTooの先駆者、ポリコレの急先鋒・アイコンといわれた彼女までもが…。


なお、主要女性キャラたちの成長については下の記事にも書いています。

「ゲーム・オブ・スローンズ」最終章まで生き抜いた強き女性たちに注目


【完全ネタバレ】本当に本当の最後の敵は、サーセイじゃなかった件

思いもよらないといえば、思いもよらないことばかりなのが、本作の特徴。

最終章・第3話「長い夜(The Long Night)」で死者の軍団との戦いに勝利したのもつかの間、第4話「最後のスターク家(The Last of the Starks)」のラストでサーセイがミッサンデイにあんなことしちゃって、ドラゴンのレイガルも失って、第5話「鐘(The bells)」では降伏の鐘が鳴ったのに、デナーリスの怒りは収まりません。


王都を、兵を、民を、子どもたちをドラゴンの炎で燃やし尽くします。

「これはあかん、あかんて」「だめだって~」何度言ったかわかりません、、、

正直ショックでした。キャスタミアの雨よりも、シオンやジョラーさんの死よりもショックだったかも(ジョラーさんが傍らにいてくれたら…)。

でも、これまで散々「ドラカリス」してきたデナーリス。黒魔術師も、奴隷商人も「ドラカリス」で瞬殺した際には観ているこちらもスカッとしたものです。

生きたまま焼く、なんてかなり残虐なことをしたのに。

彼女の銀髪と可憐な美しさ、悲惨な生い立ちに私は、つい目をつむっていたのです。

それこそ彼女の外見に、無意識に偏見を持っていたのです。

「彼女は狂王とは違う、悪人ではないのだ、解放者なのだ」と。

彼女の「ドラカリス」に喝采を送ってきた罪、

最終回の「鉄の玉座(The Iron Throne)」、あの大虐殺の後でさえ、彼女の背後でドロゴンが羽を広げる姿をカッコいいと思ってしまった罪は深き…

その後にぶちかましたヴァリリア語の演説なんて、完全にヒトラーですよ。(3回最終話を見直しましたが、あの演説はホント飛ばし見したい…)。

しかし、突然、狂王化したんじゃないんです。

あの狂気は、彼女の血脈や兄のベッドタイムストーリーの影響のみならず、生きてきた道程により形成されてきたのです。

だからこそ、あの死は寂しく、もの悲しい。

ドロゴンが鉄の玉座を焼いた行為には、むせび泣くしかありません。


確かに最終章は足早で、丁寧なところとそうでないところの落差がありすぎと思うところはありますが、あのドロゴンのシーンは語り継がれるべきものですし、

デナーリスと決別し、たった1人のラニスターとなったことで、ようやく彼らしさを取り戻した最大の推し、ティリオン・ラニスターの物語にまつわる演説、“その後”は大いに納得のいくものとなっていました。


なぜ、日本では今ひとつ人気がない?

日本では、もともとTVを有料で楽しむことに抵抗感を持つ人が多いように思います。無料で観られる地上波放送の力が強い、といいますか。

「ゲーム・オブ・スローンズ」は独占放送をしているBS10スターチャンネルを観るためには、CATVなどの契約のほかに月額2,300円がかかり、例えばAmazonプライムビデオでは、第7章と最新の最終章を見るにはプライム料金に加えてスターチャンネルEXとして月額900円がかかります。Twitterを観ていると、初回14日間は無料なのでそれを利用して鑑賞後、すぐ解約する方も多いようですが、有料であることにやはり躊躇があるよう(※Huluでも見られます)。

配信によって、良質な作品を一気見できる、最速で出会える機会が増えることの魅力よりも、有料や課金が大きなネックになっているのかも。

あるいは、ドラゴンなどファンタジーものへの苦手意識? 『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』は受けても、死者と戦う「ウォーキング・デッド」は観ていても、「ゲーム・オブ・スローンズ」は…というのは、中世のような歴史要素や複雑さが加わってしまうからでしょうか。相関図が必須なほど多すぎる登場人物の件も大きいでしょう。

そのある意味、本作の“不親切”な部分は裏を返せば、簡単なひと言では語れないんだよ、という魅力の部分でもあるのですが、何か解説や字幕が入るわけでもなく、人物たちが現れては去っていく…その繰り返しで(それはまるで人生そのもの)、複数の場所・人物の視点で壮大で複雑なストーリーが進むので、ながら見にはあまり適さない作品なのは確かです。

また、海外でも有料のアカウントを持っていない人たちは、バーや友人宅で鑑賞会などを行っているらしいです。最終章第3話「長い夜(The Long Night)」のクライマックスなんて、さながらワールドカップのゴールの瞬間のような盛り上がり具合でした。

サッカー中継ならばスポーツバーで気軽に鑑賞できますが、エロもグロもいっぱいな大人向けコンテンツを正々堂々と楽しむ(?)文化的習慣が、そもそも日本には馴染まない、のか。

あるいは、少なからず血なまぐささを感じさせる時代劇コンテンツが激減したことで、エロやグロへの耐性が、なんというのか低下してしまったのかしら。例えば、塚本晋也監督の『斬、』のような死生観の幹を持つ作品が近いと思いますが、いかがでしょうか。


そうは言っても、大傑作シリーズであることに変わりなく、世界的には一般教養並みの認知度がありますから、親しんでいて損はありません。人生損している、と私は断言いたします。


長くなったので、ベストエピは別枠で。


============================
スターチャンネル 『ゲーム・オブ・スローンズ 最終章』(二ヵ国語版/吹替版)
============================
【STAR3 二ヵ国語版】 6月28日(金)より 毎週金曜よる10時
【スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS- 吹替版】 7月5日(金)午前0時 見逃し配信スタート

Game of Thrones (c) 2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related service marks are the property of HomeBox Office, Inc. 


いいなと思ったら応援しよう!